転生の花嫁と忘れられた約束 【報告 後日作書きました♪】

オジSUN

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一章

十三 十年前の約束とリスティーの一日目 土曜日

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 クリスティーナの母親の葬式に連れて来られていた。当時五歳の星野空は森の中で泣いている少女と出会った。
 星明かりしか無いので空はクリスティーナの姿を確認出来なかったのだが泣いている事だけは分かったので自分と同じく、退屈な葬式を抜け出して迷子になったのかなと声をかけた。

 「だいじょうぶ? ないているの? おれは星野空。君は?」
 
 少女は空の声を聞くとすぐに叫びをあげた。

 『助けて!』
 「ん? なに語?。マレーシア語かな?」

 が、クリスティーナの異国(スエーデン)の言葉を理解することは出来なかった。だから空はすぐにきびすを返すが。
 クリスティーは自分の言葉が少年に理解されて無いことにきがついた。、クリスティーナは普段スエーデン語で会話をする。
 しかしクリスティーナは父の母国語である日本語も多少は話すことが出来る。
 
 「ソラ! イカナイデ!」
 「よかった。にほん語。しゃべれるんだ。やっぱりきみもまいご?」

 空はクリスティーナの言葉が日本語になったことでようやく会話を成立させた。
 そして気になっている事を聞いた。

 「ソウデス......ワタシ......ヒトリニナリタクテ......デモ。イマハーーにアイタイ」

 少女の声は聞き取りにくかったが空は少女が迷子で泣いていると理解した。そして空に助けを求めていることも。
 空は助けてあげたかったがそれは出来ない事だった。なぜなら。

 「ごめん。おれもまよっちゃってるんだよ」
 「ヘ?」

 そう、大人達が探していたのはクリスティーナだけではなかった。葬式から居なくなってしまったのはクリスティーナと空の二人だったのだ。
 因みに空は森にカブトムシを探して入って迷子になったのだった。
 そのまま夜まで迷っていた所でクリスティーナの泣き声を聞いて来てみたというわけだ。

 その成り行きをクリスティーナは聞いて愕然とした。

 「マイゴ、フエタ!?」
 「そういうことになるね」

 やけに落ち着いている空にクリスティーナは肩を落とした。
 チラリと視線を向けると空はクリスティーナの横に座って天の星を見上げていた。

 「コワクナイノ?」

 そんな落ち着いている空にクリスティーナは尋ねた。
 星を見る空はクリスティーナの問いに問いで返す。

 「おれは星野空。きみは?」
 「ヘ?」

 クリスティーナは空の言葉の意味を理解し損ねたが空はもう一度丁寧に言った。

 「きみのなまえは?」
 「ナマエ?」
 「うん。おしえておれは空だよ」
 
 クリスティーナはわけもわからず答えた。

 「クリスティーナ・フォン・ソフィア」
 「へ? ながい! リスティー......なに?」
 
 一度で覚えて貰えずにしかも中途半端な名前でクリスティーナの事を呼んだのでむきになって、もう一度クリスティーナは名乗った。

 「ワタシ! クリスティーナ・フォン・ソフィア! リスティージャナイ!!」
 「ながいからしょうりゃくしてリスティーで良いよ」
 「ヨクナイ!」

 クリスティーナは母と父がつけてくれた大切な名前を省略されたことに強い憤りを覚えたが空はそれ以上名前について深く話すつもりは無かった。
 なぜなら空にとってクリスティーナの名前は前置きでしかなかったからだ。

 「リスティー。おれもさっきまでは、こわかったよ。くらいし。おばけでそうで」
 
 空はクリスティーナに言った。

 「でも。リスティーがいるからもうへいきだよ。もうひとりじゃないから」

 そう言った。
 その時クリスティーナも既に闇を怖いものだと感じなくなっていることに気付いた。
 少年......空が来るまであんなに恐かった暗闇が嘘のように怖くない。動物や虫の声も心地好く聞こえる程だ。

 「リスティー。おばけはこわいから。うえをみなよ。きれいだよ」
 「ソラ?」

 リスティーがこの時初めて天を見上げた。
 そして息を呑んだ。そこにはスエーデンではけして見れない満天の星空が浮かんでいた。明るく綺麗でどこか懐かしいそんな星空だった。

 「ソラじゃなくておれは空だよ。リスティー」
 「リスティージャナイ、クリスティーナ・フォン・ソフィア!」
 
 人工の光の無い星空はそれを見ているだけでクリスティーナの心を落ち着かせた。
 何より、

 「ソラ、ト、イッショ」

 そう、人と一緒にいる安心がクリスティーナの幼い心を支えた。
 勿論、空の心も支えている。空はクリスティーナに会うまで本気でお化けを怖がってうろうろしていたのだ。

 「空な。リスティー」
 「ソラ。ソラ!」
 「......まあいいや。それで」

 発音が違うのだが空は別にどうでもいいなと諦める。
 そんな空に落ち着いたクリスティーナは、

 「ソラ。モドロウ」
 
 やはり恋しくなっている父のもと戻ろうとした。
 空と一緒ならクリスティーナは暗い森を抜けられる気がしたのだ。

 だが。

 「だめ。おれもこわくて、うごいちゃったけど......まいごは、うごかない。これだいじだから」
 「ウゴカナイ? カエレナイヨ?」
 「だいじょうぶ。さがしてくれるよ。リスティーの親もおれの親も」
 
 空にそういわれてクリスティーナは納得した。何より一人で空の隣を離れて闇の森の中を歩くなんて事したくなかったからだ。

 「リスティー。ひまだからなにかはなしてよ」

 むちゃくちゃだ。クリスティーナはそう思った。それを空も分かったのか、空は話題をふった。

 「リスティーはなんでこの森にはいったの?」
 「ソレハーー」

 リスティーは空に全て話すことにした。母親の死がどれ程悲しかったか、父親も居なくなったらと思ったら悲しかったとか、全て捨てて一人になりたかったとか。全部話した。それはまだクリスティーナが五歳だった事もあったが、クリスティーナは何処か空に信頼のような何かを感じていた。

 クリスティーナの話しを黙って最後まで聞いた空は。

 「そうか......」

 と、一言そういった。
 別に深い意味があったわけではなく、既に時計は夜十時を過ぎていた為に眠くて良く聞いていなかったのだ。
 だから空は隣のクリスティーナを元気づけるためにこう言った。良く考えもせずに。

 「なら。リスティーが本当にひとりになったら、おれといっしょにくらそうよ。そしたらリスティーはひとりじゃない......から......」
 「ソラと?」
 「うん」

 それは子供が適当に言った言葉だった。けれどクリスティーナにとっては違った。
 誰もいない暗い森の中、奇跡的にであった空。独りの孤独を癒してくれた空。だからクリスティーナは空の言葉を胸に刻んだ。

 「ヤクソクダヨ?」
 「うん。やくそくだよ、おれがリスティーを独りにはしないよ」

 その約束をした後空は、夢の中に引きずり込まれた。
 空が寝た事で寂しくなったクリスティーナは空との距離を静かに詰めて身体をくっつけた。

 そして、安心して目を閉じた。

 その後、空とクリスティーナは発見保護される。空は父親に散々怒られ、クリスティーナは優しく抱き留められた。

 まだ暗い夜の事だった。

 薄暗い中でクリスティーナは父親に言う。

 「お父さん。ソラって知ってる?」
 「ああ。迷子になってクリスティーナと一緒に寝ていた男の子だね。僕の甥だよ」
 
 クリスティーナは父が空のことを知っていたことに安堵して言った。

 「わたし。将来ソラのお嫁さんになる!」
 「っえ? ソラ君と?」
 「うん。ソラと約束しただもん♪」

 クリスティーナは父親にそういって、隣で叱られてしょげながら、まだ幼い妹の美空が空が居なくなって泣いているのをあやしている空に言った。

 「ソラ。ワタシとケッコン、スルヨネ? ヤクソク!」
 
 空はクリスティーナにそういわれて、一緒に暮らす約束を思いだし、頷いた。

 「うん。やくそく。リスティー......ケッコンする」

 因みに空はケッコンをマレーシア語で一緒に暮らすの意味であると思っていたのだった。
 が、そんなことは、クリスティーナの父である星哉には分からない。
 だけれど星哉は娘が惚れた相手を信じることにした。

