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賤ヶ岳
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一益は、言葉を区切り合点がいったかというように一同を見渡す・・・
一益の理路整然とした説明に、満座は暫くの間、沈黙がその場を支配していたがやがてやはりこの男がその沈黙を破る・・・
「・・・なるほどのう・・・確かに叔父御の言うように持久戦、長期戦に持ち込めば筑前殿有利というのは理解した。長引けば兵糧の問題で修理殿が窮し、いずれ撤退を余儀なくされるという事じゃな・・・だがのう、叔父御よ、修理殿であれば戦場に立ち、相手の陣張りを見ればその恐れは十分予測できうるであろうが、ならばそれを打破しようと動くのは必然ではないか? それをどう考える??」
義太夫益重が、一益にそう尋ねる。
「まあ、そう考えるであろうな益重よ。わしが修理殿の立場であっても現状打破のための行動を起こすは必然。大量の兵が移動できる主要街道を土塁によって封鎖されておれば街道を挟む両側の山岳地帯を縫って移動しようとするは当然。守る筑前にとっても百も承知の事ぞ。であればそれを防ぐためにその山岳地帯、具体的に言えば各山々に陣を構えるのは明らかじゃ。秀吉はな、この守りに特化した陣というか・・・いや、小規模な城のような砦・・・おおそうじゃ山砦とでも言おうか、その山砦を各拠点に構築しどうあっても修理殿の進軍を防ごうとするに違いない・・・。筑前めの陣構えを修理殿が目の当たりにすれば一両日で落とせぬと判断すれば、自軍に対してもある程度の長期戦に耐えうるような山砦を同じように構築するであろうよ。・・・益重、この山岳地帯での戦は攻める側の柴田、守る側の羽柴が限定された山岳地帯での山砦の争奪戦になろう・・・わしが知る限りこのような戦は日ノ本史上、初ではないかと思う・・・」
「う・・・む・・・、日ノ本史上初とな?」
「うむ、そうじゃ。いずれにしても山砦を奪い合う構図になれば時間がかかるは明らかだ・・・そこでわしは修理殿の立場になって改めて考えた。迂回して木之本付近に生ける道はないかと」
「いかにも、そう考えるはずじゃ」
「でじゃ、やはりあったわい・・・大岩山の西に位置する余呉湖と琵琶湖の北端との間に敦賀と木之本を繋ぐ街道があった。住人たちは塩津街道と呼んでおるようだが、この道を使えばわざわざ北国街道の両脇にそびえる山岳地帯を通らずに木之本に至るではないか・・・と。 わしはその街道の所在を耳にし慶次郎を引き連れ木之本より西に琵琶湖へ向けて足を運んだのよ。琵琶湖に向けて道中を歩く途中、わしの視界の右手に突如として目を惹いた場所が見えてきたのだ・・・その地名を【賤ケ岳】という・・・わしは街道から【賤ケ岳】を見上げふと、思った・・・ここに秀吉が陣を構えれば塩津街道を南下し抜けようとする敵に対し、絶好の防衛拠点になることに気づいたのじゃよ・・・」
一益の理路整然とした説明に、満座は暫くの間、沈黙がその場を支配していたがやがてやはりこの男がその沈黙を破る・・・
「・・・なるほどのう・・・確かに叔父御の言うように持久戦、長期戦に持ち込めば筑前殿有利というのは理解した。長引けば兵糧の問題で修理殿が窮し、いずれ撤退を余儀なくされるという事じゃな・・・だがのう、叔父御よ、修理殿であれば戦場に立ち、相手の陣張りを見ればその恐れは十分予測できうるであろうが、ならばそれを打破しようと動くのは必然ではないか? それをどう考える??」
義太夫益重が、一益にそう尋ねる。
「まあ、そう考えるであろうな益重よ。わしが修理殿の立場であっても現状打破のための行動を起こすは必然。大量の兵が移動できる主要街道を土塁によって封鎖されておれば街道を挟む両側の山岳地帯を縫って移動しようとするは当然。守る筑前にとっても百も承知の事ぞ。であればそれを防ぐためにその山岳地帯、具体的に言えば各山々に陣を構えるのは明らかじゃ。秀吉はな、この守りに特化した陣というか・・・いや、小規模な城のような砦・・・おおそうじゃ山砦とでも言おうか、その山砦を各拠点に構築しどうあっても修理殿の進軍を防ごうとするに違いない・・・。筑前めの陣構えを修理殿が目の当たりにすれば一両日で落とせぬと判断すれば、自軍に対してもある程度の長期戦に耐えうるような山砦を同じように構築するであろうよ。・・・益重、この山岳地帯での戦は攻める側の柴田、守る側の羽柴が限定された山岳地帯での山砦の争奪戦になろう・・・わしが知る限りこのような戦は日ノ本史上、初ではないかと思う・・・」
「う・・・む・・・、日ノ本史上初とな?」
「うむ、そうじゃ。いずれにしても山砦を奪い合う構図になれば時間がかかるは明らかだ・・・そこでわしは修理殿の立場になって改めて考えた。迂回して木之本付近に生ける道はないかと」
「いかにも、そう考えるはずじゃ」
「でじゃ、やはりあったわい・・・大岩山の西に位置する余呉湖と琵琶湖の北端との間に敦賀と木之本を繋ぐ街道があった。住人たちは塩津街道と呼んでおるようだが、この道を使えばわざわざ北国街道の両脇にそびえる山岳地帯を通らずに木之本に至るではないか・・・と。 わしはその街道の所在を耳にし慶次郎を引き連れ木之本より西に琵琶湖へ向けて足を運んだのよ。琵琶湖に向けて道中を歩く途中、わしの視界の右手に突如として目を惹いた場所が見えてきたのだ・・・その地名を【賤ケ岳】という・・・わしは街道から【賤ケ岳】を見上げふと、思った・・・ここに秀吉が陣を構えれば塩津街道を南下し抜けようとする敵に対し、絶好の防衛拠点になることに気づいたのじゃよ・・・」
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