10 / 29
side紬:3 3月は友達と就活について話す
しおりを挟む
「それで?おサムさんはどうしたの?」
桃は少しからかうようにそう言った。
帰省とテストを終えて春休みに入った私は、久々にサークルに顔を出している。ここは青少年育成センターの一角で、不登校になった子どもたちの居場所だ。私たちのサークルの活動はここに来る子どもたちと一緒に遊んだり勉強を教えたりすること。季節の行事やイベントなんかもやっているよ。
いろんな大学の学生が集まっていて、同級生の星野や大志、一つ年上の北斗くんとはここで出会った。桃は同じ学科の友達で、このサークルに誘ってくれたんだよね。
「なんか発音変じゃない?…お父さんは、結局おばあちゃんに負けて、一応私の就職先を探すって言ってた」
「えー!紬、卒業したら地元に帰っちゃうの!?」
後ろからむぎゅっと抱きしめられる。サラサラの長い黒髪が視界に入った。シトラスの爽やかな香りがする。
「星野!」
振り向くと、星野がニッと歯を見せて笑っていた。
「…よう」
大志も一緒だったみたい。星野は桃とは反対側の私の隣に、大志は私の向かいに座って丸テーブルを囲む。
「ううん、まだ全然決められてない」
東京で知り合ったみんなと離れたくないけど、こっちで就職できるのか不安でもある。
「ヤダヤダヤダ~!!!紬とずっと一緒に遊びたいよ~!!!」
星野は私の両肩を持ってぐわんぐわんと振り回す。
「あわわ…」
「ゆらすな」
大志が星野の頭を大きな手でつかみ、動きを止めてくれた。ちょっとだけ、良いなと思ってしまう。大志に頭を触ってもらえて。
「やだ、星野コドモみた~い」
桃が頬杖をついて星野を眺めながら笑う。
「出た。偽天然」
「はぁ!?良いでしょガサツよりは」
「やめろ、話が進まねぇ」
桃と星野が小競り合いを始めたので大志が止めに入った。あ、二人はよくケンカするけど仲良いですよ。遠慮なくなんでも言い合う感じです。
「あ、そうだった!紬、こっちで就職しないの?」
三人がじっと私を見つめる。私はなんて答えたらいいのか考え考え、言葉を口にしていった。
「…えっと…まだ全然決められてない。どうするのが正解か、分かんなくて…」
「おサムー!!余計なことすんなよぉお!!」
「静かにしろ。おサムは悪くねぇだろ」
「…なんでみんなうちのお父さんのこと『おサム』って呼ぶの…?」
ずっと気になっていた質問はスルーされ、代わりに桃が口を開いた。
「確かにどうするのがベストか、調べてみないと分からないよね。行きたい就職先が地元にあるのか、東京にあるのかもわかんないじゃん?」
「たしかに」
星野はスマホで就職について検索して見せてくれた。
「サイトとかイベントとかいっぱいあるみたいよ。本格的に就職活動を始めるのは秋か…。それまでが準備期間だって」
「わぁ…やることもいっぱいあるね…」
じ、自己分析?エントリーシート?一般常識、SPI…テ、テスト勉強もあるのかぁ…。
桃と二人でずーんと落ちこむ。ふと、星野と大志は平静でいるのに気付いた。
「星野と大志は…?就職活動しないの?」
「あたしたちは大学院に行くから、まだ先なんだ」
「チッ!」
「も、桃…」
桃がやさぐれた態度を取るので焦ってしまう。
「今か先かってだけの話だろ。俺らもいずれ地獄を見る」
「地獄とか言わないで!ハゲ!」
「ハゲてはねぇ」
「おーい、お前ら。そろそろ子どもたち来るぞ~」
サークルのメンバーに声をかけられて、私達は立ち上がる。そうだ、今日はおしゃべりしに来たんじゃない。ちゃんと活動しないと!
