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第四部
美男美女
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児童施設といっても一箇所だけではなく、何箇所かを学生で手分けして行くらしい。
日曜日、僕たちはアヤメさんの采配で、二人同じ施設にボランティアにやって来た。ここは僕たち以外の学生はいないらしくて、朝から、机やら椅子やらを並べるのに施設内を行ったり来たりしていた。
「本当にありがとねぇ。子供たちはお昼過ぎに来るから、それまで休憩にしましょうか」
施設のおばさんがお茶一本とおにぎり二つを渡してくれた。それを笑顔で受け取って、最後の机を配置したユーリに「休憩していいって」とタオルを渡した。
そんな僕たちを見ていたおばさんが「いいわねぇ」と微笑む。汗を拭いたユーリが「何が?」と敬語も何もあったもんじゃない態度で、おばさんからお茶とおにぎりを受け取った。
「美男美女って感じで、見てて本当に素敵だなって思ったの」
「美女……? っておばさん、僕は」
「あー、いいでしょ」
否定しようとする僕に被せてユーリが笑い、しかも自然に腰を引き寄せたものだから、おばさんは「あらあら」と嬉しそうな、それでいて照れるような反応をした。
おばさんは嬉しそうな笑顔のまま、隅に積まれた段ボールの中から、綺麗に畳まれた赤い服を出してきた。クリスマス、赤い服、それだけで意図がなんとなく読めて、僕は顔の筋肉が引きつるのがわかった。
「きっとこの服も似合うわ。いいかしら?」
「もちろん。ね?」
「え……?」
ユーリが僕に、意地の悪い笑顔を見せる。これはあれだ、ボランティアについてきてもらった、何かの罰なんだろうか。
おばさんは違う職員の人たちと、ケーキやクッキーを焼くらしく、僕たちは先に別室に案内された。部屋に入った瞬間、ユーリに「おい」と少し乱暴に話を切り出す。
「さっきのあれ、僕は着ないからな」
「でもこれ、リヒトじゃないと入らないよ?」
お茶とおにぎりを机に置いてから、ユーリが「ほら」と両手で広げてみせる。
どう見ても女性物のそれは、膝丈のスカートになっていて着るのに抵抗を感じる。学祭前に着た自分の前世の服装のが、まだマシだったかもしれない。男物だったし。
「今から僕が男だって訂正して、服を着ないようにしてもらって……」
「でも俺、トナカイ渡されちゃったんだよねぇ」
「へ?」
そう言って、ユーリは足元の袋から茶色の服を出してきた。フード部分がトナカイになっているパーカーと、茶色のズボン。それなりに大きく、確かに僕がこっちを着たらかなり丈を余らせてしまうだろう。
って、そうじゃない。第一、女装ならユーリだって学祭でやったんだ。ユーリのが慣れてるに決まってる。それを指摘してやろうと「ユーリ」と詰め寄ったところで、
「リヒトは子供の夢を壊すつもりなんだ?」
と眉尻を下げながら言われ、僕は「夢?」とたじろいだ。ユーリは頷いてからトナカイの服を机に置いて、代わりにサンタの服を手に取った。
「クリスマスっていったら、サンタとトナカイでしょ?」
「いや、普通サンタはおじいさんだろ」
「三百歳越えのじーさんじゃなかったっけ」
「今は二十一」
どうしても着せたいらしい。
これはもう、ただのユーリの趣味だ。この変態が。
「細かいこと言わない。おばさんも楽しみにしてたでしょ?」
「それは……」
「第一、ボランティア行こうって言い出したのはリヒトだよね? 言い出しっぺが着ないのはどうかと思うなぁ」
「……あぁもう!」
仕方がない。これは本当に仕方がないんだ。
ユーリから服を引ったくって、一応身体の上から合わせてみる。うん、背丈的には問題なさそうだ、悲しいことに。
「着るの手伝おっか?」
「一人で着れる」
「そう」
ユーリはあっさり引き下がって、おにぎりを食べ始めた。こっちが今から恥ずかしい思いをするというのに、本当呑気なやつだ。
まぁ、言っていても仕方なし。隅にある、パーテーションで仕切られただけの簡易更衣室へ行くと、まずは上から着るかと、僕は着ていたパーカーを捲り上げた。
