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番外編
番外編 梨紗の憂鬱:2
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「早く、帰ってこないかな……」
あの日、帰りを待っていた私。いくら夜だと言ってもまだ九時だし、そんなに遅くには帰ってこないと言っていた。だから、玄関先で待っていよう──そう考えて、待っていた、その時。
「あ、れ──、ん……?」
電柱の陰で、キスをする一組の男女。その片割れが蓮だと気付いた瞬間、自分の中の何かが割れた。
見ないふりをして、家の中に戻った。
部屋の中で、効いた冷房が、異様に冷たく感じた。
「……ごめん」
誰にも届かない一言と、小さな染みを作った涙。その全てを軽いタオルケットに押し込めるように、深呼吸を三回して寝ているふりをした。
帰ってきた片割れのため息は、どういう意味だったのだろう。
「……っ、──ぃ」
届かないごめんなさいの一言は、こんなにも悲しかった。
そして、今に至る。まだ荷造りは終わっていない。
──思い出が多すぎて、なんて言っても、何言ってるんだよって笑ってくれるかな。
そんなことを考えて涙ぐんでいる自分が、もっともっと愚かしく思えた。
食欲は、湧かない。
食べたいとも、思えなかった。
そして、五日が過ぎた。予定ではあと一日は帰ってこないはずのこの日、私は一度ホテルに泊まった──が、しかし。
「……なんで、鍵なんか持ってるんだろう」
本当に、本当に、馬鹿だ。
バッグに鍵を入れてしまっていた。
「……郵便受けに、入れよう」
タクシーに乗り、流水のような景色に目を向け──あっという間についた。運転手に待っていてもらうのも申し訳なく、玄関先の郵便受けに鍵を差し込んだ──その時。
「っ、梨紗……っ?」
「……れ、ん……なんで」
トランクごと家に引きずりこまれ、呆気なく──私の家出劇は、終わりを迎えた。
あの日、帰りを待っていた私。いくら夜だと言ってもまだ九時だし、そんなに遅くには帰ってこないと言っていた。だから、玄関先で待っていよう──そう考えて、待っていた、その時。
「あ、れ──、ん……?」
電柱の陰で、キスをする一組の男女。その片割れが蓮だと気付いた瞬間、自分の中の何かが割れた。
見ないふりをして、家の中に戻った。
部屋の中で、効いた冷房が、異様に冷たく感じた。
「……ごめん」
誰にも届かない一言と、小さな染みを作った涙。その全てを軽いタオルケットに押し込めるように、深呼吸を三回して寝ているふりをした。
帰ってきた片割れのため息は、どういう意味だったのだろう。
「……っ、──ぃ」
届かないごめんなさいの一言は、こんなにも悲しかった。
そして、今に至る。まだ荷造りは終わっていない。
──思い出が多すぎて、なんて言っても、何言ってるんだよって笑ってくれるかな。
そんなことを考えて涙ぐんでいる自分が、もっともっと愚かしく思えた。
食欲は、湧かない。
食べたいとも、思えなかった。
そして、五日が過ぎた。予定ではあと一日は帰ってこないはずのこの日、私は一度ホテルに泊まった──が、しかし。
「……なんで、鍵なんか持ってるんだろう」
本当に、本当に、馬鹿だ。
バッグに鍵を入れてしまっていた。
「……郵便受けに、入れよう」
タクシーに乗り、流水のような景色に目を向け──あっという間についた。運転手に待っていてもらうのも申し訳なく、玄関先の郵便受けに鍵を差し込んだ──その時。
「っ、梨紗……っ?」
「……れ、ん……なんで」
トランクごと家に引きずりこまれ、呆気なく──私の家出劇は、終わりを迎えた。
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