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第四章 素晴らしき野宿生活
喧嘩
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帰り道、パンやおにぎりを両手一杯に抱えレゥは先程の不承顔が嘘のようにご機嫌だ。
「あのおやじ気前良いな」
「どこの店でも貰えるわけじゃないぞ。本当はこういうのあげたらいけないんだ。万が一食べた奴が腹壊したら店の責任になるからな。グッさんのとこはフランチャイズだからこういう事に多少融通が利く」
「フランチャイズって何だ?」
「簡単に言うと他人の看板を借りて商売してる店の事だ。本部とのしがらみはあるが本質は個人経営だから事業主の裁量でこういったものをくれる」
「おっちゃんも人が悪いぜ、そういう事はもっと早く言ってくれよな、最初騙されたかと思ったぞ」
「悪かったな。働けって言ったら拒否すると思って敢えて言わなかったんだ。でもオレがコンビニでこんな事してるなんて驚いたろ。オレ達ホームレスはそうそう落ちてる物を口にしない、ごみ箱に捨てられてる物も、野草や自然に生えている物も、腹壊したら一大事だからな。朏も誤解してるがホームレスは物乞いじゃないんだ、意外だろうがこんな風に働いて生きる対価を得てる」
「明日もくれるかな?」
「働けばな、でも貰いすぎるなよ」
「どうせ捨てるんだから別に良いじゃねぇか?」
「グッさんだって慈善事業でやってる訳じゃないんだぞ、夜のバイトが集まらないから仕方なくホームレスに頼ってるんだ。これでもしオレが二日も三日も食料抱え込んでその間来なかったらグッさん困るだろ?毎日通ってその日食べる分だけ貰う、持ちつ持たれつが大事なんだ、それがオレ達の暗黙のルール。つうかそれ何日分の食料だよ?」
「一日分だけど」
「どんだけ食うんだお前!?」
「あたし一人で食う訳じゃねぇからな、こっちはいくさの分」
レゥはニンマリと弁当袋を掲げた。
歩みを止める正義、意表を突かれ少し戸惑う。怪人が人間を気遣うなんて信じられない。奴等は勝手で気ままで、何より自分に正直だ。他人を思いやるなんてありえない。だいたいいくさとレゥ、何で一緒にいるのかも分からない。怪人と人間と言ったら食うもの食われるものと相場は決まっている、なのにだ。
ふと、正義の脳裏に不殺が浮かぶ。
もし怪人と共生できたなら・・・
公園に戻るとレゥは胸をおどらせ段ボールハウスを覗いた。
「なぁいくさ、食いもん一杯貰ってきたぞ。お前も食え」
そう言うと尻尾を振って袋から冷めたアンパンを出す。
いくさは険しい表情で段ボールハウスから出た。
「これどうしたの?」
「貰った。消費期限切れてるからいらないんだと」
パンを叩き落とす。それは彼女にとってゴミも同然だ。レゥには気位が足りない、ゴミ漁りといい人の捨てた物を貰って浮き立つなんて嘆かわしいにもほどがある。恥ずかしさを通り越し情けなく思う。
「消費期限の切れた食べ物なんて食べられる訳ないだろ!」
いくさが怒鳴るとその腹にハンマーで打ちつけたような衝撃が走った。それはすぐに苦しみへと変わり彼女をうめかせ地面にひざまずかせる。
人間がクモやチョウの腹を殴れば当然潰れる。同様に怪人が生身の人間に腹パンなんてしたら下手すれば死ぬ。同族を殴るのとは勝手が違うのだ。悶えるいくさはそのまま死んでしまいそうなくらい苦しんでいる。
レゥは“ついはずみでやってしまった、どうしよう”と心の中で思う。
正義の声が飛ぶ。
「おい、レゥ!」
レゥは正義の強い視線に立つ瀬がなくなり堪らずその場から逃げだした。
正義は悔やんだ。やはり怪人は怪人、共生など夢物語。やはりあの時倒しておくべきだった、もしくは拘束具を外さなければこんな事にはならなかった。だが後悔先に立たず、今の正義ではレゥの速さに追いつけない。追いついたとしても倒す術がない。せいぜい能力汚染(アビリティペースト)で無力化するくらいしか出来ない。ジャスティスにさえ変身出来ればあんな雑魚瞬殺なのに・・・力を失った男は忸怩たる思いで唇を噛む。
「朏、大丈夫か?」
正義が心配して手をかけるといくさはそれを煙たく払った。
「触るな!・・・能力が移るだろ・・・」
今にも事切れてしまいそうな声。こんな時まで拒まれると流石の正義も心が折れそうだ。
「私なら平気だから、もうほっといてよ・・・」
腹を押さえてうずくまるいくさの顔を長い髪が隠す。
不器用、だがそこから学べることは多い。怪人に近づく事がいかに危険かこれで分かっただろう。そもそも分かり合う合わないの話では無い、単にちょっと小突かれただけでも命に関わると言う問題だ。遺伝的に人に近いとされるチンパンジーですら獰猛な猛獣扱い、なのにそれよりも力のある怪人と何故対等に接せられる?クマやライオンと同じで存在自体が危険なのだ、だから見つけ次第その道のプロが駆除する。酷いだとか可哀相だとかそう言った同情は物を知らない人間の言葉である。
