461 / 465
裏の都編
着いた先 その5
しおりを挟む
「うぅ……」
頭痛の残滓に呻きながら、結城はゆっくりと目を開けた。
「あ、起きた?」
気が付いた結城の顔を、黒髪の少女が覗きこむ。
駅のプラットホームに設えられたベンチに座り、少女は結城を膝枕をして介抱していた。
結城はまだ意識が朦朧としているのか、少女の顔をじっと見たり、目だけを巡らせて周りの様子を確かめていた。
首を回して真横を見ようとしたが、
「あっ」
体勢を崩してしまい、少女の膝とベンチから落ちた。
「ちょっと。大丈夫?」
少女に助け起こされるが、落下の痛みよりも頭の奥に残る痛みの方が響いていた。
「あなた何なの? いきなり人の顔見て悶えるわ失神するわ、おまけに膝から落っこちるわ」
痛みが落ち着いてくると、結城はようやく少女の言葉が聞き取れるようになってきた。
「あなた本っ当に混じりっけなしのただの人間っぽいけど、何で裏京に来てるの? いえ、その前にどうやって来たの?」
「? ?」
「ん~、言ってること解る? じゃあひとまず名前を教えて」
少女に名前を聞かれ、
「名前……ゆ……結城……」
何とか声を出すことができた結城。
「結城? それが名前? じゃあ苗字は?」
「苗字……」
続けて答えようとする結城だったが、
「あ……あ……あれ?」
言葉がうまく出てこない。それ以前に質問に対する答えが浮かんでこない。
「僕の……苗字……あれ? 僕の苗字……何?」
「!?」
結城の様子を見て取った少女は目を細めた。
「あなた、今はどこに住んでるの? 誕生日は? 誰でもいいから知り合いの名前を言ってみて」
「え……あ……あ、あれ?」
結城は少女からの質問を頭の中で反芻するが、そのどれもに答えが思い浮かんでこない。
「あれ? あれ? 僕は……僕は……誰?」
結城は自身の名前以外、何も思い出せないことに愕然とした。
「ちょっとごめんね」
少女は結城の額を右手で鷲掴みにし、目を閉じて気を集中させた。
(この子、記憶を失ってる。それもただの記憶喪失じゃない。記憶を司る部分にすごい強力な術がかけられてる。でも何で―――)
「痛い痛い!」
「あっ!」
結城が痛みを訴えたので、少女は咄嗟に手を離した。
「ごめん。痛かった?」
「うぅ……」
頭を押さえて蹲る結城を見て、少女は考えを巡らせた。
(どうして裏京に来たのか分からないし、記憶にわざわざこれだけ強い術をあけられていた理由も分からない。そしてこんな状態で放置していくわけにもいかない)
十数秒悩んだ末、少女が出した結論は、
「仕方ない。私と一緒に極月祭を見て回ろ。何か思い出すまで」
半ば諦めたように、結城に手を差し伸べた。
結城は少女の顔と手を交互に見ながら、何か言いたそうにしている。
「ああ、そっか。まだ名乗ってなかったっけ。私は鈴―――あ~、ま、いっか。私は立星鈴。鈴でいいよ」
頭痛の残滓に呻きながら、結城はゆっくりと目を開けた。
「あ、起きた?」
気が付いた結城の顔を、黒髪の少女が覗きこむ。
駅のプラットホームに設えられたベンチに座り、少女は結城を膝枕をして介抱していた。
結城はまだ意識が朦朧としているのか、少女の顔をじっと見たり、目だけを巡らせて周りの様子を確かめていた。
首を回して真横を見ようとしたが、
「あっ」
体勢を崩してしまい、少女の膝とベンチから落ちた。
「ちょっと。大丈夫?」
少女に助け起こされるが、落下の痛みよりも頭の奥に残る痛みの方が響いていた。
「あなた何なの? いきなり人の顔見て悶えるわ失神するわ、おまけに膝から落っこちるわ」
痛みが落ち着いてくると、結城はようやく少女の言葉が聞き取れるようになってきた。
「あなた本っ当に混じりっけなしのただの人間っぽいけど、何で裏京に来てるの? いえ、その前にどうやって来たの?」
「? ?」
「ん~、言ってること解る? じゃあひとまず名前を教えて」
少女に名前を聞かれ、
「名前……ゆ……結城……」
何とか声を出すことができた結城。
「結城? それが名前? じゃあ苗字は?」
「苗字……」
続けて答えようとする結城だったが、
「あ……あ……あれ?」
言葉がうまく出てこない。それ以前に質問に対する答えが浮かんでこない。
「僕の……苗字……あれ? 僕の苗字……何?」
「!?」
結城の様子を見て取った少女は目を細めた。
「あなた、今はどこに住んでるの? 誕生日は? 誰でもいいから知り合いの名前を言ってみて」
「え……あ……あ、あれ?」
結城は少女からの質問を頭の中で反芻するが、そのどれもに答えが思い浮かんでこない。
「あれ? あれ? 僕は……僕は……誰?」
結城は自身の名前以外、何も思い出せないことに愕然とした。
「ちょっとごめんね」
少女は結城の額を右手で鷲掴みにし、目を閉じて気を集中させた。
(この子、記憶を失ってる。それもただの記憶喪失じゃない。記憶を司る部分にすごい強力な術がかけられてる。でも何で―――)
「痛い痛い!」
「あっ!」
結城が痛みを訴えたので、少女は咄嗟に手を離した。
「ごめん。痛かった?」
「うぅ……」
頭を押さえて蹲る結城を見て、少女は考えを巡らせた。
(どうして裏京に来たのか分からないし、記憶にわざわざこれだけ強い術をあけられていた理由も分からない。そしてこんな状態で放置していくわけにもいかない)
十数秒悩んだ末、少女が出した結論は、
「仕方ない。私と一緒に極月祭を見て回ろ。何か思い出すまで」
半ば諦めたように、結城に手を差し伸べた。
結城は少女の顔と手を交互に見ながら、何か言いたそうにしている。
「ああ、そっか。まだ名乗ってなかったっけ。私は鈴―――あ~、ま、いっか。私は立星鈴。鈴でいいよ」
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
無属性魔法しか使えない少年冒険者!!
藤城満定
ファンタジー
「祝福の儀式」で授かった属性魔法は無属性魔法だった。無属性と書いてハズレや役立たずと読まれている属性魔法を極めて馬鹿にしてきた奴らの常識を覆して見返す「ざまあ」系ストーリー。
不定期投稿作品です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
世界最弱と呼ばれた少年、気づけば伝説級勇者でした ~追放されたので気ままに旅してたら、全種族の姫たちに囲まれていました~
fuwamofu
ファンタジー
魔力量ゼロの落ちこぼれとして勇者パーティを追放された少年リアン。
絶望の果てに始めた自由な旅の中で、偶然助けた少女たちが次々と彼に惹かれていく。
だが誰も知らない。彼こそが古代勇者の血を継ぎ、世界を滅ぼす運命の「真なる勇者」だということを──。
無自覚最強の少年が、世界を変える奇跡を紡ぐ異世界ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる