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裏の都編
因縁の再会 その3
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金霊銀行を出た媛寿と千春は、『甘味処・小豆洗い』という店に入った。
昔ながらの木造の茶屋といった雰囲気だが、店の奥には冷蔵庫や果物のダンボール、カウンターには三味線音楽を奏でる蓄音機――なぜか自動で針が戻る――が置かれている。
テーブルを挟んで椅子に座り、媛寿と千春は注文した品が来るのを待っていた。
「小豆洗おか人取って喰おか♪ はいよ、クリームあんみつ二つお待ち」
頭頂だけが禿た頭に捻り鉢巻を着けた老人が、軽快に盆を持ってきた。
「ほほぉ~う、座敷童子とは珍しいな。千春ちゃんの新しいコレかい?」
老人は千春に小指を立てて見せた。
「そう見える?」
千春は意味ありげに微笑むが、かなり不機嫌そうに睨んでくる媛寿に気付き、
「ん~、このくらいの年齢の娘も守備範囲だけど、この座敷童子は趣味じゃないかな」
「そっか。まぁ座敷童子から恨みを買うと恐いからな。気ぃ付けろよ」
クリームあんみつの皿を二つ置き、老人はカウンターに去っていった。
「わざわざ銀行に寄らなくても、別にこのくらい奢ってあげたのに」
「お前に奢ってもらいたくない」
媛寿はスプーンを取ると、クリームあんみつの小豆を掬って食べ始めた。
「つれないなぁ、幕末からの仲じゃない。あ、それともまだあの娘のこと根に持ってるとか?」
「っ!」
「なかなか見ものだったわよ。あの娘がお嫁に行けない体になっていく様は。もっとも、一番面白かったのは復讐が全くの無意味だったと知った後だったなぁ。あの泣き顔、いま思い出してもぞくぞくして―――」
「っ!」
恍惚としている千春に激昂した媛寿は、左袖に手を入れようとしたが、
「この店で暴れる? 裏京では基本、諍いは御法度。忘れてないでしょ?」
千春は右手を翳して媛寿を制止させ、媛寿もまた非常に不本意だが左袖から手を引き抜いた。
「それで? 何でまた裏京に来たの? あたしも年に一、二回程度だけど、あなた半世紀以上見かけてないけど?」
「裏京に来たかったわけじゃない。酒解神社ってとこに用があっただけ」
「酒解神社……あ~、確か攘夷浪士追い詰めた山にそんな神社あったっけ」
「そこに行こうと京都駅に来たら、いつの間にか裏京だった」
「ふ~ん、極月祭だから自動的に招かれたのかな?」
「ごくげつさい?」
「ああ、そっか。半世紀以上来てないから知らないのか」
千春はあんみつのバニラアイスを掬い、口に運んだ。
「いいよ。せっかくなんで説明してあげる」
昔ながらの木造の茶屋といった雰囲気だが、店の奥には冷蔵庫や果物のダンボール、カウンターには三味線音楽を奏でる蓄音機――なぜか自動で針が戻る――が置かれている。
テーブルを挟んで椅子に座り、媛寿と千春は注文した品が来るのを待っていた。
「小豆洗おか人取って喰おか♪ はいよ、クリームあんみつ二つお待ち」
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「ほほぉ~う、座敷童子とは珍しいな。千春ちゃんの新しいコレかい?」
老人は千春に小指を立てて見せた。
「そう見える?」
千春は意味ありげに微笑むが、かなり不機嫌そうに睨んでくる媛寿に気付き、
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「そっか。まぁ座敷童子から恨みを買うと恐いからな。気ぃ付けろよ」
クリームあんみつの皿を二つ置き、老人はカウンターに去っていった。
「わざわざ銀行に寄らなくても、別にこのくらい奢ってあげたのに」
「お前に奢ってもらいたくない」
媛寿はスプーンを取ると、クリームあんみつの小豆を掬って食べ始めた。
「つれないなぁ、幕末からの仲じゃない。あ、それともまだあの娘のこと根に持ってるとか?」
「っ!」
「なかなか見ものだったわよ。あの娘がお嫁に行けない体になっていく様は。もっとも、一番面白かったのは復讐が全くの無意味だったと知った後だったなぁ。あの泣き顔、いま思い出してもぞくぞくして―――」
「っ!」
恍惚としている千春に激昂した媛寿は、左袖に手を入れようとしたが、
「この店で暴れる? 裏京では基本、諍いは御法度。忘れてないでしょ?」
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「それで? 何でまた裏京に来たの? あたしも年に一、二回程度だけど、あなた半世紀以上見かけてないけど?」
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「そこに行こうと京都駅に来たら、いつの間にか裏京だった」
「ふ~ん、極月祭だから自動的に招かれたのかな?」
「ごくげつさい?」
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「いいよ。せっかくなんで説明してあげる」
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