今はそっとしておいてやろう・・・正義は彼女を哀れんだ。
「あのおやじ気前良いな」
「どこの店でも貰えるわけじゃないぞ。本当はこういうのあげたらいけないんだ。万が一食べた奴が腹壊したら店の責任になるからな。グッさんのとこはフランチャイズだからこういう事に多少融通が利く」
「フランチャイズって何だ?」
「簡単に言うと他人の看板を借りて商売してる店の事だ。本部とのしがらみはあるが本質は個人経営だから事業主の裁量でこういったものをくれる」
「おっちゃんも人が悪いぜ、そういう事はもっと早く言ってくれよな、最初騙されたかと思ったぞ」
「悪かったな。働けって言ったら拒否すると思って敢えて言わなかったんだ。でもオレがコンビニでこんな事してるなんて驚いたろ。オレ達ホームレスはそうそう落ちてる物を口にしない、ごみ箱に捨てられてる物も、野草や自然に生えている物も、腹壊したら一大事だからな。朏も誤解してるがホームレスは物乞いじゃないんだ、意外だろうがこんな風に働いて生きる対価を得てる」
「明日もくれるかな?」
「働けばな、でも貰いすぎるなよ」
「どうせ捨てるんだから別に良いじゃねぇか?」
「グッさんだって慈善事業でやってる訳じゃないんだぞ、夜のバイトが集まらないから仕方なくホームレスに頼ってるんだ。これでもしオレが二日も三日も食料抱え込んでその間来なかったらグッさん困るだろ?毎日通ってその日食べる分だけ貰う、持ちつ持たれつが大事なんだ、それがオレ達の暗黙のルール。つうかそれ何日分の食料だよ?」
「一日分だけど」
「どんだけ食うんだお前!?」
「あたし一人で食う訳じゃねぇからな、こっちはいくさの分」
レゥはニンマリと弁当袋を掲げた。
歩みを止める正義、意表を突かれ少し戸惑う。怪人が人間を気遣うなんて信じられない。奴等は勝手で気ままで、何より自分に正直だ。他人を思いやるなんてありえない。だいたいいくさとレゥ、何で一緒にいるのかも分からない。怪人と人間と言ったら食うもの食われるものと相場は決まっている、なのにだ。
ふと、正義の脳裏に不殺が浮かぶ。
もし怪人と共生できたなら・・・
公園に戻るとレゥは胸をおどらせ段ボールハウスを覗いた。
「なぁいくさ、食いもん一杯貰ってきたぞ。お前も食え」
そう言うと尻尾を振って袋から冷めたアンパンを出す。
いくさは険しい表情で段ボールハウスから出た。
「これどうしたの?」
「貰った。消費期限切れてるからいらないんだと」
パンを叩き落とす。それは彼女にとってゴミも同然だ。レゥには気位が足りない、ゴミ漁りといい人の捨てた物を貰って浮き立つなんて嘆かわしいにもほどがある。恥ずかしさを通り越し情けなく思う。
「消費期限の切れた食べ物なんて食べられる訳ないだろ!」
いくさが怒鳴るとその腹にハンマーで打ちつけたような衝撃が走った。それはすぐに苦しみへと変わり彼女をうめかせ地面にひざまずかせる。
人間がクモやチョウの腹を殴れば当然潰れる。同様に怪人が生身の人間に腹パンなんてしたら下手すれば死ぬ。同族を殴るのとは勝手が違うのだ。悶えるいくさはそのまま死んでしまいそうなくらい苦しんでいる。
レゥは“ついはずみでやってしまった、どうしよう”と心の中で思う。
正義の声が飛ぶ。
「おい、レゥ!」
レゥは正義の強い視線に立つ瀬がなくなり堪らずその場から逃げだした。
正義は悔やんだ。やはり怪人は怪人、共生など夢物語。やはりあの時倒しておくべきだった、もしくは拘束具を外さなければこんな事にはならなかった。だが後悔先に立たず、今の正義ではレゥの速さに追いつけない。追いついたとしても倒す術がない。せいぜい能力汚染(アビリティペースト)で無力化するくらいしか出来ない。ジャスティスにさえ変身出来ればあんな雑魚瞬殺なのに・・・力を失った男は忸怩たる思いで唇を噛む。
「朏、大丈夫か?」
正義が心配して手をかけるといくさはそれを煙たく払った。
「触るな!・・・能力が移るだろ・・・」
今にも事切れてしまいそうな声。こんな時まで拒まれると流石の正義も心が折れそうだ。
「私なら平気だから、もうほっといてよ・・・」
腹を押さえてうずくまるいくさの顔を長い髪が隠す。
不器用、だがそこから学べることは多い。怪人に近づく事がいかに危険かこれで分かっただろう。そもそも分かり合う合わないの話では無い、単にちょっと小突かれただけでも命に関わると言う問題だ。遺伝的に人に近いとされるチンパンジーですら獰猛な猛獣扱い、なのにそれよりも力のある怪人と何故対等に接せられる?クマやライオンと同じで存在自体が危険なのだ、だから見つけ次第その道のプロが駆除する。酷いだとか可哀相だとかそう言った同情は物を知らない人間の言葉である。
今はそっとしておいてやろう・・・正義は彼女を哀れんだ。
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