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DAY7-6 24時までのカウントダウン②
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その後は、お父さんとお母さんが交代でご飯を食べた。お母さんがご飯を食べてる間はお父さんと部屋で二人だったので、最初ちょっと気まずかった。お父さんが「ただ待ってるだけもつまらないだろう」と言って、本を読むことを勧めてきた。ダッシュで自分の部屋から芥川龍之介とか太宰治の本を取ってきてくれたけど、ちょっと気分じゃないので昨日買った本を読むことにした。そして、お父さんは私の部屋にあるラノベを読んでいる。いい年したオッサンがキラキラのイラストが表紙の小説を読んでいる姿はちょっと笑える。あ、お父さんは国語教師なんです。
「凛々、お風呂に入っちゃいましょう」
夕飯を済ませた後すぐ、お母さんはそう言った。
「え…」
「大丈夫、滑って転んで頭打ったり、湯船で寝ちゃって溺死したりすることがないように、お母さんが見張ってるから」
「…分かった」
お父さん・私・お母さんの順に並んで慎重に階段を降りて、一階のバスルームに向かう。お母さんと一緒にお風呂に入るのは何年ぶりかな、と記憶を遡ってみたけど、思い出すことはできなかった。
「は~」
緊張しながらお風呂に入ったせいか、なんだかグッタリ疲れてしまった。保湿して髪を乾かしたら、もう九時を過ぎていた。お父さんももうお風呂を済ませて私の部屋にいる。
「凛々、寝てもいいよ。お母さんはここで仕事させてもらうね」
「お父さんも」
二人は私の部屋のローテーブルにパソコンを並べて、何か打ち込んだり小テストの丸付けをしたりしている。私の部屋が職員室状態だ。
「んー、寝るのは怖いからやめとく…」
寝てる間に呼吸が止まっても、集中してる二人は気づかないかも。
「それなら、スマホゲームとか動画とか、何か気が紛れることをしたらどうかな?」
お父さんは私のスマホを差し出す。そういえば、今日はローテーブルにスマホ置きっぱなしで、全然触ってないや。
「…あ…」
「友達?」
「あ」しか言ってないのに、なんで分かるんだろう?お母さんはふわっと笑ってそう聞いた。
「うん、沙弥が今日の授業のノートの写真とか、明日の持ち物とか教えてくれた」
「頼む前からかぁ、気遣いができる友達だなぁ」
お父さんは目は小テストに向けたまま、高速で赤ペンを動かしながら言った。
「クラスラインも…お大事にっていっぱいきてる。西村と八田まで…。フフッ、変なスタンプ」
「凛々は愛されてるなぁ~」
お父さんは自慢気に笑った。
「私、学校では明るくていい子ぶってるから。嘘つきなんだよ」
「「アッハッハッハ!!」」
二人は同時に大笑いする。お父さんはともかく、お母さんがこんなに笑うの珍しい。
「誰にだって、『よそよきの顔』くらいあるわよ。凛々が嘘つきなら、お父さんなんて大嘘つきだよ?研究授業でお父さんの学校行った時、キリッとしてキビキビ動いてて『誰?』ってなったわ」
「そう言うな~、職場でこんなのんきだったらクビになっちゃうだろ~」
シャッ、シャッと赤ペンを動かしながらお父さんは続ける。
「周りの人とうまくやっていけるように、頑張ってるだけだ」
その言葉は、私の中にストンと落ちた。
そう、そうだ。
私も、学校の私が全部偽りってわけじゃない。ゲーム大好きなことは隠してるし、正直そんなに気乗りしない時もテンション上げて楽しいふりしてる。だけど、それはクラスのみんなと仲良くしてたいからだ。
「お母さんだって、電話出る時、普段と比べて三オクターブくらい声高いぞ」
「えーそお?でも、それも私の声だし、何も問題ないわ」
開き直ってる人もいる…。
「あははっ」
私はなんだかおかしくなってしまった。
そして、もう一度LINEのメッセージひとつひとつを読む。
