最恐 百物語

いつき

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第22話目 ピエロの秘密

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そのピエロは、ある日突然、街の広場に現れた。
白塗りの顔、赤く大きな口、青い目、そして真っ赤な鼻。
笑っている。ずっと。ずっと、笑っている。

「なんか昔ながらのピエロだね」
「懐かしいっていうか、ちょっと怖いけど」

子どもたちは最初こそ楽しんでいたが、誰もそのピエロの名前を聞いたことがなかった。

 

ピエロはしゃべらない。
音楽も鳴らない。
ただ、無音の中でパントマイムを繰り返していた。

風船をふくらませて渡す。
見えない箱に閉じ込められたふりをする。
誰かを指差して――ゆっくりと、口の端を吊り上げる。

 

ある日、ある少年がつぶやいた。

「ピエロの口って、なんであんなに赤いの?」

 

するとその夜、少年は帰ってこなかった。

 

次の日、広場に来た人々は見つける。
ピエロの靴の横に、小さなスニーカーが揃えて置いてあったことを。

 

そして、何も言わずにピエロはまた笑っていた。
口を裂けるほどに。
赤く。真っ赤に。

 

ある母親が問いかけた。
「誰か、あのピエロに話しかけたのかしら?」
「うちの子も昨日“口が変だ”って……」

 

それから数日、子どもがひとり、またひとりと消えていった。
警察も調べたが、ピエロはただ立っていただけだったという。

 

彼は何もしていない。
ただ、笑っていた。
ずっと、口を開けたまま。

 

ある者は見たという。

ピエロのその口の中。
奥に――

 

“腕”が数本、引っかかっていたのを。

 



■エピローグ:

今では、誰もあの広場に近づかなくなった。
でも夜になると、風に乗って、カラン……カラン……と音がする。

鉄の靴の底が、石畳を叩く音だ。

そして――ふと夜道で誰かが言う。

 

「ねえ……さっき笑ってたよね? ピエロ、口……動いてたよね?」

 

でも、そこにいるのは、誰もいない道と、赤い風船だけだった。
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