タトゥーの男

夢咲忍

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第1章

彼との新宿デート

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 今日は6月10日。関東地方は梅雨入りした。

「ねぇ創大(そうた)、お母さんねぇ明日は帰るの遅くなるからね。」

「んー」

創大(そうた)は私の息子で現在14歳の中学3年生だ。母親である私には全く関心がなく、夕食を食べ終わるといつも何をやってるのかずっとスマートフォンをいじっている。

「明日はおばあちゃんの言うこときくのよ。」

「んー」

創大は顔をこちらに向けもせずに返事をする。

私は雁原あやめ、明日35歳の誕生日を迎えるシングルマザーだ。交際している男性がいて、明日は誕生日なので一緒にディナーをする約束をしている。おばあちゃんとは私の母親のことで、同居している。


 私は埼玉県戸田市という所に住んでいて、倉庫内作業をするパート従業員だ。朝9時から夕方4時までの仕事だ。戸田市は埼玉県南部に位置し、倉庫が多い所だ。シングルマザーだが、彼氏がいてまぁまぁ充実した生活を送っている。ただ、不満があるとすれば性生活だ。デートの頻度が少ないだけでなく彼はED(勃起障害)で挿入が困難であるため欲求不満だ。お風呂ではシャワーを局部に当ててオナニーをしてしまう。声を我慢しなければならない状況がまた興奮するのだ。クリトリスに強めにシャワーを当て、局部がヌルヌルになってきたところで中に2本指を入れ、グチュグチュかき混ぜてしまう。シャワーの音にかき消され、激しく指を出し入れし、絶頂に達するのだ。彼はいつも優しくしてくれる。しかし、時には荒々しくして欲しいと思うのだ。オナニーする時は現実にはあり得ないだろうが、痴漢やレイプの被害に遭うことを妄想してしまう。


 私は身長は女性としては平均的だが、体型はグラマーと言えるだろう。たわわな乳房で巨乳、いや爆乳というレベルだ。そしてウエストは普通だが、お尻は大きめ。日本人離れした体型だと言われることもある。


 6月11日、朝から外は雨が降っている。ジメジメとした湿気がまとわりつく、とても嫌な気候だ。しかし、今夜はディナーだ。私の心は晴れている。

 創大と母と一緒に朝食を済ませ、創大を学校に送り出すと身支度を始める。

職場から直接ディナーのお店に向かうため、朝から気合いを入れて行く。下着は真っ赤なブラジャー&ショーツで決めていく。私が持っている中でも1番のセクシーな下着だ。下着が透けないよう肌色のキャミソールを着る。そして少し胸元が開いたブラウスを着て、冷房対策もあり薄手の黒いカーディガンを羽織る。下は花柄の膝上10cmのスカートを履く。

 耳には金色の金具に白と黒のリーフ型のイヤリングを付け、左腕にには白とピンクの数珠ブレスレットをはめ、腕時計をする。数珠には意味があり、白は清らかさ・純粋さ、ピンクは愛情・癒し・女性の美しさを引き立てると言われているようだ。

 身なりが整い、黒いブランドのショルダーバッグを肩にかけ、

「お母さん、創大のことお願いね。じゃあ行ってきます。」

 最寄駅はJR埼京線の北戸田駅。勤務先はJR埼京線の戸田公園駅だ。いつもなら自転車で20分程で着く所だが、今日は雨だし汗もかきたくないので電車で出勤することにした。

 自宅を出て約5分で北戸田駅に到着。8時過ぎのプラットホームは通勤ラッシュということもあり、とても混んでいる。そして都内方面の上り電車に乗らないとならないので、かなりの気合いを入れる必要がある。何しろ私は滅多に電車で通勤してないものだから、混雑する電車には慣れていないのだ。4列に並び電車が到着するとパラパラと降りる人がいるが、乗る人が多い。人の流れに乗り、電車に乗り込んだ。通路の真ん中に立った。手摺りにも吊り革にも届かない場所だ。しかし、車輌はぎゅうぎゅう詰めなので、電車が揺れたところでほとんど隙間がないので倒れる心配はない。皆お互い寄りかかっているのだ。私は両手を下に『気をつけ』の姿勢になってしまった。隙間がないため、今更腕を挙げることは出来なくなってしまった。周りを見渡すとほとんどの人が同じ方向を向き、同じ方向に背中を向けているのだが、私はそれを無視するかのように自分だけ90度違う方向を向いている。私の右側にかなり長身の男性が立っている。白いポロシャツに褐色の肌が印象的だ。それに首には薔薇のタトゥーが入っている。端正な顔立ちをしている。年齢は20歳代後半ぐらいだろうか。私の正面には50歳前後のグレーのヨレヨレのスーツを着た男性が立っている。ハンチングを被って私と逆方向に首を向けているため、顔はほとんど見えない。

電車は走りだし、ガタンゴトンと揺れる。身体は揺れに任せるしかない。ただ、私は胸が目立つ程の大きさがあり、正面に立っている男性の上腕に揺れる度に胸を押し付けてしまっているのだ。周りを見ると上手くガードするには胸の前に腕を組むようにしたり、鞄を抱えたりしている女性がいる。それと女性専用車輌というのがあったことを忘れていた。しかし、たった4分の我慢だ。

(私は何回このおじさんに胸を押し付けてるんだろう…)

そんなことを考えていると下腹部辺りに何かが当たるような気がした。

(気のせいか?)

私は電車は揺れてるし気のせいだと思った。しかし、揺れとは関係なく不自然に何だかサワサワとされている気がするのだ。残念ながら私の両手は人に挟まれて動かす事が出来ない。左手はショルダーバッグが落ちないようにしながら挟まれていて、右手は下手に動かすと右側に立っている男性の股間に当たりかねない。痴漢を疑って動いたら自分が痴漢になってしまってはバカを見るだけだ。何とかやり過ごそう。そう考えていたが、触ってくる手がエスカレートしてくる。一瞬でスカートの裾をたくし上げ、ストッキングの上から局部に触れてきたのだ。

(あっ、痴漢だ!間違いない。)

ところが私は勇気が無く声を出すことが出来ない。もし声を出して、相手にナイフで刺されたりしても嫌だし。ここはあと数分の我慢だ。あと少しで次の駅の戸田駅に到着する。(左側にいるのも男性だが私には背を向けている。きっと正面にいるおじさんだわ。)

 ストッキングの上から触ってくる手は割れ目をなぞるように上下に動き出した。するとストッキングとパンティ2枚の布があるにも関わらず私はクリトリスを刺激されて感じてしまった。私はおじさんに触られて気持ち悪いというのと裏腹に気持ちいいという感情が湧いてしまった。『痴漢です』と声を挙げたいという気持ちがありながらも、『あっ、気持ちいい』という声が出てしまいそうで歯をくいしばるしかなかった。

 私はうつむきながらも無意識に息が荒くなっていたらしい。右側にいた首にタトゥーを入れた若い男性が、

「大丈夫ですか?」

と私の耳元で囁くように声をかけてきた。私は顔を見ることは出来なかったけど、小声で、

「はい」

と答えながら頷いた。

 少しすると電車は減速し、戸田駅に到着した。降りる客はいるが、乗ってくる客はそれよりも多い。更に車輌内はぎゅうぎゅう詰めになる。少し立ち位置がずれて、先程まで正面にいた50歳前後のおじさんは少し離れたところに行った。私はそのおじさんが痴漢だったと思い、ホッとした。

再び電車は走り出した。私の緊張はややほぐれた。もう大丈夫。あと2分すれば降車駅である戸田公園駅に到着するのだ。

 電車は相変わらず揺れる。気づくと私は先程まで右側にいた男性がほぼ正面に向かい合って立っていた。しかも胸の谷間が見えている服装で胸が当たっているのだ。男性が下を向けば谷間が見えるのだ。これはさすがに恥ずかしい。だが、こんな恥ずかしい状況に私は興奮してしまうのだ。いつも痴漢やレイプに遭う状況を妄想してオナニーしているため、そして先程まで実際に割れ目をなぞられていた事実があるため、興奮していた。

 正面にいる若い男性がまた声をかけてきた。

「顔が赤いですけど、大丈夫ですか?具合でも悪いんじゃないですか?」

と。タトゥーを入れてるというだけで悪い印象を持つ人もいるようだが、彼は優しい人のようだ。

私は小声で

「大丈夫です。」

と答えた。

 私が少し顔を挙げると、私の目線がちょうど首元のタトゥーがよく見える。そしてポロシャツの上からでもよく分かるぐらい大胸筋が発達している。鍛え上げた筋肉質の身体をしているようだ。

胸の高さが違うにしても電車が揺れる度に私の胸がその彼の筋肉質の身体に当たるのだ。私の右腕が少し動かせることに気づき、胸が当たらないように肘を曲げ、下から胸を抱えるようにしてみた。すると残念ながらブロックするようにはならず、ただ乳房を下から持ち上げて谷間を強調してるだけになってしまった。私は恥ずかしくなってうつむいた。下を向いても足元は見えず、自分の谷間が見えるだけだ。

(あれ、また下腹部が触られてる。あっ…)

私は痴漢は先程まで正面にいたおじさんだと思っていた。ところがそのおじさんは手の届かない所にいる。ということは痴漢はこのタトゥーの男性だったのか!

