LV1から始める異世界チート

もみじ

文字の大きさ
5 / 11
第一章 始まり

ヴァルハラギルド試験

しおりを挟む
 丘を越え、通いなれた並木道を歩く。森の奥、朝日のこぼれる砂利道を突っ切った先に目的の場所はあった。

 “イーヴィングル河川港”

 まだ朝の8時だと言うのに港は騒がしく、人間でごった返していた。それもそのはず、今日ここにヨトゥンヘイム中の学生が集まる。

 ヴァニルは九つの国からなる大帝国、

帝都のあるアースガルド

商業の盛んなアルヴヘイム

工業の盛んなスヴァルトヘイム

農業の盛んなヴァナヘイム

灼熱の国ムスペルヘイム

雪の国ニヴルヘイム

死者の国ヘルヘイム

人間が多く住まう国ミットガルド

そして妖精が多く住まう国ヨトゥンヘイム

 まあ国と言っても日本で言うところの県みたいなものだ。
 今日この日、各国から名のある学生が一堂に帝都へと集まる。その目的は皇帝直轄、国内最強の魔法ギルド、ヴァルハラにギルド登録するためだ。
 ヴァルハラは国営ギルド、そのメンバーは現実世界で言うところの国家公務員、エリートである。この軍事国家でヴァルハラに登録できれば将来を約束されたも同然なのだ。
 だがヴァルハラの門は狭き門、誰でも登録できるわけではない。筆記試験・実技試験・面接試験、それら三つを全てクリアして初めてギルドメンバーとなれる。そんじょそこらのギルドとは訳が違う。



「アースガルド、ヴァルハラ行き魔法少女、間もなく出発します。乗女の方はお急ぎください」



「マスター、ギリギリ間に合ったわね」

「予定通りと言え、俺はここまで来る時間を考慮して家を出発したのだ」

「何があるか分からないんだからもう少し早く出れば良いのに」

「早く着いたらその分優雅に過ごす時間が無くなるだろ?俺は無駄が嫌いだ」

 俺は人間の少年に変身して乗女の切符を買う。


「妖精一匹、人間一人、しめて57000Gです」


「高い・・・私の一か月分の食費くらいある」

 リットはそう言うものの、金銭感覚的には日本の物価と変わりない。平民の平均月収が二十数万、野菜や果物、飲み物が数百Gで買える。この乗女代も飛行機代と思えば適当な値段だろう。

「当然だ、帝都への直行便だからな。ギルド登録出来なければこの金も無駄になるという訳だ、今の我が家の経済を考えるとかなりの痛手だな」

「お腹痛くなってきたわ・・・」

「お前さっき体調は問題ないと言っただろ、あれは嘘か!?」

「マスターがプレッシャーをかけるせいよ」



「はい、それではアースガルド、ヴァルハラ行き出発しまーす!」



「マスター、あの魔法少女一人でここにいる全員を担いで飛ぶの?」

「お前はバカか、いくら魔法少女でも500人を一度に運べる訳ないだろ。仮に運べたとしても乗り心地は最悪だ」

 魔法少女を起点に魔法陣が俺達の足場を覆う。

「見ろ、あれが転移魔法“テレポート”だ。良い機会だから覚えておけ」

 光が包み、世界がホワイトアウトする。






「・・・ここは?」

「黄金の街グラスヘイム、ギルド、ヴァルハラ前だ」

 リットは口を開けてポカーンとする。その視線の先にはゴシック様式の彫刻装飾が施された美しい城。そう、あれこそがヴァルハラだ。

「ようバニィ」

 すると聞き飽きたあの声が俺を呼ぶ。あいつである・・・
 上を見ると空飛ぶ馬車が下りてくる、そしてその窓からくせ毛の少年が大手を振った。
 俺達の前に空飛ぶ馬車が止まる。まあ馬車と言うか天馬車、ペガサスが引いている。そしてこの趣味の悪いデザイン、猫の顔?を模したキャリッジ、子供向けと言うかファンシーと言うか・・・想像していただきたい、自分の顔に似せた車が走っている様を、誰でも不気味に思わないだろうか?