 何より暗い森の中。眠る娘の背中を守るように抱いて寝ていたのだ。

 「分かった。クリスティーナと空君が結婚できる歳になったらもう一度空君に会いに来よう。空君の父にも話しを通しておくよ」
 「うん! お父さん大好き♪」

 星哉はクリスティーナがクリストファーの死以降ずっと暗かったのに明るくなっていることに驚いた。
 星哉自身最愛のクリストファーの死を乗り越えていないのに。

 「クリスティーナ、母さんのことは大丈夫か?」
 「うん! 私はもう独りじゃないもん! ソラがずっと一緒に居てくれるって言ったもん♪」
 
 こうして。星野空とクリスティーナの出会いの夜は終わった。その日の内に帰った星野家一行とはその後スエーデンで多忙を極めた星哉が難病で死するまで会うことは無かったが、クリスティーナはその日の約束を色あせさせること無くずっと胸に残していた。

 星哉が倒れたのはクリスティーナが十二歳の事だった。
 
 病院で星哉はクリスティーナに告げる。既に余命はほとんど無いことを聞いている。
 見舞いに来ているクリストファーと同じく美しく成長したクリスティーナに星哉はマレーシアの高級病棟の清潔なベッドに横たわりながら日本語で話しかける。


 「クリスティーナ.......空君はまだ結婚出来ないけど。いくのかい?」
 「うん.......お父さん」

 父が死ぬことをリスティーも聞いていた。
 親を失うのは二度目だったのでリスティーは涙を呑んで父親と話しいる。

 「ごめんね。クリスティーナを独りにして」
 「大丈夫! ワタシはひとりじゃない! ソラがいるもん!」
 
 クリスティーナはそういって微笑んだ。
 星哉は弟にクリスティーナと星野空の事を手紙に書いてクリスティーナに手渡す。

 「クリスティーナ、日本にいるお父さんの弟に渡すんだよ」
 「うん! 分かった」
 「日本語、美味くなったね」
 「うん! ソラと日本で暮らすから沢山勉強したもん! ワタシは大丈夫! 心配しないで」
 
 本当にクリスティーナは日本の事を沢山勉強した。花嫁修行も沢山していた。料理だけは.......あれだったらしいが他は完璧にこなしたと、聞いている。勿論、夜技も勉強したらしいが、顔を赤くして星哉にはおしえてくれなかった。
 クリスティーナ曰く、『ソラにしか見せないもん!』という事だ。間違ってはいない。娘は健全に育った。

 こんな自慢の娘を弟の子にあげるなんて勿体ないとも思うが、クリスティーナ本人が星野空にメロメロであるのでしかたない。それに、星野空とであった日以降。クリスティーナは一度も泣かなくなった。
 そして笑顔沢山見せるようになった。
 だからクリスティーナを変えた星野空をどこか信頼していた。あの暗闇の中、不安で動き回らずにその場に留まった判断力、娘を護るように寝ていた心遣い。その全てに文句は無い。

 .......カブトムシぐらい男なら取りに行くだろう。問題ない。

 心配なのは死んだ後、大量に残る資産の事だ。クリスティーナに全てを継がせるがお金を大量に持っていても悪いことも多い。何より一生を遊んで暮らせる額だ。それに娘が溺れることは無いだろうが。
 それを私利私欲に使おうと近づく輩もでて来るだろう。お涙を誘う話しに弱いクリスティーナが簡単に手をつけることも予想できる。
 
 そんな時のために星哉はある約束をした。
 
 「クリスティーナ、お金は誰のためにも使っちゃいけないよ?」
 「うん? ならいらない!」

 クリスティーナは二つ返事でそうかえすので焦る。星哉には遺産を受け継ぐ人はクリスティーナしかいないのだ。
 もらってもらわけなければ国が動く。
 それに、娘の為にクリストファーと一緒に稼いだお金だ。クリスティーナに使ってもらわなければ意味が無い。
 だけど娘を金の亡者にするわけにも行かない。

