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八月に書いた短編
夏の終わりに。
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いつもは街の明かりで賑やかな夜景も、今日限り、暗闇を取り戻す。
つけたテレビの地元ニュースからは「もうすぐ花火が上がります。カウントダウンを――」と女性アナウンサーが意気揚々と伝えている。
カウントダウンが終わる前に鳴り響いた音に、僕は「あ、始まった」とベランダへ続く窓のカーテンを開けた。
「ユーリ、花火」
流石、ここらで一番お高いマンション。
最上階ではないにしろ、住んでる階層はそれなりに高いためか、何にも邪魔されずに花火が綺麗に見える。
洗い物を終えたユーリが「ん」と隣に並んで、カチャンと鍵を開けた。
「わ、綺麗……」
色とりどりの花火が上がる。
たまにキャラクターを模したものも上がって、それの反応がテレビから少し遅れて聞こえてきた。
「花火といえばさ」
「うん?」
窓を開けたことでさらに音がよく聞こえるようになった。僕はユーリの言葉を聞き逃さないように、少しだけ身体を寄せた。
「雪崩で生き埋めになったの、思い出したよ」
「あ、あれは、お前のせいで制御が出来なくて……」
「俺のせい?」
身体を寄せた僕の腰に、ユーリの腕が回される。
さわさわと軽く触れられて、僕の口から「んっ……」と甘い声が漏れた。
「あれ、は、お前が、僕の邪魔をしようとした、から」
「それで爆発が起こって、雪崩が起きたんだもんね」
「覚えてる、じゃ、ないか……!」
雪国での一件だ。
確かそれで、寒いとのたうち回るこいつに仕方なくコートを貸して、仕方なく一緒にいてやって。
「裸で暖め合うといいよって言ったのに、リヒトが脱いでくれなくてさぁ」
「僕は魔族だっ。第一、あれくらいで死にはしない、し……。って、どこ触って」
腰を撫でていた手が、ズボンの上から臀部を撫でてきた。指先が窄みを掠めたところで、僕は「やめろ、って……」となんとかユーリから身体を離した。
「えー。花火見ながらシないの?」
「するわけないだろ」
この万年発情期が。それに。
「花火ぐらい、きちんと見たい……」
折角二人だけで見れるのだ。
ベッドへのお誘いはいつでも出来るが、花火は今日しかない。
「もう。リヒトには敵わないなぁ」
ユーリが仕方ないなぁと言うように笑って、玄関から靴を二足取ってきた。それを履いてベランダへ出れば、室内よりももっと鮮明に、そして盛大な音が響き渡った。
手すりに身体を預ける僕を、ユーリが後ろから抱きしめる。
「これぐらいはいい?」
「……好きにしろ」
「ん、ありがと」
嬉しそうな笑い声が降り注ぐ。
僕の髪に顔を埋めるユーリが犬みたいだ。いや、いつでも発情してるようなもんだし、犬と一緒にするのは犬に失礼かもしれない。
「あったかいなぁ」
「僕は少し暑苦しい」
「離してあげないよ?」
「離すなよ」
即答した僕に、ユーリは少しだけ驚いて、でもすぐに腕に力を込めて「もちろん」とうなじに吸い付いた。
つけたテレビの地元ニュースからは「もうすぐ花火が上がります。カウントダウンを――」と女性アナウンサーが意気揚々と伝えている。
カウントダウンが終わる前に鳴り響いた音に、僕は「あ、始まった」とベランダへ続く窓のカーテンを開けた。
「ユーリ、花火」
流石、ここらで一番お高いマンション。
最上階ではないにしろ、住んでる階層はそれなりに高いためか、何にも邪魔されずに花火が綺麗に見える。
洗い物を終えたユーリが「ん」と隣に並んで、カチャンと鍵を開けた。
「わ、綺麗……」
色とりどりの花火が上がる。
たまにキャラクターを模したものも上がって、それの反応がテレビから少し遅れて聞こえてきた。
「花火といえばさ」
「うん?」
窓を開けたことでさらに音がよく聞こえるようになった。僕はユーリの言葉を聞き逃さないように、少しだけ身体を寄せた。
「雪崩で生き埋めになったの、思い出したよ」
「あ、あれは、お前のせいで制御が出来なくて……」
「俺のせい?」
身体を寄せた僕の腰に、ユーリの腕が回される。
さわさわと軽く触れられて、僕の口から「んっ……」と甘い声が漏れた。
「あれ、は、お前が、僕の邪魔をしようとした、から」
「それで爆発が起こって、雪崩が起きたんだもんね」
「覚えてる、じゃ、ないか……!」
雪国での一件だ。
確かそれで、寒いとのたうち回るこいつに仕方なくコートを貸して、仕方なく一緒にいてやって。
「裸で暖め合うといいよって言ったのに、リヒトが脱いでくれなくてさぁ」
「僕は魔族だっ。第一、あれくらいで死にはしない、し……。って、どこ触って」
腰を撫でていた手が、ズボンの上から臀部を撫でてきた。指先が窄みを掠めたところで、僕は「やめろ、って……」となんとかユーリから身体を離した。
「えー。花火見ながらシないの?」
「するわけないだろ」
この万年発情期が。それに。
「花火ぐらい、きちんと見たい……」
折角二人だけで見れるのだ。
ベッドへのお誘いはいつでも出来るが、花火は今日しかない。
「もう。リヒトには敵わないなぁ」
ユーリが仕方ないなぁと言うように笑って、玄関から靴を二足取ってきた。それを履いてベランダへ出れば、室内よりももっと鮮明に、そして盛大な音が響き渡った。
手すりに身体を預ける僕を、ユーリが後ろから抱きしめる。
「これぐらいはいい?」
「……好きにしろ」
「ん、ありがと」
嬉しそうな笑い声が降り注ぐ。
僕の髪に顔を埋めるユーリが犬みたいだ。いや、いつでも発情してるようなもんだし、犬と一緒にするのは犬に失礼かもしれない。
「あったかいなぁ」
「僕は少し暑苦しい」
「離してあげないよ?」
「離すなよ」
即答した僕に、ユーリは少しだけ驚いて、でもすぐに腕に力を込めて「もちろん」とうなじに吸い付いた。
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