最恐 百物語

いつき

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第25話目 ワクちゃんの友達 凛ちゃん

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ワクちゃんって、喋るんだよ」
そう言ったのは、クラスの転校生・江(こう)くんだった。

小柄で、無表情で、妙におとなしい男の子。
誰に話しかけるでもなく、彼はずっと“それ”を抱えていた。

腹話術人形のワクちゃん。
ひび割れた顔、ボタンの目、裂けた口。
まるで、死んだ誰かの代わりのように――彼は人形にばかり話しかけていた。

 



◆江くんとワクちゃん

「ワクちゃんはね、知ってるんだ。先生の秘密も、みんなの嘘も」
江くんは笑わずにそう言った。

「ほんとうの友達は、背中に隠れてるんだって」
「だから、声をあげないと、仲間になれないんだって」

誰も相手にしなかったが、江くんは日に日に変わっていった。
目の下には隈。爪はぼろぼろ。喉には赤い指の跡。

「もうすぐ出てくるよ……ねえ、見たい?」

 



◆恐怖の解放

その夜、保健室で“異音”がした。
先生が駆けつけた時、そこにいたのは江くんだけ。

そして――
ワクちゃんの背中の縫い目は裂かれていた。

最初に出てきたのは、乳歯だった。
カラカラ……と床に落ちる音。

次に、半透明の膜。
ゼリー状のそれは、ゆっくりと鼓動していた。

「ドクン……ドクン……」

江くんがそれに触れた瞬間、膜が破けた。

 



◆正体

中から這い出してきたのは――

人間の顔を継ぎ接ぎした“なにか”。
10人以上の子どもたちの目・鼻・口がバラバラに貼り付いていた。
「いたいよ」「こわい」「せんせい、しってるよ」
何重もの声が同時に響く。

蜘蛛のような手足。
指先には子どもの歯でできた爪。

そしてそれは言った。

「――もっと、こどもをいれて」
「せんせいのこえも、ちょうだいね」

 



◆終焉

江くんはそのまま“それ”に取り込まれた。
翌朝、保健室にはもうひとつの腹話術人形が置かれていた。

ワクちゃんと同じ形。けれど、その目は江くんのものだった。
笑っている。
でも、その口の奥には――
小さな顔がぎっしりと並んでいた。

 



◆後日談:

先生がその人形を見つめたとき、背後から声がした。

「せんせい、きょうも いれてくれる?」

 
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