 「クリスティーナ、僕の形見であるお金はクリスティーナの好きな人の為にしか使っちゃいけないよ? 約束できる?」
 「うん! ソラの為にしか使わない!」

 そう、約束したのだった。
 数日後。天に登った星哉を埋葬してから遺書を役人が引取、遺産相続がクリスティーナと決まり、星哉の葬式に来ていたあったこともない貴族達に日本行きを握り潰され、クリスティーナの持っている遺産を貰おうとするが頑なにクリスティーナは遺産の金庫の番号を教えることは無かった。

 遺産の事はクリスティーナだけに教えていた星哉の読みが当たったわけである。
 そうして三年間近くたらい回しにされ。

 そしてクリスティーナは父の死後三年。十五歳で再び日本に来日した。
 すぐに父の弟に電話をかけて合流、ここでクリスティーナは空の父に手紙を渡す。

 内容は、この手紙を読んでいる頃僕は、もうこの世に居ないだろう。だがそれは良い。それよりお前の息子に嫁を用意した。ーーーーーーーーー
 ーーーー
 ーーーー星哉。

 
 ーーーー空の父親(星次)視点ーーーー
 
 ながい手紙を読み終え、クリスティーナの状況や意思、そして約束を理解した父親、星次(せいじ)は、クリスティーナの保護者になってすぐにクリスティーナとソラを引き合わせた。

 近くに置いておくとお金に手をつけてしまう気がしたためだ。春から一人暮らしなのでちょうど良かった。
 クリスティーナから空にと渡されお金は丁重に懐にしまわせてもらった。
 これは空のためにもなるのだ。ガハハハハ。(酒と美空の服代)と星次はあくどかったがしっかりとクリスティーナと息子を引き合わせた。

 息子にまさか許嫁がいるとは思わなかったがどうやら本人同士合意だとの事だ。

 兄からの手紙には空が覚えていない可能性を考慮してくれとしっかりと記載されていたのでクリスティーナちゃんに言って息子のアパートを買収させた。これは兄の指示である。
 そんなお金をポンと出したクリスティーナちゃんには驚いたが息子がクリスティーナちゃんと結婚すれば逆玉だ! これは応援するしかない、たっぷり甘い密を吸わせてもらおう。


 クリスティーナちゃんは頑なに俺にもお金の在りかと使い方を教えなかったが息子には教えるそうだ。しめしめ。クリスティーナちゃんは息子には美人過ぎて勿体ないが、本人達の意思は尊重しなければならない。
 というか、結婚してもらわなければいけない。一緒に暮らしていれば既成事実でも出来るだろう。
 クリスティーナちゃんも割と乗り気だ。この波に乗るんだ息子よ!

 お前が産まれて誇りに思ったのは初めてだぞ。ガハハハハ。さあーイケ!

 だが。息子は危惧していた通りクリスティーナちゃんを覚えていなかった。しかもかえらせようとまでしやがった。
 だが健気なクリスティーナちゃんはそれでも『何時かソラは思い出してくれるもん!』と健気に呟いていた。
 なんていい子なんだろう。逆玉とか考えていた俺が情けない。息子には勿体ないというか、息子ではクリスティーナちゃんの相手には役不足かもしれない。間違った意味で。

 いやでも逆玉.......

 ーーーークリスティーナ視点ーーーー

 ようやく、ソラと会える。お母さんもお父さんも死んじゃったけどソラがいる。ソラとの約束がある。だから大丈夫!

 ソラのお父さん。セイジ? さんと一緒ソラを待つ時間がまちどおしい。胸が躍ってドキドキする。
 
 ソラが来た! ワタシには一目でソラだって分かった。あの時より大きくなってるけど想像通りにかっこよくなってる!

 ソラ。ワタシだよ。リスティーだよ。会いに来たよ? 

 「親父。早速だが二万くれ」
 「早速だな。ほらよ」

 ソラが入ってきて最初にお金を受けとった。相変わらずしっかりしてる! あの時と変わらない。



 ソラがワタシに気付いた! ソラ! リスティーだよ? ずっと会いたかったよ!
 立ち上がって抱き着こうと思った。けどソラは.......

