再生されたアダム

星屑さん

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逃亡者

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この世界の最後の男性が亡くなってから、50年経った頃、


社会では、男性崇拝と言う宗教が広がりを見せて、



直ぐに世界規模に拡大して。大きく発展すると、各地で問題を起こし出した。



彼女らの主張は、地上から不浄は男女の全てを、残された記録から無くして、



純粋に男性のみの信仰を望んで、今までの歴史や記録を破壊し始めたのだ。




純粋な男性崇拝主義者たちは、残された男性の遺物や歴史、様々な記録を破壊して、



男性教の旗を掲げて、地上から跡形も無く消し去って行った。



そして、自分たちの掲げる純粋な男性体のみが崇拝をされる事で、



女性たちの繁栄を謳った経典を、その教えの基礎としたのだ。



彼女らの掲げる教え以外は、汚れた物とされ、破壊と抹殺に寄って浄化した。





それ以降、男性に関する正しい記録は無くなり、男性の存在の痕跡は、



私人や、子孫らの口伝えの伝説となって仕舞った。




その事で、全世界は、名実ともに、女性だけの世界になって仕舞ったが、



それから更に50年が過ぎて、100年を区切りにして、再び地上に、



男性を復活させる研究が始まった。




その事を良く思わない男性崇拝教は、自分たちの独占的な立場を守るためにも、



何としても男性復活を阻止しなければならなかった。



男性崇拝教とは、女性が地上全てを支配をする教えでもあるからだ。




男性の復活実験も、彼女らの強い反発や厳しい監視の中で続けられていたが、



崇拝教は、似非物の男性擬きの抹殺を目論んでいたのだ。






サイドが研究所のラボから逃亡して、街中に追跡部隊が送り込まれた。



凡そ一ヵ月が経ったが、逃亡したサイドの足取りは掴めずにいる。



各通行する主要道路や、監視カメラなどを総動員して捜索を続けていたが、



一向に行方が特定出来ずに、検問を増やし捜索範囲が拡大されて行く、



そんな中で、ファーストの試験体も、物理的な実験をされ始め、



その辛さから、サイドと同じに逃亡の隙を伺い始める。



ファーストが、研究員たちの話していたのを、隠れて聞いた話では、


どうやらサイドは、BLの多い繁華街の中に逃げ込んで仕舞い、



その疑似男性ボーイズレディと、外観では全く区別が付かないために、



捜索が難航しているのだと言う、



ファーストは、自分も、この研究所を抜け出して、



上手くそこに逃げ込めれば、逃げ切るチャンスはあると確信した。



ファーストは、ある研究員に注目して、その研究員に近付き、そっと耳打ちをした。



「エサを食べる所を見せて上げられるよ」


驚く研究員、今まで一度もエサを食べる所など見た事も無く、またそんな記録も無い、



見られれば、史上初となる事は明らかだった。



これは断れる筈もない、一生に一度の記録が出来るのだから、研究員は顔を赤くしつつ、



目の前のファーストの望みを聞いて仕舞ったのだ。





意外と容易くファーストは研究所を脱出できたが、研究所は森に囲まれていて、




そこから出た後は、街の繁華街までの道のりを如何するかだった。








2024年2月3日 星屑さん 齋藤務




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