【完結】占い館のチョコレート

四季苺

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ムダに傷付かずに済ませる方法

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 昼休み、わたしは大体毎日図書室で過ごす。教室にいればくだらないあらそいに巻き込まれたり意地悪をされたりするから、極力きょくりょくいないようにしているのだ。図書室には司書ししょの先生や他の学年の子もいるから、カリン達もうかつなことはできないらしい。そもそも、本に興味きょうみを持っているところも見たことがないし。 

鈴奈すずな、何読んでるの?」 

 うげ!ユイ! 

 その声を外に出さないようにして飲み込み、短く答えだけを返す。 

「料理の本」 

「へぇ、何か作るの?」 

 ユイは自然なながれでわたしのとなりに座ってしまった。嫌だ嫌だ、どっか行ってほしい。 

「聞いてよ、ひどいんだよ。あたしがカリンの悪口言ったって、ココがぐちしたの。自分だって言ってたくせに!」 

「そうなんだ」 

 ここでユイに同調どうちょうしてはいけない。わたしがココやカリンの悪口を言おうものなら、ユイはそれを手土産てみやげにしてカリン達の元に帰るだろう。そうすれば、次のいじめのターゲットはわたしだ。それが分かっているので、さらりと流す。 

「それより、今日の夕ごはん何作ったらいいと思う?さっきからなやんでるの」 

「えっ!鈴奈が作るの?」 

「うん、ウチ今みんないそがしいから」 

 ユイは本当に感心かんしんした様子ようすですごいねと言う。ココもユイも単体たんたいならそんなに悪い子ではないと思う。仲間外れなかまはずれにされたくなくて変な方向に努力どりょくするからマズイのだ。 

「チャーハンは?簡単かんたんそう」 

 ユイはわたしが読んでいた本をパラパラとめくりながら提案ていあんする。 

「作り方は簡単なんだけど、人数が多いうえにたくさん食べる人がいるから、いためるのが大変なの。うまく混ぜられなくて下の方がげちゃったことがある。うでいたくなるし」 

「なるほど。じゃあいっぱい作りやすいのがいいよね」 

「うん」 

 カレーは昨日作ったしハンバーグはたくさん作るの大変だし、ものはしちゃだめって言われてるから、からあげもダメ。 

「これは?豚丼ぶたどん」 

 ユイは豚丼のレシピを開いて、わたしの方に向ける。あぶらののったお肉と、よく味がみていそうな玉ねぎとしらたきが食欲しょくよくをそそる写真が見えた。 

「良さそう!簡単だしいっぺんにたくさん作りやすいし」 

「あとこれも美味しそう」 

 今度は鶏肉とりにくのトマトのページ。あざやかな赤いソースと、口の中でほろっとくずれそうなお肉。写真を見るだけでよだれが出てくる。 

「あとはー、ここにはってないけどおでんとかみご飯とかいいかも」 

 フムフムと言いながらメモを取る。ユイは、意外いがいに良いアドバイスをくれた。日によってはきょうだい皆でご飯が食べられず、ズレて食事をとることもある。そういう時に煮こみ系は楽だなぁ。 

「教えてくれてありがと。わたしはレシピをうつすから、退屈たいくつだったら遊びに行っていいよ」 

 やんわりと「どっかいけ」とうながしてみる。 

大丈夫だいじょうぶ。あたしも何か本読むし」 

 失敗しっぱい。そりゃそうだよねー、今クラスで口きいてくれる女子わたししかいないもんねー。 

 わたしは男子の友達も多いから、女子全員に無視むしされても話し相手や遊び相手には困らない。みんなも男子と仲良くすればいいのに。去年くらいからかな?なんか男子と女子で分かれて遊ぶようになってしまった。昔は性別せいべつなんて関係なくみんなで遊んでいたのに。変なの。 

「ん?」 

 本をえらんでもどって来たユイの手元を見る。「わかりやすい!はじめてのタロットうらない」というタイトルと可愛いらしい女の子のイラストが目に飛び込んできた。 

「占いの本?」 

 ユイがそのチョイスをするとは思わなかった。意外だなと思い、つい本をじっと見てしまう。 

「こないだ、新しくできた占い館に行ってきたんだ!」 

 ユイはぱっと表情ひょうじょうを明るくさせてそう言った。ああ、ココが言ってたお店か。 

「…大丈夫だった?」 

「え?うん。ママと行ったけど別にあやしいところはなかったよ?占い師さんがすっごく綺麗で~、タロットカードも可愛くて~、あたしも占いやってみたくなっちゃった!」 

「へぇ~」 

 大人が行っても特に問題ないと感じたなら普通ふつうのお店だったのかな? 

「鈴奈も行ってみたら?」 

「ん?んー、そうだね、そのうち…」 

「最後にもらえるチョコも美味おいしいし!絶対ぜったい行ってみて!」 

 出た、あやしいチョコレート。そう思っても口には出さない。それが無駄にもめず、無駄に傷つかずに済むための方法だと、私は知っているんだ。 
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