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竜の恩讐編
エピローグ その2
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「ふ~~~」
聖フランケンシュタイン大学病院に設けた私室のソファに腰かけ、ヴィクトリアは大きく息を吐いた。
今回の依頼における諸々の事後処理がようやく終わったからだ。
(千春、が、襲撃、した、連中の、解体、完了。装備、は、修理。当分、使えない)
琥外家が拠点にしていた場所の後始末と、シロガネとの闘いで破損した装備の状態確認。
どちらも当初伝えられていた依頼内容とは、比べ物にならないほど手間と時間をかけることになってしまった。
(大変、だった……)
いかに死者の人体と機械で構成されたヴィクトリアでも、今回の依頼には参らされた。
以前から繋がりのあった裏の一族の者から、自身が所属する暗殺集団との仲介を頼まれたのがきっかけだったが、それを受けたのが良かったのか悪かったのか。
そして依頼者がまさか自身が診察していた竜の一族の末裔との血縁だったとは。
普段はペースメーカーで調整しているヴィクトリアの心臓が、全ての事実を知った時には本当に跳ね上がった。
(……ピオニーア)
ヴィクトリアは部屋の隅にある特殊な冷凍庫に目をやった。
特別に依頼を受けて海外で帝王切開を行い、その施術した相手が数年後に日本にやって来た。
施術後の定期健診と、その代償として研究対象になるという条件のため、二人の患者と医者という関係は何年にも渡って続いた。
そのうちに、ヴィクトリアは適合する移植用臓器を見つけたのだが、何度奨めても固辞された。
『私はもう……翻弄されたくないし、させたくもないんです』
下腹部の傷痕に触れてそう言っていた姿が、今もヴィクトリアには強く印象に残っている。
「君の、実娘、大きく、なって、た、ぞ……」
当人の形見とも呼べない、冷凍庫に保存されたままの移植用臓器に、ヴィクトリアは語りかけていた。
そこへスマートフォンからモーツァルトの『鎮魂歌』の着信メロディが流れる。
大学病院の理事とは違う、闇医者としての依頼が入った合図だ。
「やれ、やれ……」
ソファから立ち上がり、白衣を調え、ヴィクトリアは地下の特別棟へと向かった。
言葉とは裏腹に、少し楽しげな足取りで。
聖フランケンシュタイン大学病院に設けた私室のソファに腰かけ、ヴィクトリアは大きく息を吐いた。
今回の依頼における諸々の事後処理がようやく終わったからだ。
(千春、が、襲撃、した、連中の、解体、完了。装備、は、修理。当分、使えない)
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どちらも当初伝えられていた依頼内容とは、比べ物にならないほど手間と時間をかけることになってしまった。
(大変、だった……)
いかに死者の人体と機械で構成されたヴィクトリアでも、今回の依頼には参らされた。
以前から繋がりのあった裏の一族の者から、自身が所属する暗殺集団との仲介を頼まれたのがきっかけだったが、それを受けたのが良かったのか悪かったのか。
そして依頼者がまさか自身が診察していた竜の一族の末裔との血縁だったとは。
普段はペースメーカーで調整しているヴィクトリアの心臓が、全ての事実を知った時には本当に跳ね上がった。
(……ピオニーア)
ヴィクトリアは部屋の隅にある特殊な冷凍庫に目をやった。
特別に依頼を受けて海外で帝王切開を行い、その施術した相手が数年後に日本にやって来た。
施術後の定期健診と、その代償として研究対象になるという条件のため、二人の患者と医者という関係は何年にも渡って続いた。
そのうちに、ヴィクトリアは適合する移植用臓器を見つけたのだが、何度奨めても固辞された。
『私はもう……翻弄されたくないし、させたくもないんです』
下腹部の傷痕に触れてそう言っていた姿が、今もヴィクトリアには強く印象に残っている。
「君の、実娘、大きく、なって、た、ぞ……」
当人の形見とも呼べない、冷凍庫に保存されたままの移植用臓器に、ヴィクトリアは語りかけていた。
そこへスマートフォンからモーツァルトの『鎮魂歌』の着信メロディが流れる。
大学病院の理事とは違う、闇医者としての依頼が入った合図だ。
「やれ、やれ……」
ソファから立ち上がり、白衣を調え、ヴィクトリアは地下の特別棟へと向かった。
言葉とは裏腹に、少し楽しげな足取りで。
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