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補足
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「うむ、慶次郎ご苦労・・・。良い考察であった、褒めてとらす・・・」
「はっ、ありがたく存じます」
「慶次郎、今後そなたも兵を引きる立場で戦場に立つこともあろう・・・その時のためにも常に自分が将であればどうするという事を念頭に置き、必ず事前に戦場に赴き、その目、耳で感じた事を頭の中で整理し考え察しろ・・・それがまことの意味での考察である・・・此度の経験しかと実際の戦場で役に立てよ、よいな?」
(あっ! この人は・・・そのために私を連れ出したのか・・・)
慶次郎は自分を連れ出した一益の意図に気づき、心が震えるのを感じ取る・・・
「叔父御、肝に銘じておきまする・・・」
珍しく殊勝に自分に頭を下げ感謝のしている慶次郎を一益は優しい視線で見ていたが、やがて自身を注視する家臣団一同に向かってあらためて語りかける。
「と、まあ慶次郎の言ったように佐和山、長浜の現状、そして予定戦場近くの木之本に北国街道を遮断するように大掛かりな土塁を構築している事実から秀吉がその付近に本陣を構えようとしている事は皆もおぼろげながらも皆、理解したかと思う。さて、ここからであるが慶次郎の報告及び考察に少し補足を付け加え、わしが何故に長浜を筑前が奪取したことで秀吉の勝ちを予想したのかを説明しようと思う・・・皆、心して聞くように、よいか?」
「「「 ・・・ 」」」
整然として頷く一同の視線を前にして一益は口を開く・・・
「皆の者、頭に思い浮かべよ! 木之本付近の地図を思い浮かべたか・・・? よし、ならば続ける。秀吉が本陣を置こうとする木之本から見て右手に田上山がある。恐らくは、秀吉はそこにも陣を構え北国街道を挟むようにして対岸にある大岩山にも陣を構築するであろう。奴はその二つの陣を結ぶように土塁を構築しておるのじゃ。この土塁が秀吉にとって修理殿を迎え撃つ最後の防波堤であろうとわしは推測しておる・・・わしの予想では秀吉の奴は今後更に大岩山の前方にある岩崎山にも陣を作りそこでも街道を挟むように土塁を構築し、その上また更にその場所より前方左手に位置する堂木山と街道を挟んで対岸に位置する東野山を結ぶ地点にも土塁を構築しようとする意図が見えてとられた・・・用心深い秀吉は防波堤となる土塁を一重、二重、そして更には三重の構えで北国街道を南下しようとする修理殿の軍勢をなんとしてもこの地に留めおこうという強い意志が現地で感じられたのじゃ・・・されば先程慶次郎も言っておったが、あの長浜城の前に浮かぶ湖面を埋め尽くすような木材の群れはこの長大な土塁の上に強固な柵を構築させるための資材だとわしは、ふんでおる!!」
「「「 ほお・・・ 」」」
嘆息の声を上げる一同に一益は更に続ける
「秀吉は、今春、修理殿が雪解けを待って南下するまでに唐にある長城のような土塁、柵の壁の構築準備を全て終わらせるつもりなのであろうよ・・・もしわしの予想どおりになれば修理殿率いる北陸軍団は嫌が応なくその地で足止めされることになろう。人が手足で登るのも難しい急斜面な土塁の壁やその上に建てられた防柵を壊しながら無理やり突破しようもするなら、その間に土塁の両側に構築されておる陣から雨のように矢玉が降り注がれるは火を見るよりも明らかである。そうなれば修理殿は秀吉の意図に気づき、やむを得ず旗下の軍勢に付近の山に陣を構えるように命じるであろうな・・・今、わしが述べた考察により秀吉の目論見は、修理殿に足止めを食わせ持久戦に持ち込むことにあると・・・わしは現地を見てそう判断するに至った・・・」
「・・・話しの気配からすると持久戦になれば、筑前殿が有利になると殿は考えておられるのじゃな?」
木俣忠澄が確認するように一益に問う・・・
「左様じゃ、又左よ」
一益は、忠澄に大きく頷くと自分の見解を開陳する。
「わしは長浜から木之本までの道筋で至るところに武器弾薬を備蓄する集積所の姿を目にしたのじゃよ。特に姉川を越えてまず目についたのが小谷城に向かう裾野の集落地であった・・・この村全体が、羽柴軍の後方兵站基地になっておったのだよ・・・これを見て分かるように秀吉はな、戦場に最も近い出城的な位置にある長浜城から続く予定戦場までの補給路を十二分に確保しているという事じゃて!! だが・・・修理殿の方はどうであろうかのう・・・? 修理殿の本拠地北ノ庄は予定戦場から遥か遠く、この予定戦場の木之本のある山岳地帯に最も近い城はというと・・・うむ、利家殿の嫡男前田利長殿が治める越前府中城になるのか・・・仮にその府中城を後方補給基地の中心に据えたとしても筑前が奪取した長浜から木之本までは四里ほど、それに比べて府中城から木之本までとなると恐らくは十五里以上はあるか・・・補給路があまりにも遠すぎる。例え羽柴方の小谷城付近のように、越前方面から北近江路に向かう山岳地帯の入り口付近に兵站補給基地を構築したとしてもやはり長浜よりは遥かに遠いには変わらぬ。また更に付け加えれば、修理殿が筑前並みに武器弾薬、食料を準備して戦場に到着できるかということじゃ・・・。はなから持久戦を目指すために、慶次郎が先程申しておったように長浜だけでなく、その後背に位置する佐和山には半年から一年はもつというように数万の兵力を維持できる潤沢な食糧、武器弾薬が備蓄されておるのだ・・・それに比べてはたして修理殿はどこまで見通して準備してくるかどうか・・・やはり気懸かりじゃて・・・。うむ、さて長々と話したがこれが秀吉が長浜を奪った事により補給の件も考え持久戦に持ち込めばあ奴の方が有利になると見込んだ理由である・・・」
「はっ、ありがたく存じます」
「慶次郎、今後そなたも兵を引きる立場で戦場に立つこともあろう・・・その時のためにも常に自分が将であればどうするという事を念頭に置き、必ず事前に戦場に赴き、その目、耳で感じた事を頭の中で整理し考え察しろ・・・それがまことの意味での考察である・・・此度の経験しかと実際の戦場で役に立てよ、よいな?」
(あっ! この人は・・・そのために私を連れ出したのか・・・)
慶次郎は自分を連れ出した一益の意図に気づき、心が震えるのを感じ取る・・・
「叔父御、肝に銘じておきまする・・・」
珍しく殊勝に自分に頭を下げ感謝のしている慶次郎を一益は優しい視線で見ていたが、やがて自身を注視する家臣団一同に向かってあらためて語りかける。
「と、まあ慶次郎の言ったように佐和山、長浜の現状、そして予定戦場近くの木之本に北国街道を遮断するように大掛かりな土塁を構築している事実から秀吉がその付近に本陣を構えようとしている事は皆もおぼろげながらも皆、理解したかと思う。さて、ここからであるが慶次郎の報告及び考察に少し補足を付け加え、わしが何故に長浜を筑前が奪取したことで秀吉の勝ちを予想したのかを説明しようと思う・・・皆、心して聞くように、よいか?」
「「「 ・・・ 」」」
整然として頷く一同の視線を前にして一益は口を開く・・・
