【完結】占い館のチョコレート

四季苺

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七草がゆ同盟

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 始業式しぎょうしきから一週間がった。カリン達は転校生を珍しがって、なずなちゃんに積極的せっきょくてきに話しかけていた。「一緒に帰ろう」とか「家に遊びに来ない?」とさそっている姿すがたを見たこともある。 

 ターゲットを決めての意地悪いじわるも、しばらく中止されていた。たぶん、なずなちゃんに悪く思われたくなくて取りつくろっているのだろう。 

「いつまでもつかな」 

 帰り支度じたくをしていたら、新くんがボソリと言うのが聞こえてきた。わたしは聞こえないふりをしたけど、同意見どういけんだ。どうせ近いうちにまた誰かをいじめるだろう。せめて関わり合いにならずにむようにと、わたしは一人でそっと教室を出た。 

  

 帰り道、占い館まであと少しというところで、リゼさんに会った。 

「あ!鈴奈ちゃん」 

「リゼさん、こんにちは」 

 初めて占い館の中に入ってから約ニか月の月日がながれたけど、わたしはまだチケットを使っていない。単純たんじゅんに占ってほしいことがないからだ。もったいないし、いつかのために取っておこうと思う。 

 でも、あれからリゼさんとスーパーや道で顔を合わせることが増えて、よく雑談ざつだんをするようになった。今日もスーパーの帰りかな?とリゼさんの手を見ると、何も持っていなかった。 

「お散歩さんぽ?」 

 リゼさんが良いと言うので、すっかりタメ口のわたし。 

「そう、お客さん来ないし予約よやくもないから」 

突然とつぜん来るかもよ?お店番みせばんしなくて良いの?」 

「ダイジョーブ、ほら」 

 リゼさんは占い館のドアを指さす。そこには丸い画用紙がようしられていた。円は線で三つに区切くぎられ、「います」、「いません」、「きゅうけい中」と書かれている。円の中心部ちゅうしんぶからのびた矢印やじるしは「いません」をさしていた。「16時までに帰ってきます」というふせんもけてある。 

「これ、よく保健室ほけんしつの入り口に貼ってあるやつーー!!」 

真似まねしてみた」 

 リゼさんはニヤリと笑う。 

 わたしはリゼさんの子どもみたいなところが好きだ。「あとで」、「あとで」とかえしていつまで経ってもパン屋さんなままの占い館も、今では気に入っている。 

  

 なんか自由な感じがするから。 

  

 「占い館はこういうイメージ」とか、「普通大人はこう行動こうどうすべき」とか、そういう他人の視線しせんをリゼさんは気にしない。自分の好きなようにする。それがわたしにはとってもかっこよく見えるんだ。 

「あれ、見かけない子」 

 リゼさんはわたしの後ろの方を見やって言った。気さくなリゼさんは、三か月の間にこのへんに住む大体の人と顔見知かおみしりになったそうだ。 

「ああ、先週うちのクラスに転校してきたの」 

「へぇ~、挨拶あいさつしとこっと」 

 リゼさんはわたしが来た道をずんずん進んで行き、なずなちゃんに話しかけた。 

「こんにちは」 

 なずなちゃんは目を見開いて一歩後ずさる。見知らぬ大人に突然話しかけられたせいだろう。ちょっと人見知りっぽかったし。 

 ヤバい、リゼさんが不審者ふしんしゃになってしまう。 

「あの、わたし同じクラスの…」 

「あっ!佐々原ささはらさん!」 

 なずなちゃんとはまだあまり話せていなかったのだが、わたしのことを覚えてくれていたみたいだ。 

おどろかせてごめんね。こちらはリゼさん。占い師さんだよ」 

「あの店で占ってるから、いつでも遊びに来てね!」 

 リゼさんはどう見てもパン屋な占い館を指差し、二カッと笑う。 

「え…パン屋さんじゃないんですか?」 

 なずなちゃんの率直そっちょく疑問ぎもんにわたしはす。 

「ほらぁ~!リゼさん、いつまでもお店の見た目変えないから~」 

「だって~!」 

 なずなちゃんはわたし達が笑い出した理由が分からずキョトンとしていた。リゼさんと別れた後、一緒に帰りながら説明をすると、なずなちゃんも大笑いしていた。特に、出しっぱなしのトングとトレーの話のところはなずなちゃんのツボにはまったらしい。 

 ひとしきりリゼさんのお店について話した後、わたしはなずなちゃんにずっと聞きたかったことを聞いてみる。 

「ねぇ、なずなちゃんって一月七日生まれ?」 

「えっ?よく分かったね!…あっ!」 

 なずなちゃんも気付いたようだ。 

一月七日は、一年の無病息災むびょうそくさいねがって七草がゆを食べる日。 

 「せりなずな 御形ごぎょうはこべら ほとけすずなすずしろ これぞ七草ななくさ」という歌で知られているように、七草がゆにはこの七種類ななしゅるい植物しょくぶつを入れる。わたしの名前は、この七草にちなんでつけられたから、もしかして同じ日に生まれたんじゃないかな?と思っていたんだ。 

「佐々原さんも誕生日一月七日!?春の七草のすずななの?」 

「当たり」 

 なずなちゃんは、すごいすごいと言って喜んだ。誕生日が一緒の人にも、名前の由来ゆらいが同じ人にも初めて会ったと言う。わたしも同じだったから、すごくはしゃいでしまった。 

「わたし達、七草がゆ同盟どうめいだね!」 

 なずなちゃんがそう言って、わたしは「何それ」と笑った。 

 その日からわたし達は、とても仲良くなっていった。 
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