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制圧……

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(2番と4番もやられた!?)
 木造の建物の奥にある部屋で、術者は焦燥に駆られた。
 見張りに回らせていた6番の操作ができなくなったので、2番と4番を向かわせたら、奇妙な一団が隠れ家までやって来ていた。
 この場所を知っている人間は自分の他にいない。まともな道で来ることはできないはずの場所に誰かがいるということは、嗅ぎつけられてしまったのだ。
 その一団は倒れた6番を調べているようだった。おそらく武器を持たせていたこともバレている。
 居所も武器の所持も突き止められた以上、生かして帰せない。
 始末するために発砲させたが、数分と経たずに2番と4番も倒された。死者とはいえ銃火器で武装させた人間を容易く制圧する侵入者に、術者は戦慄した。
 残っているのは3番と5番だけ。応戦させても敵の規格外の強さでは突破されるかもしれない。
(冗談じゃない! ここまで来て!)
 このままでは全てが水の泡になってしまう。もう少し、もう少しで目処が立つのに。
 ひとまず3番と5番を囮にして逃げるしかない。減ってしまった人員は、また病院から盗んで仕切りなおす。
 術者は傍らに佇む死者・染井未幸の手を取り、暗がりに近づきつつある部屋を抜け出した。
(ここまで来て退けない。あの人を、あの人を助けるために!)

 木造の建物に突入した結城たちは、早速銃撃で出迎えられた。またも二人一組の武装した死者が、アサルトライフルで銃丸をばら撒いてくる。
 狭い廊下の端から嵐のように銃弾が飛来するが、アテナのアイギスなら余裕で防ぐことができる。しかし屋内に入っては、先ほどのようにマスクマンのブーメランは使えない。
 ふと、シロガネはアイギスで弾かれた銃弾が、建物のいたるところを抉ったように破壊していることに気付いた。古い木造なので老朽化が激しく、わずかな衝撃でも大きな破損を生んでいる。ならば、とシロガネは腰の山刀に手をかけた。
「行って、くる」
 敵の位置とはまったく別の方向にシロガネは突撃した。向かうは木製の壁。山刀を抜き放ち、斬撃を三振りすると、脆くなった壁は彼女が激突するよりも速く崩れ去った。
 壁を斬って部屋へ入ったシロガネはまた方向転換し、その先にある壁を山刀で斬り崩す。数枚の壁を破壊して屋内を直進し、銃声が真横で聞こえる位置に到達した時、すかさず90度の方向転換。自分と敵を隔てる壁を細切れに変えた。
 側面の壁から突然現れたシロガネに、二人組は一瞬判断が遅れた。結城たちに発砲していた銃口を向けなおそうにも、シロガネの方が圧倒的に速い。振りかざされた山刀が二筋閃くと、アサルトライフルは二丁とも真っ二つに斬られてしまった。
 華麗な体捌きで足払いを食らわせたあと、シロガネは二人組を廊下に押さえつけた。
 最後は盾を離したアテナが駆け寄り、首もとの秘孔を押し、活動を停止させる。二人は互いに親指を立てた。
「ア、アテナ様~。早く戻ってきてくださ~い」
「H£1(訳:お、重い)」
 アテナとシロガネがサムズアップをしている一方、アイギスを預けられた結城とマスクマンは震え声でアテナを呼んだ。彼女の兜ほどではないが、アイギスも相当な重量がある。支えるだけでも一苦労だ。
「アイギスをまだ重いと感じるなら、もっとトレーニングをハードにしなければいけませんよ、ユウキ」
「そ、そんな~」
「ゆうき、がんばがんば!」
 情けない声を上げる結城の背中を、媛寿がピョンピョン跳ねて応援するが、彼の腕と膝はもはや生まれたての小鹿のような状態だった。見かねたアテナがアイギスを受け取り、結城とマスクマンはようやく超重量の盾から解放された。
「うわぁ、ホントに機動隊とSATなしでやっちゃったよ」
 結城たちの後を追ってきた九木は、驚きつつも感心した様子で周囲を見渡した。さすがに危険なので草むらに隠れているように言われていたが、銃声が止んだので出てきたようだ。
「と、ところで九木刑事。ぬ、盗まれた遺体って何人分だったんですか?」
 まだアイギスを支えていた影響で息が上がっているが、結城は何とか声を絞り出して九木に問いかけた。
「あ~、確か六人分だったかな。ここまでで五人分だったから、あとは・・・・・・おい、アレ!」
 九木は急に声を張り上げ、建物の壊れた窓を指差した。指し示された方を見ると、雑木林に向かって広場を走っていく二つの人影が見えた。
 一人は残っている最後の遺体。ならばもう一人は―――
「術者だ!」
結城は慌てて立ち上がるが、まだ体力が戻っていないので走れない。術者はもう少しで雑木林に入ってしまう。
「D#1(訳:逃がすか)」
 立ち上がったマスクマンが壊れた窓からブーメランを投げ放った。旋回するブーメランは直進コースで術者へと飛び、走る両足に絡みつくことで地面に転ばせた。
 その隙に結城たちは建物から飛び出し、倒れ伏す術者へと駆け寄った。
「そこまでだ! 盗んだ遺体は返してもら・・・う・・・よ」
 追い詰めた術者に、結城は高らかに宣言しようとしたが、その姿を捉えた途端だんだん声量は落ちていった。
 伏した状態から立ち上がった術者に、結城は見覚えがあったからだ。
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