でも、その日は子どもたちと遊んでいてもついつい就職活動について考えてしまっていた。
桃は少しからかうようにそう言った。
帰省とテストを終えて春休みに入った私は、久々にサークルに顔を出している。ここは青少年育成センターの一角で、不登校になった子どもたちの居場所だ。私たちのサークルの活動はここに来る子どもたちと一緒に遊んだり勉強を教えたりすること。季節の行事やイベントなんかもやっているよ。
いろんな大学の学生が集まっていて、同級生の星野や大志、一つ年上の北斗くんとはここで出会った。桃は同じ学科の友達で、このサークルに誘ってくれたんだよね。
「なんか発音変じゃない?…お父さんは、結局おばあちゃんに負けて、一応私の就職先を探すって言ってた」
「えー!紬、卒業したら地元に帰っちゃうの!?」
後ろからむぎゅっと抱きしめられる。サラサラの長い黒髪が視界に入った。シトラスの爽やかな香りがする。
「星野!」
振り向くと、星野がニッと歯を見せて笑っていた。
「…よう」
大志も一緒だったみたい。星野は桃とは反対側の私の隣に、大志は私の向かいに座って丸テーブルを囲む。
「ううん、まだ全然決められてない」
東京で知り合ったみんなと離れたくないけど、こっちで就職できるのか不安でもある。
「ヤダヤダヤダ~!!!紬とずっと一緒に遊びたいよ~!!!」
星野は私の両肩を持ってぐわんぐわんと振り回す。
「あわわ…」
「ゆらすな」
大志が星野の頭を大きな手でつかみ、動きを止めてくれた。ちょっとだけ、良いなと思ってしまう。大志に頭を触ってもらえて。
「やだ、星野コドモみた~い」
桃が頬杖をついて星野を眺めながら笑う。
「出た。偽天然」
「はぁ!?良いでしょガサツよりは」
「やめろ、話が進まねぇ」
桃と星野が小競り合いを始めたので大志が止めに入った。あ、二人はよくケンカするけど仲良いですよ。遠慮なくなんでも言い合う感じです。
「あ、そうだった!紬、こっちで就職しないの?」
三人がじっと私を見つめる。私はなんて答えたらいいのか考え考え、言葉を口にしていった。
「…えっと…まだ全然決められてない。どうするのが正解か、分かんなくて…」
「おサムー!!余計なことすんなよぉお!!」
「静かにしろ。おサムは悪くねぇだろ」
「…なんでみんなうちのお父さんのこと『おサム』って呼ぶの…?」
ずっと気になっていた質問はスルーされ、代わりに桃が口を開いた。
「確かにどうするのがベストか、調べてみないと分からないよね。行きたい就職先が地元にあるのか、東京にあるのかもわかんないじゃん?」
「たしかに」
星野はスマホで就職について検索して見せてくれた。
「サイトとかイベントとかいっぱいあるみたいよ。本格的に就職活動を始めるのは秋か…。それまでが準備期間だって」
「わぁ…やることもいっぱいあるね…」
じ、自己分析?エントリーシート?一般常識、SPI…テ、テスト勉強もあるのかぁ…。
桃と二人でずーんと落ちこむ。ふと、星野と大志は平静でいるのに気付いた。
「星野と大志は…?就職活動しないの?」
「あたしたちは大学院に行くから、まだ先なんだ」
「チッ!」
「も、桃…」
桃がやさぐれた態度を取るので焦ってしまう。
「今か先かってだけの話だろ。俺らもいずれ地獄を見る」
「地獄とか言わないで!ハゲ!」
「ハゲてはねぇ」
「おーい、お前ら。そろそろ子どもたち来るぞ~」
サークルのメンバーに声をかけられて、私達は立ち上がる。そうだ、今日はおしゃべりしに来たんじゃない。ちゃんと活動しないと!
でも、その日は子どもたちと遊んでいてもついつい就職活動について考えてしまっていた。
0
あなたにおすすめの小説
フリーランスエンジニアの優しすぎる無償の愛
春咲さゆ
恋愛
26歳OLの木崎茉莉は人生のどん底にいた。上手くいかないことに慣れ、心を凍らせることで自分を守る毎日に絶望した茉莉は、雨の夜に思わず人生の終わりを願ってしまう。そんな茉莉に手を差し伸べたかっこいい彼。茉莉は、なぜか無償の愛のような優しさをくれる不思議な男性に少しずつ救われ、前を向いていく。けれど、疑ってしまうほど親切な彼には、親切であり続ける理由があって……。雨の夜の出会いがもたらした、優しくも切ない物語。
先輩、お久しぶりです
吉生伊織
恋愛
若宮千春 大手不動産会社
秘書課
×
藤井昂良 大手不動産会社
経営企画本部
『陵介とデキてたんなら俺も邪魔してたよな。
もうこれからは誘わないし、誘ってこないでくれ』
大学生の時に起きたちょっとした誤解で、先輩への片想いはあっけなく終わってしまった。
誤解を解きたくて探し回っていたが見つけられず、そのまま音信不通に。
もう会うことは叶わないと思っていた数年後、社会人になってから偶然再会。
――それも同じ会社で働いていた!?
