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prologue
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暗い雲が垂れ込めるエルゾ峠。入り込むほど木々は密生し魔が潜み、旅人達にとっては難所となっている。最も峠が深くなる手前に、魔物を寄せつけないしっかりした造りの森小屋が見える。峠を越える彼らのために親切で建てられたものだが、今その中では、野蛮な男達による女への心無い暴虐が行われていた。
「まだか?」
「もうちょい……ぐ、うへへ」
「ちっ。おい、見張りは怠るなよ」
男達は、屈強な戦士達の一団と見える。服が脱ぎ散らかされているが、壁際に剣や槍が立てかけられ、なめし革の鎧や胸当ても並べられている。欲求に飢えていたであろう、そのような男ら数人に囲まれて、女ひとりでは成す術もなかった。賊徒か落ち武者か、素性はわからない。だが彼らは容赦なく蹂躙した。
「おう新入り。貴様らは見ているだけで満足なのか?」
暴漢どもの宴もたけなわ、頭目らしき男が部屋の隅にいる若衆に呼びかける。モヒカン頭の少年と、もう一人はそれより幾らか年長の、黒尽くめの服に黒の長髪。
「いいのかい、順番ならもうすぐ回るぜ。準備しとけや」
「ケッ、だがよう」モヒカンが前に出て言う。「なんでい、女ったって、そいつ三十路くらいのババァじゃねーすか? オレはいいっすよ!」
男達が笑う。長髪の方は窓際にもたれたまま反応しなかった。
「本当にいーのか? 峠越えるまで、もう女にありつけるチャンスなんざねーぞ。ここまでだって何日も我慢してたろ。こんな峠の真ん中で女捕まえられるなんざラッキーだぜぇ?」
「馬鹿だなぁ若いの、」行為中の男が振り返って、いやあらしい笑みで付け加えた。「まだ大人の味を知らんのかい。使い込まれてて、キモチイーゼー?!」
ハハハハ、とまた男達が薄汚い笑いを撒き散らせる。
「それに、見ろ」男は女の顔をぐいと持ち上げる。肩までのきれいで真っ直ぐな髪は乱され、男らの体液と汗とに塗れ見る影もないが、すっと整った目鼻の顔立ち。もしここが獣の宴会場などでなく、静かな家で、微笑みを湛えたこの人が目の前にいたなら、男は安らぎを感じることだろう。しかしこの男達は、そんな女の顔が苦痛と屈辱に歪む様に今は悦びを見い出していた。
「どうだ。なかなか、そそるだろう?」
「く、」モヒカンは、先輩達の言葉が胸に響いたのかベルトに手をあてて、また一歩前に出た。「や、やるやる! 次、オレだ!」ガチャガチャと音をさせて宴の中へ入っていくのであった。
長髪の方は、全く興味がないのか窓の外をぼんやり見つめたままだ。すでに欲望をたっぷりと放出し終えた頭目が、肌蹴させたままの格好で寄ってくる。
「おう貴様はあれか、もしかして、女に興味がないくちかな?」
窓の外は暗く、長髪の目が一体何を捉えているのか、頭目には皆目わかりもしなかった。
「フン、まあいいさ。しかし、俺のケツは貸さんからな。ヘヘ……お、もう一発やりたくなってきたなあ。ン?」
宴の方からどっと声が沸いた。
「お、お願いそれだけは――」女の懇願する声だ。
「ウ、ウー」モヒが絶頂に達する声。
「あ~あ。コイツ中に出しやがった」
「まーイーサ。コイツで最後だろ」
「って、あれお頭? もう一発やるつもりだったんすか?」
男どもの笑いが響く中に、女のすすり泣く声が細く聴こえる。長髪には、その声も耳に入っていないのか別の音に耳を済ませているといったふうだ。その目は虚ろで、流れていく怪しい雲よりもっと不吉な何かをその奥に映し出しているようであった。
「まだか?」
「もうちょい……ぐ、うへへ」
「ちっ。おい、見張りは怠るなよ」
男達は、屈強な戦士達の一団と見える。服が脱ぎ散らかされているが、壁際に剣や槍が立てかけられ、なめし革の鎧や胸当ても並べられている。欲求に飢えていたであろう、そのような男ら数人に囲まれて、女ひとりでは成す術もなかった。賊徒か落ち武者か、素性はわからない。だが彼らは容赦なく蹂躙した。
「おう新入り。貴様らは見ているだけで満足なのか?」
暴漢どもの宴もたけなわ、頭目らしき男が部屋の隅にいる若衆に呼びかける。モヒカン頭の少年と、もう一人はそれより幾らか年長の、黒尽くめの服に黒の長髪。
「いいのかい、順番ならもうすぐ回るぜ。準備しとけや」
「ケッ、だがよう」モヒカンが前に出て言う。「なんでい、女ったって、そいつ三十路くらいのババァじゃねーすか? オレはいいっすよ!」
男達が笑う。長髪の方は窓際にもたれたまま反応しなかった。
「本当にいーのか? 峠越えるまで、もう女にありつけるチャンスなんざねーぞ。ここまでだって何日も我慢してたろ。こんな峠の真ん中で女捕まえられるなんざラッキーだぜぇ?」
「馬鹿だなぁ若いの、」行為中の男が振り返って、いやあらしい笑みで付け加えた。「まだ大人の味を知らんのかい。使い込まれてて、キモチイーゼー?!」
ハハハハ、とまた男達が薄汚い笑いを撒き散らせる。
「それに、見ろ」男は女の顔をぐいと持ち上げる。肩までのきれいで真っ直ぐな髪は乱され、男らの体液と汗とに塗れ見る影もないが、すっと整った目鼻の顔立ち。もしここが獣の宴会場などでなく、静かな家で、微笑みを湛えたこの人が目の前にいたなら、男は安らぎを感じることだろう。しかしこの男達は、そんな女の顔が苦痛と屈辱に歪む様に今は悦びを見い出していた。
「どうだ。なかなか、そそるだろう?」
「く、」モヒカンは、先輩達の言葉が胸に響いたのかベルトに手をあてて、また一歩前に出た。「や、やるやる! 次、オレだ!」ガチャガチャと音をさせて宴の中へ入っていくのであった。
長髪の方は、全く興味がないのか窓の外をぼんやり見つめたままだ。すでに欲望をたっぷりと放出し終えた頭目が、肌蹴させたままの格好で寄ってくる。
「おう貴様はあれか、もしかして、女に興味がないくちかな?」
窓の外は暗く、長髪の目が一体何を捉えているのか、頭目には皆目わかりもしなかった。
「フン、まあいいさ。しかし、俺のケツは貸さんからな。ヘヘ……お、もう一発やりたくなってきたなあ。ン?」
宴の方からどっと声が沸いた。
「お、お願いそれだけは――」女の懇願する声だ。
「ウ、ウー」モヒが絶頂に達する声。
「あ~あ。コイツ中に出しやがった」
「まーイーサ。コイツで最後だろ」
「って、あれお頭? もう一発やるつもりだったんすか?」
男どもの笑いが響く中に、女のすすり泣く声が細く聴こえる。長髪には、その声も耳に入っていないのか別の音に耳を済ませているといったふうだ。その目は虚ろで、流れていく怪しい雲よりもっと不吉な何かをその奥に映し出しているようであった。
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