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side星野:5 幸せの25セント
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「思い出を作りたかったのかな?」
独り言を口にしてしまって、慌てて口をふさぐ。周りを見渡してみたが、小声だったので周囲には聞えていなかったみたいだ。店内にはもう一組しかお客様は残っていない。ラストオーダーを終えてキッチンは後片付けに入っている。
なんだか疲れた。明日も朝早く研究室に行かなきゃいけないし、今日はなるべく早く眠ろう。
「お会計お願いします」
「はい」
最後のお客様から声がかかった。ウチの店はテーブル会計なので、私が対応をする。
店長?なんかいないから、煙草でも吸いに行ってるんでしょう。
「お会計、六千六百円となります」
「はいはい、ちょっと待ってね」
初老にさしかかった男性は、ゆったりとした動きで小銭を探す。
「ん?これ違うな」
トレーに並べた百円玉の中の一枚を人差し指で触れて、眉を寄せる。
「二十五セントですね」
奥様らしき女性がふわりと笑う。
財布の中にうっかり外貨が紛れ込んでいるなんて、海外に頻繁に行かれているということでしょうか?
服装や仕草に品が感じられるし、なんか素敵。
「これは君にあげるよ」
初老の男性はひょいとコインをつまみ上げ、私の手の平にのせた。
「幸せになれるかもしれないよ」
笑顔でそう言われた時、胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。嫌なことばかりだった今日の中で、唯一嬉しい出来事だった。
アメリカでは、記念の年に発行された二十五セント硬貨を加工してお守りにするとか、聞いたことがある。
「…ありがとうございます」
ふふ、と女性も笑い、温かい空気が流れた。
「ごちそうさま」と言って去るお二人を見送った後も、心地良い余韻を感じていた。
…なのに
「紅林さん!ちょっと!」
藤原さんと高梨さんが腰に手を当てて背後に待ち構えていた。
独り言を口にしてしまって、慌てて口をふさぐ。周りを見渡してみたが、小声だったので周囲には聞えていなかったみたいだ。店内にはもう一組しかお客様は残っていない。ラストオーダーを終えてキッチンは後片付けに入っている。
なんだか疲れた。明日も朝早く研究室に行かなきゃいけないし、今日はなるべく早く眠ろう。
「お会計お願いします」
「はい」
最後のお客様から声がかかった。ウチの店はテーブル会計なので、私が対応をする。
店長?なんかいないから、煙草でも吸いに行ってるんでしょう。
「お会計、六千六百円となります」
「はいはい、ちょっと待ってね」
初老にさしかかった男性は、ゆったりとした動きで小銭を探す。
「ん?これ違うな」
トレーに並べた百円玉の中の一枚を人差し指で触れて、眉を寄せる。
「二十五セントですね」
奥様らしき女性がふわりと笑う。
財布の中にうっかり外貨が紛れ込んでいるなんて、海外に頻繁に行かれているということでしょうか?
服装や仕草に品が感じられるし、なんか素敵。
「これは君にあげるよ」
初老の男性はひょいとコインをつまみ上げ、私の手の平にのせた。
「幸せになれるかもしれないよ」
笑顔でそう言われた時、胸の奥がじんと熱くなるのを感じた。嫌なことばかりだった今日の中で、唯一嬉しい出来事だった。
アメリカでは、記念の年に発行された二十五セント硬貨を加工してお守りにするとか、聞いたことがある。
「…ありがとうございます」
ふふ、と女性も笑い、温かい空気が流れた。
「ごちそうさま」と言って去るお二人を見送った後も、心地良い余韻を感じていた。
…なのに
「紅林さん!ちょっと!」
藤原さんと高梨さんが腰に手を当てて背後に待ち構えていた。
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