 「どどどうしたんだよ! まさか隠し子か?」


  大袈裟に驚いてワタシをジロジロと見て首を傾げている。『うちの馬鹿息子は忘れてるかもよ?』セイジさんの言葉が真実味をおびてきた。
 ソラ.......忘れちゃったの? 

 でもソラは何処か頭を捻っている。やっぱり覚えてる!

 「おっ。察しが良いな息子よ、この子はスエーデン人らしい......俺の兄の子供だ」

 ソラとセイジさんが親しそうに話している。ワタシもソラと久しぶりに話したい。
 あの優しいソラと。結婚.......したい。約束したもん。大丈夫だもん!

 「マジかよ。めっちゃ可愛いじゃね~か。結婚出来るっけ?」
 
 ソラがいきなりワタシと同じ事を言ったから驚いた。やっぱりソラは覚えてる! 覚えてるんだ。
 ソラ! ソラ!

 「出来るが.......らしくないな。お前そんな奴だったか?」
 「高校デビューだよ。俺も成長したんだぞ」
 「美空から聞いてるぞ失敗したんだろ? 本音を言え」
 「なんか、この後の展開が予想できたから先手を打っておこうと思って」
 「察しが良いなその通りだ。クリスティーナちゃんをお前の所で.......」

 再開が嬉しすぎて緊張で話せないワタシの変わりにセイジさんが話してくれる。
 ソラあの時の約束だよ。

 「断る!!」

 .......え?

 「帰る!」

 ソラが帰っちゃう。そんなの嫌。
 そう思ったら身体勝手に動いてソラに抱き着いていた。良い匂いがする~ そしたらやっと声が出た。

 「ソラ! いかないで.......」

 そしたらソラが止まってくれた。嬉しい。そしてソラは言った。

 「前に会ったことがある?」
 
 もう、そんなことは良い。ソラに会えただけで良いもん! だからソラ!

 「ソラ行かないでお願い」
 「話だけでも聞いて行きませんか?」
 「帰る!」

 ちょっと迷ったソラはそういって今度こそワタシを突き飛ばした.......ワタシは背中を何かに強くぶつけたけどそれ以上にソラに突き飛ばされた事が悲しかった。
 ソラも悪気は無いみたいでワタシを心配そうに見てる.......でもソラ.......ひどいよ。

 そんなワタシの背中をさすってセイジさんがソラに言った。

 「まあ、お前ならそうだろうな、だがもう二万。いや、最後まで聞くだけで後八万やるといったら?」
 「よし、話しを聞こう」

 結局ソラはワタシと住むことを了承してくれたけど.......覚えて無い.......
 
 ソラの家についてソラの匂いが沢山してうれしいけど.......

 「おい。これからは一緒に暮らすんだから拗ねんなよ。突き飛ばしたのは悪かったから」
 「ソラ嫌い」

 約束を覚えてないソラなんか嫌いだもん。

 「いくらお前が俺を嫌いでももう遅い! お前は俺の物だ! 逃げられないからな」
 
 フッハハハと悪の魔王みたいに笑ってる。似合ってない。もっと優しく笑う方が得意そうだよ。
 ソラから逃げる? そんなのありえない。ソラは優しいって知ってるから

 「逃げないもん」
 「.......なら良いけど。部屋は好きに使えよ。もうお前の家だ。むしろお前の家だ」

 ソラがニヤニヤしながら言う。
 
 「まさかお前が超大金持ちで、アパートごと買っちゃうなんてな、それに俺の生活費も出してくれるとかーー」
 「ソラ嫌い!」

 お金なんてどうでもいいのに! ソラの馬鹿。
 ムカついたから、ソラに唾をかけっちゃった。怒ったかな?

 そしたらソラは少し考えてから優しく笑った。この顔が好き!