スカートの裾をたくしあげる。そして局部をストッキングの上から触ってくる。

「んっ…」

その痴漢と思われる当事者の彼は何も知らないかのように、

「どうかしましたか?」

と私の右の耳に囁いてくる。

「い、いえ…」

ガタンと電車が揺れたため、私は倒れないようについ脚を肩幅に開いてしまった。するとこれ幸いと痴漢の手は股に入り込んで来た。恐らく3本指が股に入り込み、その真ん中の指が割れ目をなぞるように動くのだ。

(あんっ、そんなにされたら感じちゃう)

心の中でそう思っただけのつもりが、

「あんっ」

と声に出てしまった。自分でもハッとして周りを見回したが、誰にも気づかれていないようだ。1人を除いては…

「本当に大丈夫ですか?」

彼は白々しい。中指と思われるその指は第2関節を曲げ、私の大事な穴の辺りを押してきた。その穴の場所を回るように圧力をかける。

「…」

「大丈夫ですか?大分湿ってるようですよ。」

と囁いてきた。

私は恥ずかしさできっと更に顔が真っ赤になったことだろう。身体が熱い。汗まで出てきた。

一旦彼の手は股から離れた。次の瞬間更にスカートをたくしあげ、ウエスト部分まで触れてきたと思ったらグイッと力を入れ、ストッキングの中に手を入れてきた。私は抵抗することが出来ずにいるとアッと言う間にパンティの中にまで手を入れてきた。私の薄い陰毛を通り過ぎ、その手は簡単に割れ目に到達した。私の割れ目は既にヌルヌルに潤ってしまっていた。恥ずかしい。痴漢に遭って濡らしてしまうなんて。

 彼の指は摩擦なくヌルヌルと割れ目を擦る。穴の近くまで行ったと思ったら戻って来てクリトリスを撫でる。

「うっ…」

私は顔をしかめて唸ってしまった。

彼はまた白々しく、

「大丈夫ですか?本当は具合悪いのでは?」

と言ってくる。

「いえ…」

彼の指はストッキングの中で奥に進み、穴の辺りをクチュクチュといじる。

「ベチョベチョになってますよ。音が聞こえてきそうなぐらいに…」

私の耳元で囁いてくる。

「いえ、そんなこと…」

「こういうのが好きなんでしょ?」

「そんなこと…あっ…」

ヌルっと彼の指が穴の中に進入してきた。

「あぁ…」

声を我慢する。私は歯をくいしばることも出来ずに吐息を漏らしてしまう。

「上の口より下の口の方が素直だ。」

「そ、そんなことない…」

『次は戸田公園、戸田公園駅に到着します』

電車のアナウンスが流れた。

彼は、

「おっと、ここで降りなきゃ。いつもこの電車にいるから、また逢えたら…」

ヌルっと指を抜いて、パンティから手を抜いた。

私はいつの間にか右手が動かせる状況になっていて、彼の胸に手を置いていた。厚い胸板が女心をそそる。だが、痴漢だ。違う出会い方をしていれば… なんて私は考えてしまった。

電車は停止し、彼は降りて行った。

私はハッとしたが、

(あ、私もここで降りなきゃ)

降車する人の流れに乗って、無事に降りることが出来た。


 駅のトイレに入り、パンティを下ろした。彼の言う通り、ヌルヌルになっていた。私は痴漢願望を持っていた。しかし、現実には遭うとは思っていなかった。でも感じてしまったのは事実。トイレットペーパーで拭き取り、トイレを出た。

 私は触られた感触と彼の囁きを思い出してしまった。すると下腹部にはジュンと潤う感覚があった。

(あ、いけない。考えたらダメ。今日は仕事。そして夜は彼とデートなんだから。)

 北戸田駅の改札を出て、会社の送迎バス乗り場に向かう。

(あの人、筋肉質だった…)

私は筋肉質な男性が好きだ。よりによってあの若者が痴漢だなんて。


 送迎バスに乗るとまたあの痴漢のことを思い出してしまった。

(最初はあのおじさんが痴漢だと思ってたのに、あの若者が痴漢だなんて…)

思い込みでおじさんだと思ったが、若者が痴漢だった。思い出すだけで身体が熱くなる。指の動きまで思い出してしまう。

(痴漢はいけないこと。本当は「痴漢です」と声を出さないといけなかった。なのに私はそれが出来なかった。それどころか私は濡らしてしまった…)

