【本編完結済】前世の英雄(ストーカー)が今世でも後輩(ストーカー)な件。

とかげになりたい僕

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第二部

こんな場所で

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 ふかふかのうさぎに囲まれて、僕は「わぁ」と年甲斐もなく目を光らせた。ユーリが小さく吹き出すのに気づいて、僕は小さく咳払いをして、足元のうさぎに気をつけながら振り返る。

「なんでうさぎ?」

 別に不満なわけじゃない。うさぎは可愛いし、ふかふかだし、柔らかいし、あったかいし、言い出したらキリがないくらい好きだけど、なんでこんな暑い日に?

「リヒトさ、昔を覚えてる?」
「昔?」

 そう言って、ユーリは足元のうさぎを優しく撫でた。気持ちよさそうに鼻をヒクヒクさせる姿に、少しだけ羨ましくなって、僕はすぐに頭を振ってその考えを追い払った。
 うさぎに嫉妬とか、僕は馬鹿じゃないのか。

「リヒト?」
「え、あ、あぁ、昔って……」

 前世のことだろうが、うさぎに関して何かあっただろうか。まして、それをユーリに見られてたことなんて……。
 頭を悩ませる僕に痺れを切らしたのか、ユーリが「昔さ」とうさぎから手を離して立ち上がった。

「リヒトが野生のうさぎと対峙していた時があったでしょ?」
「野生の……あぁ」

 思い出した。生きている野生のうさぎにたまたま会って、何を思ったのか撫でようとしたんだ。けれど、ああいう生き物はカンが鋭いのか、撫でようとしては逃げられてしまい、結局撫でることなく僕は帰ったんだけど。
 って、あれ? あの場にいたのは僕だけだったはず……。

「もしかして、見てた、の?」
「もちろん」

 顔に熱が集まっていくのがわかる。きっと耳まで真っ赤になっているに違いない。僕がそんな状態なことを知っているのに、ユーリは話を続けている。

「追いかけては逃げられ、追いかけては逃げられ、あのリヒトは可愛かったなぁ」
「……っ、このストーカー!」
「リヒトだからだよ。リヒト以外にはしない」

 そう笑うユーリの顔に、悪意は見られない。悪意なくストーカーを認めるのだから、なおさらたちが悪いんだけど。
 それに慣れてしまった僕も僕だと思い、うさぎの餌コーナーへと向かう。人参があるかと思ったんだけど、そこにあったのは茶色い小さな魂が入ったカップだった。

「へぇ、人参じゃないんだ」

 代金を入れてカップを手に取る。ユーリも同じようにひとつ買ってから、二人で木陰に移動して餌を与えてみる。

「……あれ」

 なぜか僕の手ではなく、ユーリの手から餌を食べている。転生してもなお生き物に嫌われるとか、僕はどれだけゴウが深いんだろう。
 流石にショックが大きくて、まだまだ残ったままのカップをユーリに押しつける。

「僕のもあげて。ユーリからのほうが、この子たちもきっと喜ぶ」
「……リヒト」
「え?」

 ユーリが座る僕の後ろに回り込み、二人羽織をするように後ろから手を回して手を取った。そうして手に乗せた餌をうさぎに差し出せば、うさぎは鼻をヒクヒクさせた後、もぞもぞと食べ始めた。
 少しくすぐったくて、思わず「ふふ」と笑みが零れる。
 こんなにぴったりくっつくと少し暑い。背中に伝わるユーリの鼓動がそれとなく落ち着かなくて、でも餌やりをやめるわけにもいかず、なるべく鼓動が伝わらないように祈る。

「リヒト」
「……ん」
「乳首、勃ってるよ」

 言われてシャツに目を落とせば、つん、と主張するように山を作っていた。恥ずかしくて背中を丸めようとするが、手から餌が零れ落ちる音にハッとして元の姿勢に戻る。
 空いた手で服の上から擦られ、僕は「んっ」と吐息混じりの声を漏らした。

「ユーリ、こんなとこで……」
「俺たち以外に人いなかったよ。暑い日に外は、ね?」

 わかっててこの場所を選んだのなら最低だ。だけど、それに反応してしまう僕も似たようなものかもしれない。
 左だけを執拗に攻められ、最初は撫でるだけだった手が次第に摘む動きへと変わっていく。きゅっ、きゅっと規則的に摘んで、時につつかれ、指先で弾かれる。

「ひうっ、あ、あぁっ」

 優しい刺激に耐えられず、僕は内ももを擦るように足を閉じる。湿った感覚が肌に伝わり目をやれば、すでにそこには染みが出来ていた。

「ま、って、ここじゃ、やだ……」
「ここじゃ嫌なんだ。じゃ、場所変えればいいの?」

 シャツの中に入ってきた手が、手のひらを使って胸を撫で回す。左だけでなく右まで摘まれ、僕はたまらずコクコクと縦に頭を振った。
 立ち上がりからになったカップを出入り口のゴミ箱に捨てる。そのまま外へ連れ出され、火照る身体のまま少し歩いた先に見えてきたのは――

 田舎によくある、恋人が入るようなあの、ホテルだった。
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