 「.......よし分かった。何か作ってやる待ってろ」
 「本当!」
 「おうよ! それで機嫌を直してくれ。いや、ください」
 「うん!」

 ソラが楽しそうにニヤニヤしている。
 わざわざワタシの為に料理を作ってくれるなんてやっぱり優しい。
 他の家ではご飯なんか作ってもらったこと無かった。

 ソラが台所で包丁を使って料理を作ってる。楽しみ!
 ソラが戻ってきてお皿を出してくれた。

 お皿にはキャベツを四つ切り。そして小皿に塩.......

 「お待ちよ!」
 「.......」
 「キャベツの塩もり(特大)だよ? この家にある全食材を提供してるんだ。文句があるのか!」

 明らかに手抜き料理.......これくらいならワタシも作れる。
 でも折角ソラがワタシの為に作ってくれたんだもん。だべないと。

 ペリッとキャベツをちぎって食べる。
 口に入れた瞬間何か変な味がする.......正直

 「.......まずい」
 「なんだと!?」
 「でも嬉しい!」
 「え?」

 だってソラが作ってくれた。やさしいソラが作ってくれた。料理下手なのにワタシの為にソラはやっぱり何も変わってない。

 「ソラ大好き!」

 全部たべないと勿体ない。ワタシが変な味のするキャベツを食べているとソラが興味深そうに聞いてきた。

 「美味しいの?」
 
 おいしくはない。

 「まずい」
 「嬉しいの?」

 ソラが作ってくれたから嬉しい。ずっと憧れてたソラとの生活の第一歩。うれしくないわけが無い。

 「嬉しい!」
 「一ヶ月も前に消費期限切れてるのに?」
 「え?」

 一ヶ月!? 消費!? それやばい奴! あの味まさかそういことなの?
 え? ソラ? 嘘だよね?

 嘘じゃ無かった。来た。急に来た。ぐるるるってお腹がなってる。やばい! ソラに見られちゃいけないものが! トイレ! トイレに行かないと!

 ワタシはトイレに向かって行くと、ソラがニヤニヤしながら言う。
 もうダメ! ソラにだけはダメなのに! どいてソラ!

 「トイレは水が止まってるから外だよ」
 「ソラ大っ嫌い!!」

 ソラに酷いこといっちゃったけど.......ワタシは外のトイレに駆け込んで色々出しちゃった。
 ウー気持ち悪い.......

 「どうして.......ソラ。ワタシの事嫌いなのかな?」

 ワタシは例えソラが約束を覚えてなくても好きなのに。まさか第一印象で嫌われた? 顔がソラの好みじゃない? 
 そういえばソラはあの夜ワタシの顔を見ていない。ワタシはソラがいじけているときに見たけど.......
 むー! お父さん。ワタシのこと可愛いって言ったのに! 嘘ついた!
 でも、顔だけじゃないもん。ソラは顔じゃない所でワタシを好きになるもん!
 お父さんは嫌い!

 ムカムカしながらソラの部屋に戻り、ソラの近くに座る。
 ソラ? なんで?

 「ソラ、なんでわざといじめるの??」
 「なんだ。分かってるじゃん。嫌なら追い出せよ、大家さん」
 「ソラ、怒ってるの?」
 
 いきなり昔の約束で押しかけちゃったからいけないの?
 そう思ったけど、ソラは。

 「お前に怒ってる訳じゃない」

 そういった。ワタシに怒ってるのに

 「でなんで俺の所に押し付けるんだよ!」
 「ソラ、怒ってる」
 「大体お前も、お前だよ。なんでそんなに大事にしてたお金をこんな事に使ってるんだ! 形見だったんだろ!」
 「ソラも、一人だから」

 ソラはあの時言った。ワタシと一緒なら良いって、だからだよソラ。ソラとならお金ぐらいいくらでも使うよ?

 「一緒にするな俺は好きで一人暮らしをしてるんだよ。俺の親父は生きてるし」
 「本当の親じゃないもんっ」

 あの人たちはお父さんじゃないもん! そんな人にお金はあげない。

 「なんで?」
 「ソラ忘れたの?」

 本当に覚えて無いの? ワタシは

 「リスティーだよ。忘れたの?」

 ソラがそう呼んでくれたんだよ? 思い出してソラ。

 ソラはワタシの名前を聞くと少し驚いて言った。

 「リスティーは死んだよ。有り得ない、男だったし」

 え? 死んだ? 覚えてるの? それに。

 「酷い! 女だよ」

 確かに暗闇だったけどそれは酷い。だったら証明する!

 「ソラ見て」

 服を脱いでブラを外した。恥ずかしいけどソラなら良いもん。
 ソラはワタシの胸をジロジロ見ている。
 大丈夫そういう事になっても練習はしてきたから

 「有り得ない。リスティーは死んだ」

 ん? ソラはワタシを死んだと思ってるの? そんなことないよ。

 「生きてるよ。会いたかった」

 ずっとソラを想って生きてきたんだよ。ソラに会えるのを心待ちにしてたんだよ。

 「俺を恨んで殺しに来たのか? リスティー」
 「そんなことしないよ、ずっと会いたかったの」
 
 恨まないよ。ソラに会いたいだけだよ。ソラと一緒に暮らしたいだけだよ。ソラと結婚.......

 でも、そこでソラは真剣な顔を一転。ニヤニヤし始めた。このソラ嫌い!

 「リスティーって誰?」
 「むー。ソラの意地悪」
 「それと、親父はちゃんと血の繋がった肉親だからね。失礼なこと言わないで」

 失礼なのはソラだよ! ワタシを死んだとか男って言うし、む、胸だって見せたのに.......

 「むー。ソラ嫌い! 構ってくれない」

 折角。心の準備してたのに! 既成事実.......

 「構ってあげただろ。もう一人で遊んでろ!」
 「何も無いもんっ」

 ソラ? ここにワタシがいるよ?

 「雲でも数えてれば?」
 「ソラと遊びたい!」

 良いの? ソラ? ワタシは良いよ?

 「嫌だね。服着て失せろ」
 「ぶーぶー、私にメロメロなのに.......」

 むー! ジロジロ見てたのに.......でも諦めないもん。ソラが好きで結婚したくてここに来たんだもん!
 よし! ソラを誘惑する!

 そう覚悟を改めて決めて寝ているソラを揺すって起こす。

 「ソラ~」
 「なんだよ!」
 「買い物いきたい」
 「いってらっしゃい」
 「ソラと行きたい」
 「空は広いから見上げれば何処にでもいるぞ」
 「空じゃなくてソラといきたいの!」
 「違う! 逆だ。俺の名前はソラ、じゃなくて空だ」
 「霄?」
 「なんか違う。空だ」
 「穹?」
 「よし一人で行ってこい」
 「ソラと行きたい!」
 「俺は行きたくない」
 「行きたい!」
 「そもそも金が無い.......そういえば親父から十万円貰ったな」
 「これもお前の何だろ?」
 「うんっ」
 「返さないけど」

 ソラと買い物に言ってエッチな下着買ってそれでソラを誘惑しちゃうもん。
 そのために絶対ソラを一緒に連れていってソラの好きな奴買うんだ。

 ソラと買い物行くためにごねているとソラが封筒を取り出した。セイジさんに言われたソラを呼び出すための餌らしい。
 ソラにあげるって言ってたからあげた。ソラになら全部あげるから良いんだよ。

 お金が入っている筈の封筒から出てきたのは一枚の白い紙。
 ソラが破り捨てたので繋ぎ合わせて読んでみる。ソラのお嫁さんになるために日本語ちゃんと読めるようになったのだ♪

 一枚目。

 息子へ。
 美空が服を欲しがったから買ってやった。
 だから、お前にはその子をやる。

 二枚目。

 息子へ。
 酒が飲みたくなった。
 お前はその子を食べても良いぞ。

 ソラに食べられる? 襲われる? ソラに? 改めて言われると恥ずかしい!

 「ソラ。近寄らないで」

 でも。ソラなら良い。

 「近づかね~よ!」
 「食べるんでしょ」
 「食べね~よ!」
 「むー。食べても良いのに.......」
 「良いのかよ!」
 「ソラなら良いよ」

 ワンピースをたくしあげて誘惑したら蹴られた酷い!