「嘘の私」じゃなくて「頑張ってる私」を好きだって面白いって言ってくれるみんなに、また会いたい。
「私、明日学校行きたいからノート写しておく」
「えらいぞ」
「無理しないようにね、今日寝るの遅くなるから、遅刻で行ってもいいよ」
学校のリュックからノートとペンケースを取り出し、勉強机に向かう。
三人それぞれに違うことをしているのに、不思議と温かい空気が流れていた。
「凛々、お風呂に入っちゃいましょう」
夕飯を済ませた後すぐ、お母さんはそう言った。
「え…」
「大丈夫、滑って転んで頭打ったり、湯船で寝ちゃって溺死したりすることがないように、お母さんが見張ってるから」
「…分かった」
お父さん・私・お母さんの順に並んで慎重に階段を降りて、一階のバスルームに向かう。お母さんと一緒にお風呂に入るのは何年ぶりかな、と記憶を遡ってみたけど、思い出すことはできなかった。
「は~」
緊張しながらお風呂に入ったせいか、なんだかグッタリ疲れてしまった。保湿して髪を乾かしたら、もう九時を過ぎていた。お父さんももうお風呂を済ませて私の部屋にいる。
「凛々、寝てもいいよ。お母さんはここで仕事させてもらうね」
「お父さんも」
二人は私の部屋のローテーブルにパソコンを並べて、何か打ち込んだり小テストの丸付けをしたりしている。私の部屋が職員室状態だ。
「んー、寝るのは怖いからやめとく…」
寝てる間に呼吸が止まっても、集中してる二人は気づかないかも。
「それなら、スマホゲームとか動画とか、何か気が紛れることをしたらどうかな?」
お父さんは私のスマホを差し出す。そういえば、今日はローテーブルにスマホ置きっぱなしで、全然触ってないや。
「…あ…」
「友達?」
「あ」しか言ってないのに、なんで分かるんだろう?お母さんはふわっと笑ってそう聞いた。
「うん、沙弥が今日の授業のノートの写真とか、明日の持ち物とか教えてくれた」
「頼む前からかぁ、気遣いができる友達だなぁ」
お父さんは目は小テストに向けたまま、高速で赤ペンを動かしながら言った。
「クラスラインも…お大事にっていっぱいきてる。西村と八田まで…。フフッ、変なスタンプ」
「凛々は愛されてるなぁ~」
お父さんは自慢気に笑った。
「私、学校では明るくていい子ぶってるから。嘘つきなんだよ」
「「アッハッハッハ!!」」
二人は同時に大笑いする。お父さんはともかく、お母さんがこんなに笑うの珍しい。
「誰にだって、『よそよきの顔』くらいあるわよ。凛々が嘘つきなら、お父さんなんて大嘘つきだよ?研究授業でお父さんの学校行った時、キリッとしてキビキビ動いてて『誰?』ってなったわ」
「そう言うな~、職場でこんなのんきだったらクビになっちゃうだろ~」
シャッ、シャッと赤ペンを動かしながらお父さんは続ける。
「周りの人とうまくやっていけるように、頑張ってるだけだ」
その言葉は、私の中にストンと落ちた。
そう、そうだ。
私も、学校の私が全部偽りってわけじゃない。ゲーム大好きなことは隠してるし、正直そんなに気乗りしない時もテンション上げて楽しいふりしてる。だけど、それはクラスのみんなと仲良くしてたいからだ。
「お母さんだって、電話出る時、普段と比べて三オクターブくらい声高いぞ」
「えーそお?でも、それも私の声だし、何も問題ないわ」
開き直ってる人もいる…。
「あははっ」
私はなんだかおかしくなってしまった。
そして、もう一度LINEのメッセージひとつひとつを読む。
「嘘の私」じゃなくて「頑張ってる私」を好きだって面白いって言ってくれるみんなに、また会いたい。
「私、明日学校行きたいからノート写しておく」
「えらいぞ」
「無理しないようにね、今日寝るの遅くなるから、遅刻で行ってもいいよ」
学校のリュックからノートとペンケースを取り出し、勉強机に向かう。
三人それぞれに違うことをしているのに、不思議と温かい空気が流れていた。
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