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竜の恩讐編
それぞれの向き合い方 その2
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「そう、そういうことになったから。ヴィクトリアにも伝えといて。千秋にはもう言ってあるから。じゃあルーシー、明後日よろしく」
通話を終えた千春は、スマートフォンをベッド脇に置いた。
私立皆本学園の生徒会室。そこに造られた隠し部屋に今いるのは、生徒会長である皆本千春もとい天坂千春と、
「……」
千春の依頼者であるプラチナブロンドの少女、ラナン・キュラスことリズベルだけだった。
リズベルはベッドシーツを体に巻きつけるようにしながら、背を曲げてベッドに横たわっている。
「う~ん……」
顔を背けるリズベルに、千春は何事か考えながら手を伸ばした。
「切り揃えた方が良さそうね。このままじゃちょっとバランス悪いし」
リズベルの髪の引きちぎられた部分を撫でながら言う千春。
「あたしが綺麗に切り揃えてあげる。その後はもう一回、ね」
耳元でそう囁きながら、千春はリズベルの胸元に手を這わせようとしたが、
「ん?」
ベッド脇に置いていたスマートフォンが着信音を鳴らし、千春は少し不機嫌な顔で振り返った。
「イイとこだったのに。誰?」
スマートフォンに表示された番号を見た千春は、一層機嫌の悪い顔を作った。
「はい、もしもし」
『もしもし、オレだ』
「今どきオレオレ詐欺なんて流行らないと思うけど?」
『……播海繋鴎だ。分かってて言ってるだろ』
電話の相手、播海繋鴎もまた、千春の対応に少し苛立っているようだった。
「こっちは今お楽しみ中なの。用があるなら手短にしてもらえる?」
『じゃあ聞くが、一体どういう了見なんだ?』
「なんの話?」
『とぼけるなよ。明後日の―――』
「あ~、はいはい。その話ね。耳が早いこと」
『どういうつもりかと聞いている』
「一体どこから聞きつけたのやら。監視でも付いてたりする?」
『……おい、手短にと言ったのはそっちじゃ―――』
「そのことで文句言うなら相手が違うわ」
スマートフォンを耳に当てながら、千春は隣で横たわるリズベルを見た。
「どういうつもりも何も、あたしたちは依頼を受けたら、それを実行するだけ。依頼料もしっかりもらえるなら、なおさらね」
『だったらオレから依頼のキャンセルを要求する。小林結城は放っておいても死ぬんだろ? これ以上事を荒立て―――』
「この娘が差し出したもの以上に、あたしの気を惹くものを持ってこれるなら、この依頼はキャンセルでいいわ」
それだけ言い切ると、千春は一方的に通話を切った。
「さて、髪を整えたら続きをしましょうか、リズベルちゃん?」
千春はリズベルの頬を指先で撫でるが、リズベルは特に反応することはなかった。
いかなる玩弄も屈辱も、今のリズベルにとっては何ら堪えるに値しない。
媛寿が伝えてきた、小林結城からの言伝が、リズベルの憎悪と怨嗟をさらに強く固めていたからだ。
(あの男の命は……必ず私の手で……葬り去ってやる!)
「くそっ―――」
自動車の後部座席に座っていた繋鴎は、スマートフォンを投げつけたい衝動を寸でのところで抑えた。
呼吸を整えて苛立ちを鎮めると、平時の冷静な思考を巡らせていく。
(小林結城が確実に死ぬ状況が作れたからと、油断したのがまずかったか? まさかこんな方向に流れるとはな。いや、それよりも)
繋鴎は再びスマートフォンを操作すると、登録番号の一覧を開いた。
(こうなってしまっては、どんな状況になるか分かったモンじゃない。何とか依頼をキャンセルさせる算段をつけなければ)
目当ての番号をタップし、繋鴎はスマートフォンを耳に当てた。
「ああ、失礼。播海繋鴎だ。そう、君の主に代わってもらえるか?」
通話を終えた千春は、スマートフォンをベッド脇に置いた。
私立皆本学園の生徒会室。そこに造られた隠し部屋に今いるのは、生徒会長である皆本千春もとい天坂千春と、
「……」
千春の依頼者であるプラチナブロンドの少女、ラナン・キュラスことリズベルだけだった。
リズベルはベッドシーツを体に巻きつけるようにしながら、背を曲げてベッドに横たわっている。
「う~ん……」
顔を背けるリズベルに、千春は何事か考えながら手を伸ばした。
「切り揃えた方が良さそうね。このままじゃちょっとバランス悪いし」
リズベルの髪の引きちぎられた部分を撫でながら言う千春。
「あたしが綺麗に切り揃えてあげる。その後はもう一回、ね」
耳元でそう囁きながら、千春はリズベルの胸元に手を這わせようとしたが、
「ん?」
ベッド脇に置いていたスマートフォンが着信音を鳴らし、千春は少し不機嫌な顔で振り返った。
「イイとこだったのに。誰?」
スマートフォンに表示された番号を見た千春は、一層機嫌の悪い顔を作った。
「はい、もしもし」
『もしもし、オレだ』
「今どきオレオレ詐欺なんて流行らないと思うけど?」
『……播海繋鴎だ。分かってて言ってるだろ』
電話の相手、播海繋鴎もまた、千春の対応に少し苛立っているようだった。
「こっちは今お楽しみ中なの。用があるなら手短にしてもらえる?」
『じゃあ聞くが、一体どういう了見なんだ?』
「なんの話?」
『とぼけるなよ。明後日の―――』
「あ~、はいはい。その話ね。耳が早いこと」
『どういうつもりかと聞いている』
「一体どこから聞きつけたのやら。監視でも付いてたりする?」
『……おい、手短にと言ったのはそっちじゃ―――』
「そのことで文句言うなら相手が違うわ」
スマートフォンを耳に当てながら、千春は隣で横たわるリズベルを見た。
「どういうつもりも何も、あたしたちは依頼を受けたら、それを実行するだけ。依頼料もしっかりもらえるなら、なおさらね」
『だったらオレから依頼のキャンセルを要求する。小林結城は放っておいても死ぬんだろ? これ以上事を荒立て―――』
「この娘が差し出したもの以上に、あたしの気を惹くものを持ってこれるなら、この依頼はキャンセルでいいわ」
それだけ言い切ると、千春は一方的に通話を切った。
「さて、髪を整えたら続きをしましょうか、リズベルちゃん?」
千春はリズベルの頬を指先で撫でるが、リズベルは特に反応することはなかった。
いかなる玩弄も屈辱も、今のリズベルにとっては何ら堪えるに値しない。
媛寿が伝えてきた、小林結城からの言伝が、リズベルの憎悪と怨嗟をさらに強く固めていたからだ。
(あの男の命は……必ず私の手で……葬り去ってやる!)
「くそっ―――」
自動車の後部座席に座っていた繋鴎は、スマートフォンを投げつけたい衝動を寸でのところで抑えた。
呼吸を整えて苛立ちを鎮めると、平時の冷静な思考を巡らせていく。
(小林結城が確実に死ぬ状況が作れたからと、油断したのがまずかったか? まさかこんな方向に流れるとはな。いや、それよりも)
繋鴎は再びスマートフォンを操作すると、登録番号の一覧を開いた。
(こうなってしまっては、どんな状況になるか分かったモンじゃない。何とか依頼をキャンセルさせる算段をつけなければ)
目当ての番号をタップし、繋鴎はスマートフォンを耳に当てた。
「ああ、失礼。播海繋鴎だ。そう、君の主に代わってもらえるか?」
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