【R18】フェロモン -堕ちてゆく彼女ー

ちゅー

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3話

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ドアを解錠した時から既に日常や常識からは遠ざかっていたと思う。

空調で下げられた室温は普段なら肌寒いほどだったが、紺のノースリーブワンピースですら色が変わるくらいに、肩峰から胸元、臍部に至るまで汗が滲んでいた。

何より硬い床を踏みしめる度に汗で身体に張り付いた生地が脇腹や太腿をもどかしく撫でる。

いつもそんな肌触りを気にしていただろうか。

そんなわけはないと自答する。こんな淫靡なタッチに晒されながら整然と日常が送れるわけはないのだから。

店を後にした私達がどんな流れでここに来たのかはあまり覚えていない。
事理がわからなくなるほど酔っているわけでもないし、強引に連れてこられた
わけでもない。

帰りたくない気持ちは未だ私の中にあったが、何より全身の神経が異常に高まっていた。私の、認めてしまうと、どうしようもなく欲情している身体と、まだ一部冷静な理性に挟まれていた。

部屋の中はいかにもな印象だった。もちろん紫のカーペットや薄いオレンジの壁紙は清潔だったし、ケトルやテーブルに置かれたフードメニューは整頓されていた 。

ただ、やはりある。

窓のない空間の雰囲気や香りが。これまでにこのセックスをするためのラブホテルで過ごしてきた男女の空気が。

その空気が改めて会社の先輩であるはずの彼と、この空間で触り合うのだと郁美に痛感させた。

その事実から逃げるように、悠介を裏切っている罪悪感から逃げるように、視線を横に逸らした時、ふとドア際の壁に吊るされた小さな顔鏡に写る自分と目があった。

もともと日に焼けていない陶器の様に白い郁美の頬は男を誘うピンクに染まり、心なしかぷっくりと怪しい光を浮かべた唇からは、接吻を待ちかねるように荒い息遣いの度に白い歯を薄く覗かせている。

その妖艶さに郁美自身も見惚れていた。 またその誘惑するような唇から目が話せなかった。

まだ20代も半ばの女の醸し出す色ではなかったからだ。

綺麗…

ジィと機械的な金属音が背中越しに耳に入る。ドアのオートロックが閉まったのだろう。その時に不意を突かれた。

「ん…!」

彼に唇を奪われた。

いや奪われたという表現は私の悠介に対する罪の意識から出ただけだ。

数歩先に部屋に入った彼がおもむろに振り返ったことに気がついていたし、その長身を屈め私のパーソナルスペースに顔から入ってきたことも感じられた。

拒もうと思えば顔を背けたり、彼の肩を掌で押し返すこともできたはずだ。

ただ私はそれらの選択肢を考えながらも行動には移さなかった。このどうしようもなく火照った身体が選択肢を拒絶した。

突然のキスに二人の熱い粘膜の間には数本の郁美の髪が噛んでいたが、お互いの熱を交換するには十分すぎた。

過度に力まず、かといって高校生のするような探り探りのキスでもなかった。最もお互いの唇の柔らかさが伝わるような優しい口付けだった。

時間にして三秒くらいだっただろうか。 そっと余韻が残るように彼の唇が離れる。

これだけボーッと温まった頭でも、お互いの唇が離れた時の甘い振動が郁美の下唇をいじらしく伝導するのがわかった。

「ぁ…えっ…」

先程まで隙間なく彼の唇と接吻していた郁美の口からでたのは、驚きとも憤りともとれる声だった。


今まで彼から積極的なアプローチは無かった。

それが突然に破られたのだ。驚くのも当然だろう

また、付き合ってもいなければ私のパーソナルエリアに入ることを許してもいない彼がいきなり侵入してきたのだ。

しかも悠介という彼氏のいるこの私に、だ。怒りが湧くのもまた当然だと思う。

「………」

ただその感情は形にならなかった。少し充血した潤んだ目で、彼を無言で見つめるだけだった。

どうしよう。

この行為は今までの彼とのやり取りとは明らかに違う、一線を超えたものだ。

どうしよう、どうしよう 。

そしてどうしようもなく目をそらすことができない。

この"匂い"のせいだろうか。

いやそうに違いない。そうじゃなければ、これはただの悠介に対する不貞ではないか。

ーごめん、嫌だったかな

もし彼が私の様子を見てそんな言葉をかけてくれたら、私はこの火照りきった身体を抑え込んで首を縦に触れただろう。

しかし何も話さずジッと私を見る彼の目には情欲が隠れもせずに宿っていた。

手を伸ばせば届く距離で、私を性の対象として見ている、狩ろうとしているような瞳の黒く熱い光。

そして私の肢体もそれを否応なく求めていた。

心は軋むようなブレーキをかけている。こんなこと許されるわけがない。付き合っていようが婚姻してようが同じことだ。これは良くないことだ。

それでも身体は動かなかった。

そしてまた私のエリアに踏み込んできた彼の右手が私の左腰に添えられる。湿ったポリエステル生地越しに体温がじんわりと伝わってくる。そのこそばゆい感触に身を捩りそうになる。

なんで腰に触れられただけでこんなに艶めかしい気持ちになるの…

そのまま彼の左腕がスッと私の右腋を通り、その長い指でうなじを撫ぜる。

その短い時間の中でも私達は目を逸らさなかった。そのままもう一度唇が重なった 。

「ん…んん…」

最初とは違い明らかに性的なキスだった。

またあの淫らな感触が戻ってくる。全身の神経が口元に集中しているみたいだ。

身体の芯から湧き上がる欲望が、指先から足の爪先まで行き渡るようにゆっくりと、着実に拡がっていく。

そして上唇を軽く食まれた。唇から伝わる甘い痺れが歯から顎へ、顎から脳へ伝播する。

「はっ…ふっ……ふぅん!」

頭まで易々と侵入してきた快感に飲まれる。駆け巡ってくる波から精一杯逃れようと背中が仰け反る。

「んん!んんん…!」

そんな抵抗も、先程まではうなじを撫でる程度だった彼の左手に今度はガッチリと押さえ込まれる。

「や…やぁ…んん、うう…!」

何度も何度も唇を弄ばれる。上唇の左から右へ、這うように食い込ませるように嬲られる。その度にまた痺れが押し寄せる。

今度は頭だけでなく首筋へ、胸へ、胸の頂へ 、波が乳首を押し上げ、下着と摩擦する。

思考は泥に沈んだかのように動かないにもかかわらず、身体を這い回る快感だけは細部まで捉えられた。

キスされてるだけなのに…

「んん!…だめっ…ぷは!だ、だめ!…はぅ…ん!…なにこれ…ン…なに…あぁ…ふぅん!!」

軽く達する。

地に足がついている感触が希薄になる。落ちるのではなく、快楽の波紋に浮かされる。

ドンっと背中にドアの固さが伝わってきた。無意識に及び腰になりドアへ後退していたらしい。

もう逃げられない、その状況が郁美の身体の情欲をさらに高める。

「ぷはっ……はぁ、はぁ…」

ようやく解放された唇にはまだ余韻が残る。それどころか未だになぞられているような幻覚すら覚える。

それにしても郁美自身、男との行為で軽くとはいえ絶頂を経験するのは初めてだった。悠介とは何度もしていたが、秘所を指でいじられても、挿入されても、自分が高まる前に悠介は果ててしまう。

それを不満に思ったことはない。ただ終わった後、息を整えながらも抱きしめてくれるのが好きだったし、安心感があった。

不埒なことをした実感と、彼の体温、上下する胸に顔を埋めながら何でもない話をする。それが郁美にとってのセックスだったし、幸せだった。

それがなんだ。既にキスだけで後を引くようなオルガスムスを迎えてしまった。

背中をドアに預け、息を整えるのもやっとだ。

まだ洋服すら脱いでいないのに。

…なにを考えてるの

自責する。まるでこの後も行為が続くことを受け入れてるようじゃないかと。

そんな私の葛藤をよそに、彼に後ろ向きに抱き寄せられる。

「や…」

せめてもの抵抗で腰に回った彼の腕を払おうとするが、きっと抵抗になるような力は入っていなかったと思う。

「鏡で自分の顔を見てごらん」

言われるがまま、おずおずと鏡面に目をやる。

雌の顔が写っている。

上目遣いで頬を紅潮させ、物欲しそうに男に媚びる、かつてどんな男性にも見せたことのない完全に女の表情が、ますます郁美の羞恥心を被虐するのであった。

「耳、真っ赤だよ」

耳裏に整った鼻先が潜り込んでくる

「…っ」

自分の匂いを嗅がれる恥ずかしさにますます赤くなる。

それに彼の顔が近づく度に"匂い"が強くなっているようだ。その甘みにまた身体の神経を高められる。

「ひゃっ…ぁ…」

耳輪が暖かい粘膜に包まれる。顎が突き出るくらいの快感がとろけ始めた郁美の性感を支配する。

「ゃ…やぁ……ふぁ…」

腹部から押し出てくる媚声をなんとかせき止めようと歯を食いしばる。

しかし先程の絶頂の影響か完全には押し殺せない。性を感じる女の吐息が漏れる。

彼の唇からザラザラとした舌が這い出てくる。まずは舌先で耳の三角くかを下から上にナメクジのようなスピードで舐め上げられる。

耳輪までその熱い舌が到達すると、耳の上部を口内に迎え入れられる。唇で扱かれた後、ゆっくりと解放される。

ちゅ…ちゅく…

といやらしい音が左耳から直に脳に響く。

「ゃ…み、耳…弱い…です、から……はぅぅ…」

今度は強引に外耳孔まで舌先が侵入してくる。

ずっ…ずちゃ…と舌と微量の唾液で耳が犯される。

「はっ…や…」

思わず左腕で彼の頭を抱き寄せてしまう。 その染み込んでくる甘美な刺激に抵抗するつもりだったが、より彼の舌の侵入を許してしまうことになる。

「はっ…んはっ…っふ…」

だんだんと足の力が抜け、膝から崩れ落ちそうになるのを、後ろでに彼のベルトに体重を預けなんとか堪える。

顎を天に向ける程仰け反り、胸を突き出すような格好だ。

そして仰け反ったことで彼との隙間が生まれ、背中のホックがピッと弾くように外される。

いつのまにか両肩を抱いていた彼の両手が、肩から袖口を通り下着のストラップに指をかけ、あっという間に下着だけを袖から抜き取られた。

「ひっ!」

痛いほど起立した乳首を生地が撥ねていく。唇から耳、そして胸へと性感の波紋が広がった。

下から支えるように両手で胸をやわやわと持ち上げられる。発育の良い郁美のEカップの胸は彼の大きな手にも余るくらいであった。

そのまま器用に二本の人差し指が爪を立てながら胸の山頂周辺を優しく嗅ぎ回る。

「っふ…」

生地越しに、短く切り添えられた爪が、感覚だけで起立しきっていることがわかるほど膨らんだ乳首を掠める度、ピクンと腰から小さく身体が跳ねる。

一度でも跳ねれば、彼の両手は私の両腰まで降りていく。そしてまた張り詰めた二点を目指し這い上がってくるのだ。

「ふっ…はぁ…ぁ…」

もどかしさについ首を捩り、潤んだ目で彼を覗くと再び深い接吻で迎えられる。その間も彼の両爪は私の体表を滑り続ける。

「あっ!」

ついに二点が捉えられる。爪を立てた人差し指で、生地越しにカリカリと擦られる。

「ひゃ…ぁぁん…」

焦らされた分、その刺激はハッキリと喉奥けら嬌声が出るほど十分なものだった。爪が乳首を摩擦する度に力が抜ける。

巧みなことに、乳首が刺激に慣れてくる前を見計らって彼の指は腰に戻る。

何度も繰り返される愛撫に理性を溶かされていき、気がつけばベッドに押し倒されていた。

ーーーーーーーーーー

慣れた手つきで裸に剥かれ、彼も衣服を脱ぎ捨てていた。

露わになった起立した肉棒に目を見張る。

太い、それに大きい…

自分の手首くらいの大きさとの錯覚すら覚える。

赤みがかった先端からパックリと開いたカリは、はっきりと幹との段差が見て取れる。その幹から浮き出す血管はドクドクと波打っているかのようだ。

仰向けに寝そべりつつ、呆気に取られている私を彼が引き寄せる。

悠介とする時はこのあと秘所を責められれるため、その行程を踏まず、いきなり挿入されるのかと驚いた。手早くコンドームを付け、ちょうど股間が彼の肉棒に跨るよう騎乗位に誘導された。

熱い…

まるで熱水の入ったペットボトルを敷いているようだ。そのくらいの圧迫感とゴム越しの熱がある。

先程の愛撫で蕩けきっている秘部は、お互いの性器をヌルヌルと潤滑させる。

身体のバランスを保とうと、置き場を失った両手で彼の太股へ体重をかける。

「だめ、入れないで…それだけはだめ…だめだから…」

彼の両手が腰にあてがわれ、前に後ろにとグラインドさせられる。

自分の股間からカリ、幹が覗き隠れする その肉棒がヒダを掻き分け、最も敏感な部分を、カリの段差が幾度も弾く。

「ぁ…ぁ…はぁ……」

自分の分泌した体液で、徐々に摩擦が無くなってくる。

ズチャッ、チュクッと粘膜同士が擦れる音が耳まで伝わってくる。

「何がだめなの?」

「何がって、そんなの…」

彼が何一つ恣意的な意図など無いのだと言わんばかりに聞いてくる。

「…彼氏に悪いと思ってるの?」

口をへの字に曲げ、キッと彼の目を睨み付ける。現実と興奮の間にあった私を前者に引きもどすには充分な言葉だった。

ここが分水嶺だ、と咄嗟に思う。

まだセックスしたわけではないと。

「そう…そうです…ぁぁ…こんなの、やっぱり…くぅ…」

質問しておいて、腰の動きを止めない彼には腹が立つものの、ここまで高められた身体は、接触部からせり上がってくる摩擦に正直な反応をあげる。

ヌメヌメと妖しい光を帯びた肉茎は魔的にグロテスクで、魅惑的に見えた。

「君は難しく考えすぎなんだ」

彼が腰を引いたかと思うと、先端が膣口にあてがわれる。

ドクドクと挿入を待ちわびるかのように波打っているのは、彼のものか、私のものか、わからないくらいに私は熱くなっていた。

「僕は無理強いしない、このまま君が帰っても文句は言わない」

いまさら何を言うのかと今度は本気で腹が立った。ここまで弄んでおいて、帰って良いなどどよくも言えたものだと。

「でも、僕は君に帰って欲しくない」

「え…」

その言葉には虚を突かれた。彼から、今まで異性と意識してこなかったであろう自分を求める言葉が出てくるとは思わなかった。

「だから、腰をゆっくり下ろして」

催眠術にかかったように、身体はその言葉に従う。

「ぁ…ぁ…ぁぁ…、だめ…はいってくる、はいってくる…」
「ぃや…大きい…むり!むりです…入らない…」

カリが数センチ入った時点で強烈な圧迫感があった。中は十二分に滑りきっているが、それでもこれ以上は入らないと懇願する。

彼は無理に押し入ってはこなかった。一旦引き、またゆっくりと入口だけを解す、そんな動きだった。

「ぁ…やぁ…ぁ、ぁ、ぁ」

膣口が押し広げられ、杭が抜かれる度に伸縮し、また広げられる。そのジワジワと全身に伝わってくる波に強張りが解けたのだろうか、ズズズと音を立てるように、膣内まで彼が入り込んでくる。

「あああああ!あぁ・・・ぁ…やぁぁぁぁ!!」

上半身が限界まで弓反りになる。
膣内が全て埋め尽くされる。

そのあまりの衝撃になす術も無く肉壁が伸縮を繰り返し、そのために彼の大きさや波打つ血流の動きがハッキリと下半身に刻み込まれる。

「待って!ぅ…動かないでください!くぁぁ…今は無理!無理だからぁ…」

挿入の衝撃に真っ白になった頭で、なお懇願する。

「動いてないよ、君の中が動いてるんだ」

「そ、そんな…ぁぁ…だめ、止まらない…感じる…これ何…なに…ぁ、あああ!」

挿入された異物の分だけ、身体中の汗腺から汗が滲み出るようだった。容赦なく身体の中心へ差し込まれた異物に意識が集中し、膣壁の伸縮が止まらない。

とても声を出さずにはこの波に抗えない。

なんとか下腹部から溢れ出す快感を喉から外に逃がさなければ頭がおかしくなりそうだ。

「ぁ、ぁ、ぁ…またくる…きちゃいます…あぁぁ…」

挿入だけで昇りつめる。

びくんびくんと臍下から快感が突き出す。痙攣する身体がペニスをまた締め付け、劇薬のような刺激が返ってくる。凄まじいループだった。

耐え切れず両腕をクロスさせ、胸を抱きしめ、耐える。

そこでようやく違和感に気づく。
彼の鼠径部が私のものと密着していない。

背筋を暖かな汗が撫ぜる。

ーまだ入りきっていないの?

彼の両手が私の腰骨に当てられる。

覚悟する暇もなく、今度は力強く根元まで挿入される。

「っ、あぁぁぁぁぁぁ!」

子宮口がギュッと体内へ押し込まれ、今日一番大きな嬌声が室内に響く。その衝撃が脊髄を押し上げ、脳髄が飛び出るかのようだった。頭が白くスパークし、首筋から顎先が一直線に天を仰ぐ。

パクッパクッと魚の様に呼吸するしかない。

強烈な異物感とギュッギュッと子宮を押し上げてくる亀頭に声を失う。

快楽を身体の奥に捻じ込まれ、呆然と身をよじる私の身体をそっと仰向けにし、彼がのしかかってきた。

自分の指を肋骨に食い込ませながらベッドを上に逃げるが、マウントを取られているのだ。逃れられるわけもなかった 。

そして彼が腰をゆっくりと引く。

「あぁ!くぅぅ!」

銛のように食い込んだ亀頭が膣壁にめり込みながら引き抜かれていく。

「あっ、あっ、あっ!」

排泄よりも何倍も強い抉られような排出感。膣ごと引き抜かれるかのような感覚に全身を震わせる。

膣口まで引かれた時点でもう肢体は脱力しきっていた。

そして今度はズンっと根元まで挿入される 。

「ぁ、ぁ、ぁ…」

それだけで終わらず今度はぐっと体重を乗せ、肉棒全体で子宮口を押し込まれる。

「ぁ、ぁ、ぁ、あ、あああああああああ!」

何度目かわからない絶頂に意識が飛ぶようなフワッとした浮遊感に襲われる。

しかしそれを許さないように、膣奥を均すように亀頭がグラインドしながら体重を流し込んでくる。

「ら…らめ…ひぁ!ぉ、奥…ぐり…ぐりしないで…らめらろ…それ…だめなのぉ…」

首を横に精一杯振り、掌で彼を押し返そうと両腕を伸ばすが、打ち込まれる快楽に手すら届かない。手を伸ばせば打ち込まれ、自分の身体を抱きしめるしか出来なくなる。

「ぐっ…ふぅ…ふ…ぁぁ…またくる…いやぁぁぁ」

飛びそうになる意識だったが、ペニスが抜かれるあの感覚になんとか踏みとどまる。

ペニスと一緒に押し込まれた空気が音を立てて逃げていくが、そんなことを気にする余裕も無い。

「ゃ…や…やぁ…」

空になった筈の膣から、断続的にトンッ、トンッと挿入されていた衝撃が何度も下腹部を這うように襲ってくる。

「あぁ…ぅぁ…あぁ…」

柔らかな振動が膣内を巡る度に、下半身から全身がビクンっと痙攣する。

「はぁ…はぁ…」

乱れた息遣いで酸素を求める。身体を起こしておくことはもはや叶わず、彼にもたれ掛かる。全身から汗が吹き出しており、髪は額に貼り付いている。触れ合う体表同士も汗で湿っていた。

(何…この気持ち…)

心は拒んでいるものの、身体の方はグッタリとした疲れ、いや満足感を覚えている。

それにしても彼もピストンを止め、私の背中に軽く腕を置いている。抱き締めるのでは無く、だ。

(最後までしないの?いや、私に合わせてるの?)

「はぁ…んっ…」

膣内では未だに硬直を保った肉棒が時折波を打っているのがわかる。射精した様子も無い。

(それに…男の人の良い匂い…悠介とはまた違うんだ…)

不思議と安心を促す様な匂いだ。ベッドのヘッドボードに目をやると、時刻は深夜一時を指していた。



「………ぅん………あっ!」

トロンとした眠気に負けそうになりハッと思い出す。彼氏と抱き合っているわけでは無いのだ。しかも繋がったまま。

「…寝てた?」

彼の柔らかい目線が私の瞳を捉えた。

「…寝てない、です…」

こんな状況で、自分だけうたた寝をしてしまった。時計を見れば一時間は寝ていたみたいだ。

(だめ…調子狂う…飲み過ぎたかな…)

「あっ…あの…シャワー!シャワー浴びてきます…」

思えばまだ汗を流していなかった。いつのまにか掛かっていた掛け布団を彼から剥ぎ取る様に奪う。布団を身体に纏い逃げるように無駄に広いバスルームへ飛び込む。そして布団を投げ捨てドアを締める。

(しまったぁ…服全部置いてきちゃった!)

クスクスと小さな笑い声がベッドから響く。いつもの彼の笑い声だ。その声に日常と非日常が頭の中で混濁する。

(というかクレンジングシートすら持ってきて無い!まさか泊まりになるなんて……いや違う…)

(やっぱりダメだ…帰らなきゃ。もう電車も無いしタクシーかな…)

髪を濡らさないようにシャワーを浴びながら、このままじゃ恋人みたいじゃないか、と自責する。爛れた関係だと自分を非難する。まずは帰らないとと結論付け、帰路の算段を立てる。

(でも林さん…寂しがるかな…)

ーガチャリ

浴室の折戸が開く音が響いた。

「きゃっ!ちょっ!林さん!?」

咄嗟に固まる私の身体を後ろから、お湯に負けていない暖かい身体が抱き締める。

「帰るの?」

身体を返され、ひどく寂寥感を浮かべた表情で聞かれた。仕事中には見せない顔だった。それが演技なのか、本当の彼の顔なのか、私にはわからない。

「…帰り、ます。その、ごめんなさい…やっぱりわたンムッ!」


長いキスになった。腰を抱き寄せられ、逃れられない。男の人のものとは思えないくらい柔らかな唇に、再び理性を侵食されてしまう。ヨロヨロと後ずさった先にはシャワーから水飛沫が舞う。髪も直ぐに濡れ切ってしまう。

「んむっ……んっ……は…ぁ…どうして…?」

彼は何も言わない。ただただその瞳には情欲の揺らぎが映る。

「なんで………ぁっ、ちょっ………ひぅ!!」

にわかに膣口にあてがわれた固い亀頭に貫かれた。ずっと愛液が分泌されていたそこはニュルリと侵入を受け入れる。

挿入したまま、すかさず両脚を抱え上げられた。対面立位の態勢だ。

「きゃっ…待って!」

後ろに倒れそうになり、思わず彼の首へ腕を回す。体重の大半を両腕で支えられ、残りの重さがペニスに掛かってしまう。より深く。

「はっ、ふっ!…はぁっ!」

逞しい感触が下腹部へ拡がる。

「あっ、やっ…はんっ…」

ヒップを鷲掴みにされ、上下のピストン運動を強制される。

「あっ!…ふぅ…ひっ!…まっ…てぇ…ふか、い…」

下半身から拡がる快楽がより腕に力を込めさせ、彼に強く抱きついてしまう。性器同士が深く繋がり、まるで自分から男根を求める様に。

「あ、くっ……はぁっ!」

深く突かれてしまえば途端に身体がフニャリと抵抗を奪われてしまう。挿れられた女の身体の弱さを初めて思い知らされる。

バチン、バチンと浴室に肉のぶつかり合う音が広がる。

「あっ、あっ、あっ……………っ………は……あっ!!」

全身の筋肉が強張り、絶頂を叩き込まれる。

「………はぁっ!……はぁ……はぁ……」

本当の余韻ってこんなのなんだ…

真っ白な頭は腰から響く快楽の残り香以外何も考えられない。

「もう少し動くね…」

「えっ!?あっ…んむっ!?」

紅い唇が迫るが、私の唇も避けなかった。唇を舌でなぞられ、弛緩した所に舌の口内への侵入を許してしまう。

ダメだ…またドロドロにされちゃう…

「ぷはっ…キスやめて…」

「なんで?」

また滅入る様な表情に変わる。

「なんでって…林さんは…悠介じゃない、から…あんっ!」

一突で言葉を遮られる。地面に足がついていないこの体勢で、しかも深く繋がったままでは、私に出来る抵抗など無かった。

「んっ、むっ!んん…はぁっ…はぁ…キス、だめだってぇ…あむっ!ふぁっ…あっ、あっ、あぁ…」

「どうでもいい…今日は馬鹿になればいい…」

ーばか、に?

彼が付け加えた。身体と心が相反しているのであれば身体の方に任せれば良い。今日一日だけでも。それが馬鹿になる事だと。その言葉に強烈に誘引される。

「あっ!…んんっ、はげしっ!はぅっ!」

ヒップを鷲掴みにする腕の動きが激しくなる。男本位の力強いピストンでも、反り返ったペニスは膣壁をゴリゴリと削り、弱い箇所を何度も押し込んでくる。

「まっ、あぅ…はっ、はっ…ああっ!」

「うっ…」

彼の表情が歪み、限界が迫っているのがわかる。そして膣内を占拠している肉棒が一段と膨張する。

「まっ…てっ…あんっ…ご、む…」

「着けてる…くっ!」

「えっ…あっ…ふぅ!あああっ…」

ドクドクと中で肉棒がほとばしる。

「あっ…はぁ………はぁ、はぁ…」

腰から込み上げる甘美な波に、彼にしがみつきながら耐える。

「こっち」

「えっ?…あむっ…」

何度目かの口付け。唇から力を吸われている錯覚すら覚える。そしてそのソフトさが性行のひと段落を告げていた。

「はっ…ぁ……キス…だめだって…ぇ…」

もはや言葉だけしか抵抗する事が出来なかった。

ーーーーーーーーーー

ーボフッ

ベッドへ倒れこむ。髪もまだ濡れたままだ。浴室の折戸をヨロヨロと開け、身体の水気を何とかタオルに吸い込ませただけ。

帰ろうとする気力すら奪われてしまった。セックスの余韻はやがて気だるさへと変わり、下着すら付ける気にならない。

(腰に、力入んない…こんなのって…)

時計は既に丑の刻を回っている。火照った身体は意識を朦朧とさせている。

(あぁ、だめ…このまま……寝ちゃいそ…)

視界が蕩け、意識が落ちる。湯冷めしたのか背中からジンワリと冷えざ広がるのを感じた。しかし直ぐに暖かさに包まれた。

それが彼の体温だった事を寸前の所で知った。

ーーーーーーーーーー

「ん………ふ…ぁ?」

彼の腕の中で目が覚めた。どうやらまた眠りに落ちていたらしいが、昂ぶった気持ちのせいで深くは眠れなかった様だ。目だけで時計を追えば、短針は朝の五時を示していた。

(…あったかい…)

後ろからスースーと寝息が聞こえる。敷布団は私が放り投げてしまっていた為、ベッドの上に裸の身体二つだけが並び、後ろから抱き締められている格好だ。脚は空調に冷やされてしまっていたが、ピッタリと添えられた彼の体温で身体からは冷えを感じなかった。

「って、ダメっ!」

ーバッ

上体を飛び起こす。意識が明瞭になるにつれ、この爛れた状況が改めて脳内によぎる。

「んっ…ん…」

物音に焦れる彼。


なんて



無邪気な寝顔だろうか


微睡む彼の表情は浴室で私を射抜いた情欲にまみれたものとはまるで別人の様だ。

(帰ろう…でも)


(起こてあげた方が、良いのかな…)

ーブンブン

首を横に降る。流石に無言で居なくなる事は良くないと思うが、本音を言えば彼と話すのが現実を突き付けられそうで怖い。

そのままそそくさと衣類を身につけて身だしなみも最低限に入口のドアに手を掛ける。

ーあっ…

財布から五千円札を引き抜きテーブルへそっと置いた。自分でもよくわからない行動だが、無理やり連れ込まれたわけでもなく、限りなく強引だったが強制されたわけでも無いセックスをしてしまったのだ。ホテル代の半分くらいは置いて行こうと思った。

変な所で真面目なのだ、私は。


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