小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

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裏の都編

着いた先 その5

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「うぅ……」
 頭痛の残滓ざんしうめきながら、結城ゆうきはゆっくりと目を開けた。
「あ、起きた?」
 気が付いた結城の顔を、黒髪の少女がのぞきこむ。
 駅のプラットホームにしつらえられたベンチに座り、少女は結城を膝枕ひざまくらをして介抱していた。
 結城はまだ意識が朦朧もうろうとしているのか、少女の顔をじっと見たり、目だけを巡らせてまわりの様子を確かめていた。
 首を回して真横を見ようとしたが、
「あっ」
 体勢を崩してしまい、少女の膝とベンチから落ちた。
「ちょっと。大丈夫?」
 少女に助け起こされるが、落下の痛みよりも頭の奥に残る痛みの方が響いていた。
「あなた何なの? いきなり人の顔見てもだえるわ失神するわ、おまけに膝から落っこちるわ」
 痛みが落ち着いてくると、結城はようやく少女の言葉が聞き取れるようになってきた。
「あなた本っ当に混じりっけなしのただの人間っぽいけど、何で裏京ここに来てるの? いえ、その前にどうやって来たの?」
「? ?」
「ん~、言ってることわかる? じゃあひとまず名前を教えて」
 少女に名前を聞かれ、
「名前……ゆ……結城……」
 何とか声を出すことができた結城。
「結城? それが名前? じゃあ苗字みょうじは?」
「苗字……」
 続けて答えようとする結城だったが、
「あ……あ……あれ?」
 言葉がうまく出てこない。それ以前に質問に対する答えが浮かんでこない。
「僕の……苗字……あれ? 僕の苗字……何?」
「!?」
 結城の様子を見て取った少女は目を細めた。
「あなた、今はどこに住んでるの? 誕生日は? 誰でもいいから知り合いの名前を言ってみて」
「え……あ……あ、あれ?」
 結城は少女からの質問を頭の中で反芻はんすうするが、そのどれもに答えが思い浮かんでこない。
「あれ? あれ? 僕は……僕は……誰?」
 結城は自身の名前以外、何も思い出せないことに愕然がくぜんとした。
「ちょっとごめんね」
 少女は結城の額を右手で鷲掴わしづかみにし、目を閉じて気を集中させた。
(この子、記憶を失ってる。それもただの記憶喪失じゃない。記憶をつかさどる部分にすごい強力な術がかけられてる。でも何で―――)
「痛い痛い!」
「あっ!」
 結城が痛みを訴えたので、少女は咄嗟とっさに手を離した。
「ごめん。痛かった?」
「うぅ……」
 頭を押さえてうずくまる結城を見て、少女は考えを巡らせた。
(どうして裏京ここに来たのか分からないし、記憶にわざわざこれだけ強い術をあけられていた理由も分からない。そしてこんな状態で放置していくわけにもいかない)
 十数秒悩んだ末、少女が出した結論は、
「仕方ない。私と一緒に極月祭ごくげつさいを見て回ろ。何か思い出すまで」
 なかば諦めたように、結城に手を差し伸べた。
 結城は少女の顔と手を交互に見ながら、何か言いたそうにしている。
「ああ、そっか。まだ名乗ってなかったっけ。私はすず―――あ~、ま、いっか。私は立星鈴たてほしすず。鈴でいいよ」
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