音信不通になるほど嫌われていたはずなのに、徐々に距離が縮む二人。
打ち解けあっていくうちに、先輩は徐々に甘くなっていき……
貧乏大家族の私が御曹司と偽装結婚⁈
玖羽 望月
恋愛
朝木 与織子(あさぎ よりこ) 22歳
大学を卒業し、やっと憧れの都会での生活が始まった!と思いきや、突然降って湧いたお見合い話。
でも、これはただのお見合いではないらしい。
初出はエブリスタ様にて。
また番外編を追加する予定です。
シリーズ作品「恋をするのに理由はいらない」公開中です。
表紙は、「かんたん表紙メーカー」様https://sscard.monokakitools.net/covermaker.htmlで作成しました。
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
遠回りな恋〜私の恋心を弄ぶ悪い男〜
小田恒子
恋愛
瀬川真冬は、高校時代の同級生である一ノ瀬玲央が好きだった。
でも玲央の彼女となる女の子は、いつだって真冬の友人で、真冬は選ばれない。
就活で内定を決めた本命の会社を蹴って、最終的には玲央の父が経営する会社へ就職をする。
そこには玲央がいる。
それなのに、私は玲央に選ばれない……
そんなある日、玲央の出張に付き合うことになり、二人の恋が動き出す。
瀬川真冬 25歳
一ノ瀬玲央 25歳
ベリーズカフェからの作品転載分を若干修正しております。
表紙は簡単表紙メーカーにて作成。
アルファポリス公開日 2024/10/21
作品の無断転載はご遠慮ください。
【完結】元恋人と、今日から同僚です
紗和木 りん
恋愛
女性向けライフスタイル誌・編集部で働く結城真帆(29)。
仕事一筋で生きてきた彼女の前に、ある日突然、五年前に別れた元恋人が現れた。
「今日から、この部署に配属になった」
そう告げたのは、穏やかで理性的な朝倉。
かつて、将来や価値観のすれ違いから別れた相手だ。
仕事として割り切ろうと距離を取る真帆だったが、過去の別れが誤解と説明不足によるものだったことが少しずつ見えてくる。
恋愛から逃げてきた女と、想いを言葉にできなかった男。
仕事も感情も投げ出さず、逃げずに選び直した先にあるのは「やり直し」ではなく……。
元恋人と同僚になった二人。
仕事から始まる新しい恋の物語。
12年目の恋物語
真矢すみれ
恋愛
生まれつき心臓の悪い少女陽菜(はるな)と、12年間同じクラス、隣の家に住む幼なじみの男の子叶太(かなた)は学校公認カップルと呼ばれるほどに仲が良く、同じ時間を過ごしていた。
だけど、陽菜はある日、叶太が自分の身体に責任を感じて、ずっと一緒にいてくれるのだと知り、叶太から離れることを決意をする。
すれ違う想い。陽菜を好きな先輩の出現。二人を見守り、何とか想いが通じるようにと奔走する友人たち。
2人が結ばれるまでの物語。
第一部「12年目の恋物語」完結
第二部「13年目のやさしい願い」完結
第三部「14年目の永遠の誓い」←順次公開中
※ベリーズカフェと小説家になろうにも公開しています。
押しつけられた身代わり婚のはずが、最上級の溺愛生活が待っていました
cheeery
恋愛
名家・御堂家の次女・澪は、一卵性双生の双子の姉・零と常に比較され、冷遇されて育った。社交界で華やかに振る舞う姉とは対照的に、澪は人前に出されることもなく、ひっそりと生きてきた。
そんなある日、姉の零のもとに日本有数の財閥・凰条一真との縁談が舞い込む。しかし凰条一真の悪いウワサを聞きつけた零は、「ブサイクとの結婚なんて嫌」と当日に逃亡。
双子の妹、澪に縁談を押し付ける。
両親はこんな機会を逃すわけにはいかないと、顔が同じ澪に姉の代わりになるよう言って送り出す。
「はじめまして」
そうして出会った凰条一真は、冷徹で金に汚いという噂とは異なり、端正な顔立ちで品位のある落ち着いた物腰の男性だった。
なんてカッコイイ人なの……。
戸惑いながらも、澪は姉の零として振る舞うが……澪は一真を好きになってしまって──。
「澪、キミを探していたんだ」
「キミ以外はいらない」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる