【完結】幸せの25セント

四季苺

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side紬:3 3月は友達と就活について話す

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「それで?おサムさんはどうしたの?」
 ももは少しからかうようにそう言った。

 帰省とテストを終えて春休みに入った私は、久々にサークルに顔を出している。ここは青少年育成センターの一角で、不登校になった子どもたちの居場所だ。私たちのサークルの活動はここに来る子どもたちと一緒に遊んだり勉強を教えたりすること。季節の行事やイベントなんかもやっているよ。
 いろんな大学の学生が集まっていて、同級生の星野や大志、一つ年上の北斗くんとはここで出会った。桃は同じ学科の友達で、このサークルに誘ってくれたんだよね。

「なんか発音変じゃない?…お父さんは、結局おばあちゃんに負けて、一応私の就職先を探すって言ってた」
「えー!紬、卒業したら地元に帰っちゃうの!?」
 後ろからむぎゅっと抱きしめられる。サラサラの長い黒髪が視界に入った。シトラスの爽やかな香りがする。
星野ほしの!」
 振り向くと、星野がニッと歯を見せて笑っていた。
「…よう」
 大志も一緒だったみたい。星野は桃とは反対側の私の隣に、大志は私の向かいに座って丸テーブルを囲む。
「ううん、まだ全然決められてない」
 東京で知り合ったみんなと離れたくないけど、こっちで就職できるのか不安でもある。
「ヤダヤダヤダ~!!!紬とずっと一緒に遊びたいよ~!!!」
 星野は私の両肩を持ってぐわんぐわんと振り回す。
「あわわ…」
「ゆらすな」
 大志が星野の頭を大きな手でつかみ、動きを止めてくれた。ちょっとだけ、良いなと思ってしまう。大志に頭を触ってもらえて。
「やだ、星野コドモみた~い」
 桃が頬杖をついて星野を眺めながら笑う。
「出た。偽天然」
「はぁ!?良いでしょガサツよりは」
「やめろ、話が進まねぇ」
 桃と星野が小競り合いを始めたので大志が止めに入った。あ、二人はよくケンカするけど仲良いですよ。遠慮なくなんでも言い合う感じです。
「あ、そうだった!紬、こっちで就職しないの?」
 三人がじっと私を見つめる。私はなんて答えたらいいのか考え考え、言葉を口にしていった。
「…えっと…まだ全然決められてない。どうするのが正解か、分かんなくて…」
「おサムー!!余計なことすんなよぉお!!」
「静かにしろ。おサムは悪くねぇだろ」
「…なんでみんなうちのお父さんのこと『おサム』って呼ぶの…?」
 ずっと気になっていた質問はスルーされ、代わりに桃が口を開いた。
「確かにどうするのがベストか、調べてみないと分からないよね。行きたい就職先が地元にあるのか、東京にあるのかもわかんないじゃん?」
「たしかに」
 星野はスマホで就職について検索して見せてくれた。
「サイトとかイベントとかいっぱいあるみたいよ。本格的に就職活動を始めるのは秋か…。それまでが準備期間だって」
「わぁ…やることもいっぱいあるね…」
 じ、自己分析?エントリーシート?一般常識、SPI…テ、テスト勉強もあるのかぁ…。

 桃と二人でずーんと落ちこむ。ふと、星野と大志は平静でいるのに気付いた。
「星野と大志は…?就職活動しないの?」
「あたしたちは大学院に行くから、まだ先なんだ」
「チッ!」
「も、桃…」
 桃がやさぐれた態度を取るので焦ってしまう。
「今か先かってだけの話だろ。俺らもいずれ地獄を見る」
「地獄とか言わないで!ハゲ!」
「ハゲてはねぇ」

「おーい、お前ら。そろそろ子どもたち来るぞ~」
 サークルのメンバーに声をかけられて、私達は立ち上がる。そうだ、今日はおしゃべりしに来たんじゃない。ちゃんと活動しないと!

 でも、その日は子どもたちと遊んでいてもついつい就職活動について考えてしまっていた。
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