きっと端から見れば顔を赤くしていたことだろう。幸い送迎バスに人はいたが、誰にも悟られることは無かったようだ。

『着きましたよ。降りてください。』

運転手の声でハッとしたが、私はボーッとしていた。


 夕方の4時。仕事が終わった。今日はミスはしなかったものの、同僚から、

「どうかしたの?大丈夫?」

と3回も言われてしまった。

 会社の制服から私服に着替え、送迎バスに乗り北戸田駅に向かう。そして、JR埼京線の上り電車に乗って新宿駅へ向かう。電車は朝のラッシュ程の混雑はしていない。

痴漢には遭わず無事に新宿駅に着いた。外は雨が降っているため徒歩で約束の高層ビルに向かう。そのビルの上の方にあるレストランで彼と一緒にディナーする予定になっている。レストランの予約は18時30分だと聞いている。待ち合わせはビルの1階のエレベーターホールだ。

 少し歩くと高層ビルに到着した。まだ早いがエレベーターホールで待つことにした。

時間が余っているため朝の痴漢のことを思い出してしまった。彼は女の扱いに慣れているどころか痴漢行為自体に慣れているようだった。

(あんなのは女の敵よ…)

そう思いながらもあの指使いを思い出すと、

(んっ…)

局部がジュンとなってしまった。潤ってしまうのを自覚してしまった。

(私は何を考えているの?これからデートなのよ。)

自分の考えを否定しながらも、

(私は餓えている。だって35歳だったら女盛りじゃない。彼はこんな身体を抱いてくれないんだもの。EDだから仕方ないのは分かってる。だけど...)

またジュンとなった。

私は辺りを見回した。トイレのマークが出ているのを見つけて、そちらに向かった。個室に入り下着を下ろし、局部をトイレットペーパーで拭いた。自分が思っていたよりも局部は濡れていた。いつでも入れられる準備が出来ているような濡れ方だった。シャワー付きトイレなので、綺麗に洗い、拭き取って身支度をした。

 手を洗い鏡に映る自分の顔を見ると赤らんでいた。

「ふぅ」

と大きく息を吐き出し、自身で落ち着くように自分に言い聞かせた。

 トイレを出て辺りを見回すと彼が自動ドアを通過してビルに入って来るところだった。

「こんばんは。お疲れ様。」

「やぁ、お疲れ様。待った?」

「ううん。来たばかりよ。」

「じゃ、上ろうか。」

「うん」

2人は他の乗客に混じり高層階に向かうエレベーターに乗った。

 最上階の1つ下の階にレストランはある。エレベーターを降りてレストラン前に着くと彼は入口で待ち受けるウェイターに名乗った。

「お待ちしておりました。ご予約承っております。どうぞ、こちらへ。」

と私達を窓際の席に案内してくれる。

「まぁ綺麗!」

私は思わず声に出した。窓の外にはキラキラと光る夜景が見えていた。

席に着くとまずはワインで乾杯し、食事を楽しんだ。そしてデザートが運ばれて来たタイミングで、彼はビジネスバッグから小さな箱を取り出した。

「誕生日おめでとう。これプレゼントね。気に入ってくれるといいんだけど。」

「うわぁ、ありがとう。」

長方形の箱を受け取った。

「開けていい?」

「もちろん」

彼は笑顔で答える。包み紙を剥がし、箱を開けるとそこにはネックレスが入っていた。黒く透き通る宝石のネックレスだ。

「これ、私の誕生石?」

「そう。アレキサンドライトだよ。」

「ありがとう。アレキサンドライトは持ってなかったんだ。それにこのデザイン可愛い。付けていい?」

「うん」

私はすぐに付けて見せた。今日は何も付けてなかったので、ちょうどいい。胸元が開いているブラウスなので、ちょうど良くもらったばかりのネックレスが谷間の上に見える。

「どう?可愛い?」

「とても素敵だね。」

こんな会話をしてデザートを食べている間は痴漢のことは忘れることが出来た。

「明日は休みだったね。ゆっくり出来るといいね。」

私は明日は休みだ。

「うん。明日は予定無いからのんびりしようと思ってる。」

「うん。」

彼との楽しい時間は過ぎた。子供を両親に任せているとは言え、そんなに遅くなるわけにはいかなかった。


 21時頃新宿駅で彼とは別れた。1人でJR埼京線に乗り、北戸田駅へと向かった。下り電車は混んでいた。席は空いてなく、立って吊り革につかまった。後ろに立つ人のお尻と自分のお尻が当たる。男性だろうか。筋肉質な感じが伝わってくる。これは特に痴漢されているわけではない。しかし、男性の身体が自分のお尻に当たっていることで意識してしまう。普段はそんなことはないのだが、今朝痴漢されたばかりだからである。この男性は私のお尻に当たっていることをどう思っているのだろうか。柔らかいと感じているのか?若しくは何とも思わないのか?

