死にたがりJCと占い師のアイスクリーム

DAY1-1 あやしい占い師

　「死にたい」

　いつからか口ぐせになってしまったこの言葉を、私香坂凛々こうさかりり十五歳は今日もつぶやいていた。SNSとかじゃなくて、リアルで。

　聞いて欲しいとかじゃないんだ。助けて欲しいとかでもない。ただ、言わずにいられない。想いがあふれて、言葉としてこぼれ落ちるだけ。

　それが愛とか恋とかだったら、どんなにロマンチックだろう。

　橋の欄干らんかんに手をかけて、昨日の大雨で流れが速くなった川を見下ろしながら、私はそう思った。肩まで伸びた黒髪がサラリと顔にかかる。

「疲れた…」

　別に、特別なことは何にもしてない。
　毎日、起きて学校に行って、一応勉強して食べて寝てのくり返し。
　なのに、なんでこんなに疲れるの。

「ううん」

　クラスメートの話に、興味がなくてもあるふりをして大げさに笑う。
　仕事ばっかりで私に無関心の両親に失望されたくなくて、真面目にふるまう。

　そんなオプション的なムーブが最高に疲れるって、分かってる。

　ザアア…

　川の水が勢い良く流れる音が耳に響いた。
　赤く染まった紅葉が濁流に飲み込まれるのが見えた。

「………」

　ここから落ちたら、楽になれるのかな…。あの葉っぱみたいに、水に飲み込まれたら、つまんないことで悩んだり、誰かに気を使ったりすることもなくなって…なんにもなくなったら…。

　私は欄干らんかんに手をかけ、身を乗り出した。

「ねえ！」

　ビクリと身を震ふるわせてふり向くと、サラサラの長い金髪にエメラルドグリーンの瞳めをした女の人がこっちを見ていた。

　死のうとしていたことを叱しかられる？
　かわいそうだねってなぐさめられる？

　…どっちもイヤだ。

「あたし、占うらない師しなの。良かったら、占っていかない？」
「…は？」