日曜日、僕たちはアヤメさんの采配で、二人同じ施設にボランティアにやって来た。ここは僕たち以外の学生はいないらしくて、朝から、机やら椅子やらを並べるのに施設内を行ったり来たりしていた。
「本当にありがとねぇ。子供たちはお昼過ぎに来るから、それまで休憩にしましょうか」
施設のおばさんがお茶一本とおにぎり二つを渡してくれた。それを笑顔で受け取って、最後の机を配置したユーリに「休憩していいって」とタオルを渡した。
そんな僕たちを見ていたおばさんが「いいわねぇ」と微笑む。汗を拭いたユーリが「何が?」と敬語も何もあったもんじゃない態度で、おばさんからお茶とおにぎりを受け取った。
「美男美女って感じで、見てて本当に素敵だなって思ったの」
「美女……? っておばさん、僕は」
「あー、いいでしょ」
否定しようとする僕に被せてユーリが笑い、しかも自然に腰を引き寄せたものだから、おばさんは「あらあら」と嬉しそうな、それでいて照れるような反応をした。
おばさんは嬉しそうな笑顔のまま、隅に積まれた段ボールの中から、綺麗に畳まれた赤い服を出してきた。クリスマス、赤い服、それだけで意図がなんとなく読めて、僕は顔の筋肉が引きつるのがわかった。
「きっとこの服も似合うわ。いいかしら?」
「もちろん。ね?」
「え……?」
ユーリが僕に、意地の悪い笑顔を見せる。これはあれだ、ボランティアについてきてもらった、何かの罰なんだろうか。
おばさんは違う職員の人たちと、ケーキやクッキーを焼くらしく、僕たちは先に別室に案内された。部屋に入った瞬間、ユーリに「おい」と少し乱暴に話を切り出す。
「さっきのあれ、僕は着ないからな」
「でもこれ、リヒトじゃないと入らないよ?」
お茶とおにぎりを机に置いてから、ユーリが「ほら」と両手で広げてみせる。
どう見ても女性物のそれは、膝丈のスカートになっていて着るのに抵抗を感じる。学祭前に着た自分の前世の服装のが、まだマシだったかもしれない。男物だったし。
「今から僕が男だって訂正して、服を着ないようにしてもらって……」
「でも俺、トナカイ渡されちゃったんだよねぇ」
「へ?」
そう言って、ユーリは足元の袋から茶色の服を出してきた。フード部分がトナカイになっているパーカーと、茶色のズボン。それなりに大きく、確かに僕がこっちを着たらかなり丈を余らせてしまうだろう。
って、そうじゃない。第一、女装ならユーリだって学祭でやったんだ。ユーリのが慣れてるに決まってる。それを指摘してやろうと「ユーリ」と詰め寄ったところで、
「リヒトは子供の夢を壊すつもりなんだ?」
と眉尻を下げながら言われ、僕は「夢?」とたじろいだ。ユーリは頷いてからトナカイの服を机に置いて、代わりにサンタの服を手に取った。
「クリスマスっていったら、サンタとトナカイでしょ?」
「いや、普通サンタはおじいさんだろ」
「三百歳越えのじーさんじゃなかったっけ」
「今は二十一」
どうしても着せたいらしい。
これはもう、ただのユーリの趣味だ。この変態が。
「細かいこと言わない。おばさんも楽しみにしてたでしょ?」
「それは……」
「第一、ボランティア行こうって言い出したのはリヒトだよね? 言い出しっぺが着ないのはどうかと思うなぁ」
「……あぁもう!」
仕方がない。これは本当に仕方がないんだ。
ユーリから服を引ったくって、一応身体の上から合わせてみる。うん、背丈的には問題なさそうだ、悲しいことに。
「着るの手伝おっか?」
「一人で着れる」
「そう」
ユーリはあっさり引き下がって、おにぎりを食べ始めた。こっちが今から恥ずかしい思いをするというのに、本当呑気なやつだ。
まぁ、言っていても仕方なし。隅にある、パーテーションで仕切られただけの簡易更衣室へ行くと、まずは上から着るかと、僕は着ていたパーカーを捲り上げた。
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扉絵
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