私はそのうち手で触りに来るのではないかと警戒してしまう。

(あ、前にいる男性の肩甲骨辺りが私の胸に当たる。これは仕方ないか。でも、これはわざとなの?自意識過剰かもしれない。きっと私の胸が大きめだからいけないの。)

 池袋駅に到着すると慣性の法則通り、私はやや前につんのめる。吊り革につかまっているので倒れることはないのだが。こういう状態なので、前にいる男性に更に強めに胸を押し付けてしまう。男性はチラリと後ろを向いた。

「あ、すみません。」

私は謝った。

「いえ、大丈夫です。」

と男性は言った。

電車は走り出した。電車が揺れる度に男性の背中が私の胸に当たる。気のせいか、先程までよりも男性が後ろに体重をかけているような気がした。そのために私の胸に当たる回数は多く感じられた。

(この人、もしかしたら地味に痴漢してるのかも…)

私は身体が熱くなった。恐らくこの時顔も赤くなっていたかもしれない。

電車は赤羽駅に到着した。少し立ち位置がずれた。私は電車に乗るのがやはり下手だった。乗客が押し合い、電車が走る頃に落ち着いた向きが男性と向かい合ってしまった。男性が正面と斜め左右にいて、3人が私の方を向いている。そして、その3人はやや下を向いていた。何を見ていたのか。それは私のネックレスではなく、恐らく胸の谷間だろう。それは私が出しているのが悪い。仕方ないことだ。男性の性としては当たり前かもしれない。

 私の左前にいる男性の腰が揺れに合わせて動いた。スラックスの前の部分が私の下に垂らした左手に当たった。布地の下に硬いモノがあるのが分かる。

(んー、これは痴漢?いや、ただ谷間を見て反応してしまっただけ?)

私は男性の下半身を反応させてしまった。もしかするとここにいる3人は皆硬くしてるのか?私はそんなに嫌らしい体型をしてるのか?

そんなことを考えていると自分までムズムズしてきてしまった。私は今谷間を見られている。

(きっとこの人達は触りたいと思ってるんだろうな。揉みたいと思ってるんだろうな。こんな所で触られたら恥ずかしい。けど、私だって欲求不満だから触って欲しいと思う時はある。彼は好い人。でも、そういうことが出来ない。我慢しなきゃいけないの。)

無理矢理自分を納得させるしかなかった。心は納得した… かもしれない。ところが身体はどうだろう。自覚出来る程局部が濡れている。

 電車が揺れる。私の胸が正面の男性に当たり、押し潰され、柔らかい肉が上に持ち上がり、より嫌らしく見える。男性達は1度も目を離さず、谷間を見つめている。私はまるで裸を見られているような感覚に陥った。もし今ストッキングの上からでも局部を触られたら濡れていることがバレてしまいそうなぐらい潤っていたに違いない。そんな事を考えているうちに北戸田駅に到着した。

(私は痴漢に遭った被害者なのよ。そんなのはいけないこと。それなのに感じてしまっている自分がいる。何なのこの感じ…)

 北戸田駅から徒歩で自宅に向かった。


 自宅に着いた。

「ただいまー。お母さん、今日はありがとね。」

息子の創大を頼んでおいたのだ。創大はソファでスマホをいじっている。母親である私には目もくれない。

 私はすぐに荷物を置き、風呂場へと向かった。パンティを下ろすと局部はヌルヌルだった。風呂場に入りシャワーのお湯を出す。手を洗い局部に触れる。

「あっ…」

クリトリスを触ったりしなくても既に簡単に指が入るぐらいに濡れている。いや、そんなレベルではない。ストッキングが無ければ太ももを伝って流れてしまうぐらい濡れていた。すぐに指2本を入れて激しく中をかき混ぜた。見知らぬ男に見られ、触られ、犯されるのを妄想しながら。

グチュグチュ…

すごく湿った音がしている。それをシャワーの音がかき消している。

朝の痴漢の顔を思い出した。指の動きを思い出した。

(気持ちいい、そこ、感じる…んっ)

「んっ…」

少し声に出てしまった。家族がいるので声を我慢しなければならない。

グチュグチュ、グチュグチュ…

指の出し入れを激しくする。

グチュグチュ、グチュグチュ、グチュグチュ…

「んっ、んっ…んっ、あっ…」

立っていられなくなり、その場にうずくまって両方の太ももを痙攣させた。

シャーと音を立てながら、温めのシャワーが身体に当たる。しばらく私は動けなかった。
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