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2 Into the wild
「人生で初めての」
私はまだ自分の置かれている現在の状況を掴めないでいた。
(どうして私は幼馴染みのテオに壁ドンされてるの?)
確かミセス・ロビンの先週の相談コーナーの話をしていて…30歳まで女性経験がなかったら不能になるかどうかなんて…冷静に考えたら不能になるわけないのは分かるけれど、相談してきた貴族子息は顔見知りで彼の性格上、至極真面目な質問だと分かったから私が励まして…で、テオが俺の相談も聞いてって言い出して…来年30歳になるけど女性経験がないから俺も不能にならないか…あれだけモテていて!?
私が呆然としている間にあれよあれよという間に壁とテオに挟まれたこの状況が作り上げられてるんですが…
テオは男性としては小柄であるが、私に比べるともちろん身長は15センチは高い。蜂蜜色の髪の毛と綺麗な碧眼、整った顔立ちは幼い頃から見慣れてはいるが、こんな近くで見たことがない。というか、どんな男性ともこんなに密着したことはない。
アウグストとは、公衆の面前で手の甲に彼がキスを落とすとか、エスコートの際にちょっと腰に手を触れる程度の節度ある関係だったので、私は蒼白になりながらもテオの顔を見上げることしか出来なかった。
テオはその瞳に熱をこめながら、私の青ざめた顔色や表情を観察しているようだった。その顔はひどく男らしく、テオのアンバーのような香りが私を包み、その男らしさに酔ってしまいそう。今までテオに男性らしさを重ねてみたことがなかった私は動悸が乱れていくのを止められなかった。
(テオってこんなにかっこよかった…?)
幼い頃から、アウグストに嫁ぐことを決められていた人生だった。もともとは姉も妹も候補だったのだが、両家の顔合わせと称した会の後、アウグスト自身が3人の中から私を選んだと聞く。自由に恋愛ができない時代、アウグストのような人格者に娶ってもらえることを幸せに感じ、彼のことだけを考え、彼のために花嫁修行に励んでいた半生。テオに会ったのは、アウグストの婚約者として選ばれたすぐ後だったと記憶している。どれだけテオが男らしくて、優しくても、私は見て見ぬふりをしていた。だって兄のような存在だったらずっと側にいても誰にも何も言われないから。
彼はその骨張った男らしい指で私の顔を優しく撫でた。その細やかな触れ方に私の体に震えが起こる。
「…怖い?」
「ううん」
「嘘つけ…震えてる」
テオはそういうと、手を下ろして後ろに一歩下がる。私は思わず彼を引き止めそうになって、さっきまでの幼馴染としての適切な距離を思い出して、慌ててその衝動を我慢する。
「怖がらせて悪かったーーまだアウグストが好きなのか?」
(どうして私は幼馴染みのテオに壁ドンされてるの?)
確かミセス・ロビンの先週の相談コーナーの話をしていて…30歳まで女性経験がなかったら不能になるかどうかなんて…冷静に考えたら不能になるわけないのは分かるけれど、相談してきた貴族子息は顔見知りで彼の性格上、至極真面目な質問だと分かったから私が励まして…で、テオが俺の相談も聞いてって言い出して…来年30歳になるけど女性経験がないから俺も不能にならないか…あれだけモテていて!?
私が呆然としている間にあれよあれよという間に壁とテオに挟まれたこの状況が作り上げられてるんですが…
テオは男性としては小柄であるが、私に比べるともちろん身長は15センチは高い。蜂蜜色の髪の毛と綺麗な碧眼、整った顔立ちは幼い頃から見慣れてはいるが、こんな近くで見たことがない。というか、どんな男性ともこんなに密着したことはない。
アウグストとは、公衆の面前で手の甲に彼がキスを落とすとか、エスコートの際にちょっと腰に手を触れる程度の節度ある関係だったので、私は蒼白になりながらもテオの顔を見上げることしか出来なかった。
テオはその瞳に熱をこめながら、私の青ざめた顔色や表情を観察しているようだった。その顔はひどく男らしく、テオのアンバーのような香りが私を包み、その男らしさに酔ってしまいそう。今までテオに男性らしさを重ねてみたことがなかった私は動悸が乱れていくのを止められなかった。
(テオってこんなにかっこよかった…?)
幼い頃から、アウグストに嫁ぐことを決められていた人生だった。もともとは姉も妹も候補だったのだが、両家の顔合わせと称した会の後、アウグスト自身が3人の中から私を選んだと聞く。自由に恋愛ができない時代、アウグストのような人格者に娶ってもらえることを幸せに感じ、彼のことだけを考え、彼のために花嫁修行に励んでいた半生。テオに会ったのは、アウグストの婚約者として選ばれたすぐ後だったと記憶している。どれだけテオが男らしくて、優しくても、私は見て見ぬふりをしていた。だって兄のような存在だったらずっと側にいても誰にも何も言われないから。
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「…怖い?」
「ううん」
「嘘つけ…震えてる」
テオはそういうと、手を下ろして後ろに一歩下がる。私は思わず彼を引き止めそうになって、さっきまでの幼馴染としての適切な距離を思い出して、慌ててその衝動を我慢する。
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