【完結】幸せの25セント

四季苺

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side紬:9 9月は家族を想う①

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「紬ちゃん、お帰りぃ」
 九月半ば、バイトのシフトを調整して、私は実家に帰ってきた。真っ先に出迎えてくれたのは、おばあちゃん。久しぶりに会えて嬉しい。
「あれ?これおばあちゃんの?買ったの?」
 玄関には買い物カートみたいなものが置いてあった。お年寄りが押して歩くやつ。
「うん。それあるどね、あるぎやすいのよ」
「そっか…」
 今までこういうのなくても歩けてたのに…。足腰弱ってきたのかな?私は言いようのない不安に襲われて、黙り込んでしまった。
「水ようかんつぐっだからね、手洗っできな」
「はぁい!おばあちゃんの水ようかん大好き!嬉しい!」
 いそいそと手洗いうがいを済ませて茶の間に行くと、お父さんが待っていた。
「紬、お帰り。就活はどうだい?」
 まったく、開口一番それ?私はちょっとムッとしつつ「頑張ってるよぉ」と答える。
 サマーインターンは、参加したいところがなかったからやめたけど(あと間に合わなかったけど)、先輩たちの勉強会以降、行きたい業界とか自分がやりたいこととか、結構見えてきた気がする。
「長武がこっちで勤め先探すんじゃなかったんけ?」
 お母さんとおばあちゃんが水ようかんと冷たい緑茶を持ってやってくる。お父さんはちょっと気まずそうな顔をした後、表情を引き締めて話し出した。
「地元で就職するか東京で就職するか、よく調べて考えてから決めるように、紬には言ったんだ」
「ほぉけ。そんで、紬ちゃんはどうするか決めだの?」
 私は水ようかんを食べようと手にした楊枝を一度置く。
「…まだ…」
「ほぉけ」
 おばあちゃんはちょっと寂しそうな表情をする。「地元で就職する」って言って欲しかったのかな…。
「紬」
 お父さんは真剣な声で私を呼んだ。
「就職については、紬の意志を尊重するよ。だけどね、東京で就職するのか地元で就職するのか、就職活動が本格化する前に決めなさい。」
 えっ、それって三月でしょ?結構すぐじゃない?
「どうして?長武さん」
 私より先に、お母さんが理由を尋ねた。
「中途半端な気持ちで受けても、きっと受からないよ。東京で就職するなら『ダメだったら地元帰ればいいや』なんて考えは捨てなさい」
「最初からコネ使うのは良いんけ?」
 おばあちゃんも気になることを聞いてくれた。
「…正直、こっちは求人が減ってるからね、コネで就職できるか怪しいよ。うちに戻ってきて暮らすのは構わないけど、やっぱり就職は紬が自力で頑張るしかないと思う」
「…わかった」

 うっ、なんか急に厳しい状況に追い込まれたような…。私は心のどこかでお父さんのコネをあてにしてたんだな…。

「ほぉだなぁ…年々町に活気なぐなっできでるもんなぁ…」
 おばあちゃんが寂しそうにそう言うのを聞いて、私はもう、何も言えなくなってしまった。
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