「皆の者、頭に思い浮かべよ! 木之本付近の地図を思い浮かべたか・・・? よし、ならば続ける。秀吉が本陣を置こうとする木之本から見て右手に田上山がある。恐らくは、秀吉はそこにも陣を構え北国街道を挟むようにして対岸にある大岩山にも陣を構築するであろう。奴はその二つの陣を結ぶように土塁を構築しておるのじゃ。この土塁が秀吉にとって修理殿を迎え撃つ最後の防波堤であろうとわしは推測しておる・・・わしの予想では秀吉の奴は今後更に大岩山の前方にある岩崎山にも陣を作りそこでも街道を挟むように土塁を構築し、その上また更にその場所より前方左手に位置する堂木山と街道を挟んで対岸に位置する東野山を結ぶ地点にも土塁を構築しようとする意図が見えてとられた・・・用心深い秀吉は防波堤となる土塁を一重、二重、そして更には三重の構えで北国街道を南下しようとする修理殿の軍勢をなんとしてもこの地に留めおこうという強い意志が現地で感じられたのじゃ・・・されば先程慶次郎も言っておったが、あの長浜城の前に浮かぶ湖面を埋め尽くすような木材の群れはこの長大な土塁の上に強固な柵を構築させるための資材だとわしは、ふんでおる!!」
「「「 ほお・・・ 」」」
嘆息の声を上げる一同に一益は更に続ける
「秀吉は、今春、修理殿が雪解けを待って南下するまでに唐にある長城のような土塁、柵の壁の構築準備を全て終わらせるつもりなのであろうよ・・・もしわしの予想どおりになれば修理殿率いる北陸軍団は嫌が応なくその地で足止めされることになろう。人が手足で登るのも難しい急斜面な土塁の壁やその上に建てられた防柵を壊しながら無理やり突破しようもするなら、その間に土塁の両側に構築されておる陣から雨のように矢玉が降り注がれるは火を見るよりも明らかである。そうなれば修理殿は秀吉の意図に気づき、やむを得ず旗下の軍勢に付近の山に陣を構えるように命じるであろうな・・・今、わしが述べた考察により秀吉の目論見は、修理殿に足止めを食わせ持久戦に持ち込むことにあると・・・わしは現地を見てそう判断するに至った・・・」
「・・・話しの気配からすると持久戦になれば、筑前殿が有利になると殿は考えておられるのじゃな?」
木俣忠澄が確認するように一益に問う・・・
「左様じゃ、又左よ」
一益は、忠澄に大きく頷くと自分の見解を開陳する。
「わしは長浜から木之本までの道筋で至るところに武器弾薬を備蓄する集積所の姿を目にしたのじゃよ。特に姉川を越えてまず目についたのが小谷城に向かう裾野の集落地であった・・・この村全体が、羽柴軍の後方兵站基地になっておったのだよ・・・これを見て分かるように秀吉はな、戦場に最も近い出城的な位置にある長浜城から続く予定戦場までの補給路を十二分に確保しているという事じゃて!! だが・・・修理殿の方はどうであろうかのう・・・? 修理殿の本拠地北ノ庄は予定戦場から遥か遠く、この予定戦場の木之本のある山岳地帯に最も近い城はというと・・・うむ、利家殿の嫡男前田利長殿が治める越前府中城になるのか・・・仮にその府中城を後方補給基地の中心に据えたとしても筑前が奪取した長浜から木之本までは四里ほど、それに比べて府中城から木之本までとなると恐らくは十五里以上はあるか・・・補給路があまりにも遠すぎる。例え羽柴方の小谷城付近のように、越前方面から北近江路に向かう山岳地帯の入り口付近に兵站補給基地を構築したとしてもやはり長浜よりは遥かに遠いには変わらぬ。また更に付け加えれば、修理殿が筑前並みに武器弾薬、食料を準備して戦場に到着できるかということじゃ・・・。はなから持久戦を目指すために、慶次郎が先程申しておったように長浜だけでなく、その後背に位置する佐和山には半年から一年はもつというように数万の兵力を維持できる潤沢な食糧、武器弾薬が備蓄されておるのだ・・・それに比べてはたして修理殿はどこまで見通して準備してくるかどうか・・・やはり気懸かりじゃて・・・。うむ、さて長々と話したがこれが秀吉が長浜を奪った事により補給の件も考え持久戦に持ち込めばあ奴の方が有利になると見込んだ理由である・・・」
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