 「前の家ではどうだったか知らないけどこの家ではそういうの禁止な」
 「むー。初めてだもんっ」

 ソラの為にそういうことは知識しか身につけてない。キスもお父さんにだってさせてないもん。
 ソラが初めての相手って決めてから。

 でも。先生はワタシが男を誘えばイチコロだって.......っは! もしかして

 「もしかして男色?」
 「そうかもな。良いから早く行ってこいよ。俺は行かないからな」
 「ソラ大っ嫌い」

 ワタシはソラが来てくれないので独りで外に出ることにした。
 もうソラなんか嫌いだ。ソラの好きなエッチな下着着てあげない!

 .......あ。でも道も店もわからない。ソラに付いてきただけだからどうしよう?
 戻ってソラに?
 .......無理。来てくれない。

 ソラ.......本当にワタシの事リスティーの事嫌いなの?
 もうダメなの? ソラ.......

 そう思ったら力が抜けてへたり込んでしまった。ソラに嫌われたらワタシは独りだよ。お父さんもお母さんももういない.......
 あの時の恐怖が蘇る。怖い怖い怖い。独りは嫌。ソラ! ソラ! 来てよ。

 泣きそうになったところでソラが扉に足をぶつけながら出てきてくれた。急いで追い掛けようとしてくれたに違いない!
 ソラ!

 「ソラ大好き!」
 「迷われたらめんどくさいからな、仕方なくだよ」

 知ってる。ソラはツンデレだ。でも来てくれた! ソラは来てくれた!
 怖い時は何時もソラが来てくれる。独りじゃない。ソラ。大好き。ワタシはソラが大好き!

 「何買いたいんだ? 二千円しかないぞ」
 「服!」

 エッチなとは言わない。後でソラを驚かせる。

 「ユニクロで一着くらいかな.......」

 ソラが勘違いしてる♪ ユニクロじゃないもん♪ エッチな下着だもん♪ ソラが好きなエッチな下着だもん♪

 ソラと歩いていると楽しいな。独りじゃないって楽しいな。好きな人といるって楽しいな。

 「ソラ、あそこ行く!」
 「あそこは無理だ。高級店だし。そもそもあんな所に俺が入ったら警備員に捕まる」

 良さそうな専門店があった。あれでソラをイチコロ!
 

 「大丈夫! これがあるから」
 「なんだ! そのカード見たことが無いぞ」
 
 お金の心配をしているソラにお父さんの隠し口座から引き落とされるカードを見せる。お父さんがソラにしか見せちゃいけないって言ってた奴だ。

 「使って良いのか?」
 「ソラに見せるためだからいいの!」
 「色々突っ込みたいが見せるなら下着専門店じゃなくてユニクロとかの方が.......」
 「良いの!」

 既成事実♪ ソラと結婚♪ ソラの赤ちゃん♪ 

 「おい銀髪! そんなに使いまくってお金が無くなったら追い出すからな」

 銀髪.......酷い。リスティーって呼んで欲しいのに。
 でも、ソラはワタシのことを心配しているだけだ。

 「大丈夫! 無くならないから」
 「使えばいつかは無くなるからな」
 「お父さんが億単位で使わない限り金利? で増えるだけだって言ってた」

 良くわからないけど、お父さんが使える額しか落とせないようにしてくれてる。大丈夫! 安心。安心。
 ソラとの生活は楽しいな♪

 「なら何で今まで使わなかったんだよ.......こんな所にまで来なくてよかっただろうに」
 「お父さんと約束したから、好きな人の為に使うって」
 「俺とあってからまだ一時間ぐらいしかたって無いぞ!」
 「ソラとあった時確信したの! この人だって」
 「気のせいだ」

 すぐにソラだって分かったんだよ?

 「銀髪。俺と会ったことあるか?」

 それは.......ソラが

 「教えない! 思い出して」

 ソラが思い出してくれないと意味が無い。あの約束を思い出してくれないと.......ソラ思い出してくれるよね?

 「まあ良いや、ほら買ってこい待っててやるから」

 ソラが優しく微笑んでいたので嬉しくなった。
 確かに下着専門店にはいりずらいだろうし.......うん。ソラには夜に見せることにした!

 「分かった」

 ソラの子供を早く産みたいな♪




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