 中から人間姿のシャムとシャノワールが出てくる。

「何だよお前、平民と一緒にテレポートで来たのかよ、貧乏貴族は大変だな」

「シャムこそわざわざ空を飛んできたのか?テレポートなら一瞬でつくというのに」

「バニィは分かってねぇなぁ、ここまでの道のりを満喫するのも受験の醍醐味だろ?復習したり、瞑想したり」

 なんたる非合理、非効率、お前は無駄のバーゲンセールか!?・・・と、つい思ってしまう。

「お、それがお前の魔法少女か?見るからに弱そ」

「・・・」

「ところでお前、試験番号いくつ?どこのブロックで試験すんの?ちなみに俺はFの4」

「Fの6だ」

「うわっ、不吉」

 お前も十分不吉だ。

「お前もFかよ、まあ俺のシャノが試験官ぶっ飛ばしちまったらそん時はゴメンな、悪いけど他のブロックで試験受けてくれ。じゃあなバニィ」

 そう言うとシャムとシャノワールは行ってしまった。

「さて、俺達も行くとしよう」



                ~実技試験会場~

 会場では全ての妖精が擬態を解く。人が帽子を取って挨拶するように、同族の前では元の姿に戻るのが妖精の礼儀なのである。

「ここがFブロックの試験会場か」

「外なんだけど、どうして中に入らないの?」

「実技試験は戦闘試験、被害の少ない野外でやるのが合理的だろう。それよりも覚悟しておけ、Fブロックを担当する試験官は厳しいことで有名な奴らしいぞ」

「そんな情報一体どこで?試験相手は試験直前まで分からないはず」

「ここに来る途中人の話を盗み聞いた」

「流石はウサギ、地獄耳・・・」

 Fブロックの試験官はあのフェルト・フォン=ミンク。知る人ぞ知る有名人である。
 別名≪ヴァニルの白い悪魔≫その名を聞けばどんな敵でも震え上がる、それくらい恐ろしい妖精なのだ。一体何が恐ろしいかと言うと。

「まっ・・・参りました!」

「参っただと?貴様、戦場でもそうやって敵に降伏する気か!?それでもヴァニルの魔法少女か!立て、その甘ったれた根性叩きなおしてやる!!」

 魔法少女が泣きだす、これで3人目だ。
 とにかくこの白いオコジョは加減を知らない、情けや慈悲、そう言った感情が著しく欠如している。例え相手が女子供でも事故を起こした車のごとくぼこぼこにする名物妖精だ。  
 そしてそのパートナーの名はシェルブリット、

【属性】機械×砲撃
【レベル】72
【LP】5735
【MP】5032
【腕力】137
【熟練】310
【素早】281
【魔力】617
【ユニークスキル】飛行レベルⅡ・マルチロックレベルⅣ

 ≪魔王≫の二つ名を持つ化け物である。

「次、シャノワール!」

「はい」

 猫耳を生やした”くノ一”、それがシャノワールだ。シャノワールはクナイを構える。

「試験開始!」

「レベル28、Fブロックの中じゃトップクラスの実力だね、よろしくシャノワ・・・」

 バシッ!!

 鞭のようにしなった尻尾がシェルブリットを襲う。

「おっと!」

 だが光の壁がそれを阻んだ。

「すごい音、でも挨拶無しにいきなり攻撃してくるなんてちょっと失礼じゃない?」

 ―1リロードー
 ガシャンッ!

「シャノ、えんまく!」

 辺り一面黒い霧に包まれる。何も見えない・・・だが分かる。

 音。

 音で何が起きているか俺には手に取るように分かる。
 空を切る音、何発も何発も、それこそ滅多切りである。実際はほんの数秒、だが戦っている当人達にはとても長い時間。

 ―2リロードー
 ガシャンッ! 

 風で霧が晴れていく。
 シャノワールは肩で息をしながら光の壁に手をついた。
 一方シェルブリットはバリアの中でケロッとしている。

「固い・・・」

「嘘だろ、あの攻撃で傷一つつかないのかよ」

「う~ん、筋は良いんだけどどうも攻撃力の方がなぁ」

「シャノもう一度だ!シェイドで畳みかけろ」

「くっ・・・」

 シャノワールがよろける、魔力切れである、技が出ない。

 ―3リロードー
 ガシャンッ! 

「マスター、さっきからシェルブリットはガシャガシャ何をやっているの?」

「あれはリロードと言う強化魔法だ。おそらく今の奴の力なら一撃でシャノワールを、いや、オーバーキル出来るだろう。くらったら後遺症の一つや二つじゃすまないぞ」

「マスター嬉しそうね」

「なに、お前があれを倒すと思ったらつい・・・いや、いかんいかん、顔に出してしまうなんて失態だ」



「キャスリバーグ辺境伯の息子と聞いてどれほどのものか期待したがこの程度か。言っとくがヴァルハラは身分でひいきしたりしないぞ」

「ニャニお~!!こうなりゃ奥の手、シャノ、ビースト!」

「バインド」

 無数の糸がシャノワールの手足に絡まる、そして大の字に引っ張られた。

「ぐあぁぁぁ!!!」

 ただの拘束魔法、だが手に、足に、首に、胸に糸が食い込みシャノワールを苦しめる。

「くぅぅ・・・あ・・・」

 苦痛にあえぐ、だが内側に引っ張ってもすぐにまた強い力で引っ張られる。敵を前にこんな万歳するような格好で、手足を広げて腹をさらしてたらどうぞ殺してくださいと言っているようなもの。
 なるほど、これならどんなに回避があっても攻撃を当てられるな・・・しかし、やはり容赦がない。

「シエル、そろそろ終いにしろ。次が押している」

 シェルブリットは動けないシャノワールに向かって身の丈ほどもある巨大な砲を構えた。

「それじゃあ今度はこっちの番だよ、本気で撃つから身構えてね」

 身構えられるものなら身構えている。シャノワールは足掻く。

「シャノとっとと逃げろよ!」

 魔砲がバチバチと唸る。
 不味い不味い不味い!こんな状態で撃たれたら本当にただではすまない。

「こっ・・・のぉぉぉ~!!!」

 シャノワールが渾身の力で四肢に絡んだ糸を引っ張った。
 音が止む。
















「シャノ・・・シャノ!」

 近くにいるはずなのにシャムの声が遠く聞こえる。変身の解けてしまったシャノワール、地べたに転がって頭を上げると後ろの造林が荒野に変わっていた。
 
「立て、立たないなら不合格にする」

「シャノ立て!立たなかったら捨てるぞ!!」

 シャノワールは唇をかむ。痛みを通り越して感覚がない、全身に力が入らない。立たなければ捨てられるというのに体が・・・言う事を聞かない。

「どれ?」

 俺はシャノワールの体に触った。

「ぐあぁぁ・・・」

「貴様いきなりなんだ!?試験中だぞ!」

「そうだバニィ、邪魔すんなよ!」

「今のシャノワールは重度の火傷に加え、いたる箇所を骨折している。これでは指一本動かせまい、立つことは不可能と言っていいでしょう。物理的に立てない人間に根性で立たせようとはいささか無理が過ぎるのでは?こう言うのを何と言うかご存知か?時間の無駄と言うのですよ。そして私は無駄が嫌いだ、あなたがどんな理念をお持ちか知らないがそんなことで人の時間を費やさないでいただきたい」

「そんなことだと?貴様何様だ!名を名乗れ」

「受験番号6番、バニィ・クロムウェル=ティターニア」

「ティタ・・・皇族だと!?」

 周りがどよめく。

「なるほど、名簿で皇族がいることは知っていたがまさかこんなウサギとは。それだけ大口を叩けるなら実力の方もさぞかしあるんだろうな?言っておくが俺は例え皇族相手でも容赦しないぞ」

「容赦されては困る、俺の威名に拍車がかからんだろ」

「ハ・・・まさかシェルブリットを倒す気でいるのか?笑わせる。
良いだろう、4番の試験はこれで終了とする。次、5番!」

「は・・・はい!」

「試験開始、シエル、エビルバスター!」

 ズドォォォン!!!

 目にも止まらぬ早撃ちで5番の魔法少女があっという間に倒される。

「あぁ~あ、フェル君これじゃ試験になんないよ」

「敵の速攻に即時対応もできないような奴にヴァルハラの敷居をまたぐ資格はない、不合格!」

 フェルトが笑みを浮かべる。

「喜べバニィ、試験が早まったぞ。次はお前の番だ」






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

どうも、作者のもみじです。
予想以上に読んでくれている方がいて自分でもびっくりです。
本当に本当にありがとうございます<(_ _)>

次回、ついにバニィ無双が始まります。
さあ、どうなるんでしょうかね?
無敵の固定砲台シェルブリットちゃんをどう攻略するか乞うご期待!




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん
ファンタジー
 誰もが魔力をもち魔法が使える世界で、アンナリーナはその力を持たず皆に厭われていた。  運命の【ギフト授与式】がやってきて、これでまともな暮らしが出来るかと思ったのだが……  与えられたギフトは【ギフト】というよくわからないもの。  だが、そのとき思い出した前世の記憶で【ギフト】の使い方を閃いて。  これは少し歪んだ考え方の持ち主、アンナリーナの一風変わった仲間たちとの日常のお話。  冒険を始めるに至って、第1章はアンナリーナのこれからを書くのに外せません。  よろしくお願いします。  この作品は小説家になろう様にも掲載しています。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

処理中です...