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一章 出会い

三   奴隷といえば性奴隷だよね

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 すめば都そんな言葉があるように、この牢獄暮らしも三ヶ月過ぎて、アンダーブルクの言葉も理解出来て安心出来たのか再び、日本へ帰りたいという欲求が出てきた。
 それと同時に思い出すのは、見知らぬ異世界で二ヶ月もの間一緒に暮らした金髪ロリッコの事だった。

 ーーー今ならあの子の名前分かるかも。

 よくわからない牢獄のボスの立場を利用する。

 「ノートン、俺が来たときに一緒にいた金髪の少女を知らない」
 「ボスの女ですか?」
 「まあそんなところ」
 「そりゃあ大変だ。でも金髪の女なんてこの牢獄にいませんよ」
 「え?」
 「それに、ボスが来たときに他に入った奴はいなかったはずですよ。一応探してはみますが」

 結局ノートンが探してくれたけど見つける事は出来なかった。
 俺も全ての部屋を覗いたけど見つからなかった。
 牢獄のボスの女って事で他の囚人も協力してくれたし多分この牢獄には居ないんだろう。

 「ねぇ、この世界って金髪少女の奴隷って性奴隷にされたりするの?」
 「女の奴隷は殆どがそうですな」

 俺は寝とられ系は好きだった方だが、一時は心の支えにまでなっていたロリッコがなっていると思うと嫌な気持ちにもなる。

 .......ヒカル

 そう最後に言ったロリッコの叫びを思い出す。
 この世界で初めて俺の名前を呼んでくれたロリッコ、高熱でつらいはずなのに美味しい料理を作ってくれたロリッコ。

 ーーー何とかしたいって思ってもここから出れないしな、出たところでこの身体じゃどうしようも無いか

 今はもう肘先から無い右腕と、もう光を映すことは無い右目。そして頬にけして消えることの無い奴隷の焼き印。

 ーーー異世界ハーレムを夢見てたのに、心を通じ合わせたロリッコ一人どうする事も出来ないのか。

 「ボス。誰か来ますぜ、また新入りかもしれないですぜ」
 「あんまり虐めたら駄目だよ」
 「ボス。この前の新入りの時もそういってやらせてくれなかったじゃねーか」
 「同じ囚人同士で虐めてどうするんだ。どうせなら仲が良い方が良いだろう。その代わり.......」
 「迷惑な奴とボスに敵対心を持っている奴はとことんやって良いですね」
 「迷惑な奴だけだ。何勝手に逆らう奴を皆殺しにする暴君にしてんだよ」

 牢獄に来てから三ヶ月、ノートンが俺をボスと呼ぶので俺は牢獄の中で流行ってる新人虐めを廃止させた。
 そして虐めの対象を新人虐めをする奴に変更させた。
 それをノートンに言ったら「ボスは優しいですからね。分かったぜビッグボスの命令って言えば皆納得するだろう」とか言っていたので隠れて様子を見てみたら。
 新人を怒鳴りつけた奴を、同じ牢屋の囚人が力を合わせて止めていた。

 「バカヤロウ!! ビッグボスの命令だぞ!」
 「はっ! そうだったいつものノリでつい。新入り悪かった今のは無かった事にしてくれ」
 「あ、ああ」
 「良いか新入り。ビッグボスには逆らうな。あの人はあの悪夢の拷問を一ヶ月間も毎日受けても平気なお方だ。終いには拷問官の方が諦めたんだ」
 「嘘だろ!? 俺は10分持たなかったぞ」
 「本当だ。証拠に片腕と片目そして体中の傷を後で見せてもらえ。あれを見たら拷問される前に諦めがつくぞ」
 「それだけじゃねーぞ新人。あの人は優しいんだ。この前食堂で食器を落としたときにビッグボスが分けてくれたんだよ」
 「っあ! それなら俺がぶつかった時も、快く許してくれたんだ」
 「俺は見たぜ。ビッグボスが拷問部屋から出て来た奴に手当てして居る姿」

 何故か一致団結して俺の行動をいちいちヨイショし始めた囚人達を見て驚愕したのを覚えてる。
 
 ーーーだからたまに俺の事を見ていた奴が居たのか。
 目を合わせるとすごい勢いで逃げて行くんだよな。

 そんなことを思い出していたら牢獄内を見渡しながら歩き回る、偉そうな銀髪で髭の長いオッサンが歩いていた。

 「あれは、ノースカロライナ王じゃねーか。ボス絶対に顔を会わせちゃいけないですぜ」

 そこからは小声で教えてくれた。
 何でもノースカロライナの王族は奴隷を使うらしい。
 その奴隷をこの監獄から選ぶらしいのだ。
 王族の奴隷に選ばれたら最後で、死ぬまでこき使われるらしい。
 だから定期的に王様が奴隷を選びに来るらしい。

 俺は選ばれ無いように必死に顔を下げる。
 がやっぱりというか何というか。王様は俺の牢屋の前で止まった。
 そして目を合わせようとしない俺達に対して一言。
 
 「顔を上げろ」

 そう呟いただけで、俺含めて牢屋に居た6人が一斉に顔を上げた。
 
 ーーーなっ! 身体が勝手に!!

 王様は一通り見渡すと俺を指差した。

 「フム。 片目と片手かあいつにはピッタリだな。でろ」

 やっぱり身体が勝手に動く。
 それをノートンが止めてくれた。

 「クソッ! やけくそだ皆ビッグボスがつれてかれる!! 皆やっちまうぞ」
 「オオオオォォォー!」

 かけ声とともに一斉に囚人達が暴れ出した。
 
 ーーー皆俺のために.......

 この数なら!! と希望を持った俺達は

 「黙れ」

 王様の一言で終わりを告げて。

 「面倒だ。これ以外自害しろ!!」

 そして絶望を見た。
 ノートンが何を思ったのか舌を出して噛み切るとそのまま壁に頭を打ち付けて大量の血を流して動かなくなった。
 同じような事が牢獄中で起きた。
 
 「フン。さあ早く出ろ」
 「お前!!」

 理由は分からなかったけど怒りが爆発した。
 ノートンの頭を邪魔だと蹴り飛ばし何も無かったように俺に命令するそいつを絶対に許さないと思った。
 
 「フン。ならお前も自害しろ」

 そして俺は何の躊躇も無く口を開き舌を出して噛み切ろうとした。
 途中で布を突っ込まれてならばと首を締めようとするも片腕しかないことに気付き目をえぐれば良いと思い直す。
 が、また腕を押さえられたので、壁に頭を打ち付けようと

 「王様!! この奴隷を殺してしまってはアンジェリカ第二王女に渡す奴隷がいなくなってしまいます」
 「フン! 仕方ない。自害を辞めよ」

 していた自分に驚く。

 ーーー今俺は何をしようとした!?

 「お前はアンジェリカの近衛だな」
 「ハッ! ミョンチオです」
 「ならば。ミョンチオ後は任せる」
 「ハッ!」

 王様がさった後。俺はミョンチオに殴られまくった。
 そして教えこまれた。
 王族に逆らうな! 王族は神様だ。けして勝手に喋るな。悲鳴を上げるな。
 たっぷりと三日ほどかけて教えこまれたおかげで、良く分かった王族は神様だ。俺はゴミだ、いやそれ以下だ。全て王族が正しいのだと。

 そして首と足に鎖をつけられて、連れていかれた。
 ミョンチオが扉を開けて入った後に、入れ!! と言われたので入る。俺はゴミだ。
 部屋の中は広く巨大なベットに白いドレスを着た銀髪の女性が座っていた。
 これがアンジェリカ第二王女という人だろう。

 「ちゃんと躾はしましたが一応何かあったらすぐにおよびください」
 「分かったわ、ミョンチオ」
 「では失礼します」

 ミョンチオが部屋から出ていく俺は何も言わずにただの木のようにじっとしている。
 しばらくつまらなそうに俺を眺めてから立ち上がり棚から鞭のような物を取り出した。
 そして打たれた。

 「今日はこのぐらいね。片ずけておきなさい」
 「はい」

 投げ渡された布を受取り。かすれる声で返事をすると満足そうに頷いてベットに横たわる。
 俺はと言うと。
 拭いても拭いても流れ出る血を拭きつづけた。

 しばらくして起きたアンジェリカ第二王女は再び鞭を取り出して打ち続けた。

 そんな日々が一週間ほど続いたある日。
 俺は倒れた。

 ーーーやっと死ねる。

 それだけが幸福な気がした。



 アンジェリカ第二王女は倒れて動かなくなった光をつまらなそうに見て言った。

 「つまらないわね。もう壊れちゃった」
 「片づけます」

 ミョンチオは今にも息を引取そうな奴隷を乱暴に持ち上げた。
 
 「待って。どうせだからそれあの子にあげようと思うの」
 「第五王女様ですか? でもあの方は.......」
 「良いじゃない。この私が上げるって言ってるんだから」
 「ハッ!」

 ミョンチオはアンジェリカが第五王女に嫌がらせをしたいだけなのは分かっていた。
 そもそもこんな死にかけの奴隷を渡したところで、死体を処分しろと言っているような物だ。
 それに第五王女は.......
 そこまで考えて王族命令であることを思い出してすぐに行動した。

