小林結城は奇妙な縁を持っている

木林 裕四郎

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裏の都編

裏京 その1

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「早く降りないと!」
「よっしゃー! いっくぞー!」
「いざキョウトへ」
「EΞ7↑EA(さっさと終わらせて美味うまいもの食うぞ)」
「面白いモノ、あるかな」
 結城ゆうき媛寿えんじゅの背を追って、アテナは新幹線の扉をくぐった。

「ちょいとそこのお兄さ~ん♪ 一発ヤッてかな~い?」
「今なら料金割引きよ~♪」
「さあさあ今からケモノ屋は大盤振る舞い! 料金半額! 半額だ~! 早くしないと獣娘が取られるぜ~!」
 新幹線の扉を潜った先には、色とりどりのあかりが飛びう大通りだった。
「……」
 その往来おうらいの真ん中に立っていたアテナは、つとめて冷静に状況を把握しようとしていた。
 ネオンサインのごとく様々な光を放ついくつもの提灯ちょうちん
 それらはひもに吊るされることなく、空中をゆるやかに浮遊して辺りを照らして回っている。
 そして通りの端から端までを埋める建物は、時代劇によく見られる古めかしい木造の物ばかり。
 極めつけはつやっぽい声で客引きをしている美女たち。
 その誰もが着物を肌蹴はだけたり、露出の多い服装だが、それよりも強い印象を与えているのは、一人も普通の人間の容姿ではないことだった。
 ある者は獣の耳や尾を持ち、ある者は手に水かきがあり、それだけに留まらず身の丈が二メートルをゆうに超える大女から、身体の各部に球体関節をのぞかせる者もいる。
 店先のろうに模したところには、下半身が魚の美女がなまめかしく横たわって客たちを眺めていた。
(これは、以前媛寿とともに観た『暴れおおかみ・諸国漫遊篇まんゆうへん(時代劇)』 に出てきた、いわゆる『色街いろまち』というものでしょうか)
 数秒間まわりに視線を巡らせていたアテナはそう答えを出した。
(しかし列車を降りてなぜこのような場所に―――)
「やあやあ、そこの金髪美人さんコンバンワ」
 アテナが思考を巡らせようとした時、背後から派手なスーツ姿の男が声をかけてきた。
 この男も例に漏れず、耳がうさぎのように長く伸びている。
「もしかして外海そとうみから来た? お美しい金髪♪ スタイルもめっちゃオレ好み♪ どうどう? オレと今晩……」
 兎耳の男は白のブラウスを着たアテナの胸元に、紺のタイトパンツに包まれた脚に、めるような視線を向けていた。
「オレ、人間の世界でホストやってっから。女の子を一晩中泣かせるのなんてワケないぜぇ。あんたのこともオレなしじゃいられない体にしちゃったりしてぇ―――イダダダダ!」
 アテナの胸に手を出そうとした兎耳の男は、握手をするようにアテナに手を握られながら悲鳴を上げた。
「ちょっ! ちょっ! マジで痛いぃ~!」
「私に無礼を働こうとしたのはこの手でしょうか? それとも―――」
 アテナは左手で何かをつまむようにしながら、
「―――この口でしょうか?」
 兎耳の男の顔に手を近づけていった。
「ひい! ひいいぃ!」
 兎耳の男は逃げようとするが、アテナに手を握られているため、逃げることができない。
 あわや、口元を摘まれるという寸前で、
「アテナ様~、色街でそういうのは御法度ごはっとなんですよ~?」
 事態に硬直する往来の人々の間から、聞きおぼえのある間延びした声がして、アテナは思わず手を止めた。
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花雨
2021.08.09 花雨

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