【本編完結済】前世の英雄(ストーカー)が今世でも後輩(ストーカー)な件。

とかげになりたい僕

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第三部

夜の並木道

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 予想通り、というべきか。カフェに入った瞬間から、学生の視線が僕へと突き刺さる。
 それもそうか。あの有志家の、次男とはいえ御子息にあそこまで執着されているのだ。話題に上がらないほうが可笑しな話だ。
 カウンターの一番隅に座るも、これではまるで針の筵ではないか。小さくため息をついてから本を広げると、ことりとカフェモカの入ったカップが横に置かれた。

「こんにちは、ユーリくんの彼氏さん」

 カウンターを見れば、以前アヤメさんとコスプレについて話していたあのお友達だった。

「あ、えっとごめん、お金払うよ」
「いいんですよ! それより聞きたいんですけどっ」

 本を取り上げそうな勢いで、お友達はカウンターを叩いてずいと顔を近づけてきた。

「彼氏さんて」
「リヒトでいいよ。その呼び方はちょっと……」

 これ以上顔が近づいてこないよう、間に本を挟んで目だけ見えるような形にする。お友達も空気を読んだのか、こほんと小さく咳払いをした後、さっきよりもだいぶ小声で、

「リヒト先輩って上だったんですね、意外です」
「は? 上って何……?」
「ちょっとイメージ変わっちゃったので、衣装変えたいんですよ」

と僕には何を言っているのか、さっぱりわからない単語を並べ立てた。ただわかるのは、前に話していたコスプレを変えたいということぐらい。

「え、あ? うん? いいんじゃない、かな」
「わぁ、ありがとうございます。頑張って作りますから」
「作る……?」

 意味を聞こうにも、お友達は違うテーブルへ行ってしまって、結局最後まで何がなんだかわからなかった。

 カフェにいる間、動物園に来た期間限定の動物みたいに、代わる代わる見られ、たまにこっそりと写真も撮られた気がする。流石にそれはカフェの人が咎めてくれたけれど、檻の中の動物って大変なんだなと同情した。
 そうして本を半分以上読み終わる頃、バタバタと廊下を走る音が聞こえてきたから、僕は息をひとつ吐くと同時に本を鞄へと仕舞う。

「リヒト、いる!?」
「いるよ」

 間髪入れずに返してから、こちらから出入口に歩いていく。あんなにごった返していた通路も、出入口も、嘘のように人の波が引いたものだから少し笑ってしまった。
 あぁ、そういえば、ユーリがボクを連れ帰った時がこんなんだったな。ただ一人生き残った惨めな魔族、元四天王。どんな奴なのかと人間はボクを見に来て、けれど恐れからか決して近くに寄ろうとはしない。
 そんな中で、ユーリだけがボクに毎日話しかけて、抱いて、好きだとか愛してるだとか、なんかそんなことばっかり言ってたな。

「リヒト? 何か面白いことでもあった?」
「昔を、思い出しただけ」
「そっか」

 ユーリが手を握ってきた。それをこちらから一旦離して、指を絡めるように握り返してやれば、ユーリは「え」と驚いた顔をして僕を見下ろしてくる。

「どうしたの」
「もうバレたし、別にいいかなって開き直っただけ」
「じゃあ、またキスする?」
「それはもうしない」

 学内を出て、少し賑やかな通りに出て、二人でスマフォを買い替えた。やっぱり案の定、僕のスマフォに色々ヤバそうな機能をつけたみたいだけれど、もう慣れたしなとそのままにしておく。
 久しぶりに外食をして帰路に着く頃には、月に雲がかかってさらに暗くなり始めていた。そういえば明日から雨が降るんだっけ、と朝のニュースを思い出す。

「もうすぐ冬かぁ」
「まだ秋終わってないだろ」
「すぐ来るよ。クリスマスも年末年始も、そしたらまた春が来る。もちろん俺の隣にはリヒトがいるんだけど」
「当たり前」

 少しだけ、ユーリの身体に寄り添うよう、距離を詰めた。立ち止まったユーリに何事かと見上げれば、その空色の目が、僕を欲に満ちた目で見下ろしていた。

「家まで我慢しなよ」
「無理って言ったら?」

 掬い上げるように顎に手をやられて、そのまま軽く唇を重ね合わせる。けれどすぐに離れたユーリは「リヒト」と親指で僕の下唇を軽くなぞり、

「口、少し開けて。そう、それで舌を出して」
「ん……」
「上手」

と口の外で舌を絡ませてきた。
 外気に触れて少し寒いはずなのに、ユーリに触れたところから熱を持ち始めて、早くユーリに深くまで触って欲しい感覚が膨れ上がっていく。

「んぁ……っ」
「リヒト、ちょっとこっち来て」
「ん……」

 腕を引かれて、並木道から少し離れた場所へ連れて行かれる。イチョウの木々が並ぶそこは、月明かりが隠れた今じゃほんのりと明るいくらいの光しかない。
 その木まで行くと、ユーリはパーカーの下から手を差し入れてきた。

「ひあっ」

 触れた手が冷たくて変な声が出てしまった。ぞわりと何かが背中と腰を這う感覚は、きっと寒いからだけじゃない。

「リヒトあったかいね。こっちでこれなら、こっちはどうなってるのかな」
「や、やめて……、そと、だからっ」

 ユーリの右手は、パーカーの中で腰をなぞるように動いて、左手がジャージの中へ伸びてくる。直に触られたソコは、ユーリに緩く握られただけで勃ってしまって、先端からはぬるぬると恥ずかしい液体がずっと溢れている。

「外だから? 俺がナニするか知ってて、期待してついてきたでしょ? もう我慢なんて出来ないくせに」
「ひ、ぁ……んんんっ」

 先端を指先で擦られただけなのに、僕は我慢出来ずに達してしまった。下着は自分の出したもので気持ち悪いし、こんな場所でなんて絶対に嫌なのに。
 ユーリがジャージから出した手で、僕の頬を優しく撫でる。自分の出した白濁を塗りつけられているというのに、僕は全くといっていいほどに悪い気はしていない。
 背中をぞくぞく這う感覚に、ユーリの言う通り我慢が出来なくなる。僕はユーリのスラックスに手をやり、指先でその形をなぞった。

「ユーリ、ユーリの、おねが……」
「ちゃんと言えてないけど、まぁいいよ。俺も待てが出来るほど、出来た番犬じゃないからさ」

 そう言ってユーリは、僕のジャージに手をかけた。
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