 「何用だ、ミョンチオ」
 「そうカッカするなイゲル。アンジェリカ第二王女様から奴隷の受け渡しを頼まれたのだ」
 「またか.......分かった。処分しておこう」

 イゲルと呼ばれた女騎士は、第五王女唯一の近衛兵だった。
 イゲルは奴隷の様子を見てすぐに事情を察したが王族命令なので仕方なく奴隷を受けとった。

 「姫様入ります」

 イゲルが部屋に入るとベットに横たわっていた姫が身体を起こした。



 目を覚ました時の気持ちはまた死ねなかったかというものだった。
 次に疑問を感じた。自分が何故か巨大なベッドに寝ていることに。
 一瞬日本に戻ったのかとも思ったがそうでは無いことにすぐに気づく事になる。
 椅子に腰掛けて船を漕いでいるピンク色のドレスを着た人物が目に入ったからだ。

 脳内でドレス=王族の方程式を解き、すぐに起き上がろうとした。
 が身体が動かなかった。

 「姫様。奴隷が目を覚ましましたよ」

 後ろに立っていた女騎士がピンクのドレスの人を起こす。
 けして顔を見てはいけない。
 これはミョンチオに教えて貰った事だ。
 自分はゴミであるので今思えば当たり前のことだけど。
 姫様と呼ばれた彼女が俺をベッドに縛りつけて居るのだろう。
 これからどんな事をされるのか想像も出来ない。
 
 だから小さい白い手が伸びてきて俺の頭を撫でたときには理解できなかった。
 俺の困惑は続いた。

 「.....................ヒカル」

 覚えたはずの異世界語を聞き取れ無かったが名前を呼ばれた気がした。

 「姫様何を言っているのですか?」

 どうやら聞き取れ無かったのは俺が異世界語を忘れた訳じゃ無いみたいだ。さっきから女騎士の言葉は分かる。

 「おかしいですね。これで通じると思うのですが。ブジデヨカッタヒカル」
 
 ーーーん? 何だろうこの感じ胸が暖かくなるような響き。遠い昔に忘れている物なような。
 
 ブシデヨカッタヒカル。ブシデ、ヨカッタ、ヒカル。

 「日本語!! それにこの匂い君は!」

 間違いない。王族だと思っつたけど違う。この世界で唯一俺が気を許せる相手。

 「っえ? 人語を喋れるようになったのですか」
 
 顔を見る。そしてホッとする。
 金髪の中学生くらいのロリッコだった。
 感動の再会。
 が俺は女騎士に殴られた。

 「この奴隷が! 命を助けて頂いた恩も忘れて姫様と対等に口を利いて良いと思っているのか!?」
 「姫様?」
 「そうだ! このお方はノースカロライナ王国第五王女名前を.......」
 「イゲル!! 今すぐヒカル様から離れなさい」
 「しかし!!」
 「出て行って下さい」
 「申し訳ございません。お許しを姫様」
 「出て行きなさい!!」
 「ハッ!」

 ーーー第五王女?
 
 その声は紛れも無くあのロリッコの声で匂いもそうでそれなのに王女? 王族
 れだけで何と無く察してしまった。

 「君は.......」

 呟いて話し掛けようとして辞める。だって相手は王族なのだ。
 王族には口を利いてはいけないのだ。
 目を見てもいけないのだ。
 だからその瞬間から俺はロリッコをロリッコとは思わなくなった。

 「ヒカル様は人語を覚えられたのですね」
 「.......」

 例え話し掛けられようと答えてはいけないそれが奴隷と言うものだ。

 「私は貴方様が死んだと聞かされてました。ごめんなさい」
 「..............」
 「ヒカル様?」
 「.......」
 「私を見てください」

 まただ身体が勝手に動く。

 「ごめんなさい。私のせいでヒカル様がこんなことに.......」
 「.......」
 「何かおっしゃって下さいヒカル様、前みたいに笑ってください。撫でてください。そうでないと.......ゴホゴホ」
 「っは! まだその病気治ってないの? 寝てないと駄目だよ」

 ロリッコの咳を聴いた瞬間に思考が戻った。

 ーーー何だろう絶対おかしい。

 「ヒカル様よかった.......です。元に戻ったので.......すねゴホゴホ」
 「俺の事より自分の心配してよ早く寝ないと」
 「はい。 わかりました。では失礼しますね」
 「え? ここに入るの?」
 「はい。一応私のベッドなので」
 「じゃあ俺が出るから。俺を縛ってるの解いてくれない?」
 「まあっ! イゲルさんあの人は、大丈夫って言ったのに.......、解いても良いですけどヒカル様も一緒に寝てください」
 「それは」
 「なら解きません。フフフ嘘です。解きますがどうか一緒に居てください。もう離れたく有りません」
 「.......分かったよ、ほら早く寝てくれ」
 「はい」

 
 ロリッコが近くに居るだけで安心できた。眠る事が出来た。
 サラサラとしたロリッコの頭を撫でているといつのまにかに眠っていた。
 
 
 

 
 
 

 

 
 
 
 

 
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