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19章
115.時間や天気
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「ロク、大丈夫?」
「問題ない。だが、海を渡ったことはないから少し時間がかかるかもしれない」
通信機でロクと連絡を取ってみた。特に怪我もなくピンピンしているようだ。その点は安心だ。しかし流石の渡者も海を渡る手段は持っていないらしい。
「都合よくその島に地下があったりしないかなぁ」
「なるほど。探してみる」
ロクはそう言った後、すぐに通信を切ってしまった。
「ということで、ロクは元気そうです」
「ま、渡者ですしね」
特に心配していなかったルーパルド。イナトも同意見のようで頷いている。
「ロクを置いてエンドラスト国に行きたいところですが、国境があるのでやめておきましょう」
話によると、渡者1人でも主人のためであれば基本通れる仕様ではあるらしい。しかし、ロクはあまり顔を門番に見せていない。また、私についてもイナトの顔パスで通っているため門番に顔を覚えられていない可能性があると言われた。
今後のためにも顔は売っておいた方がいいのかもしれない。
「あ、ロクから連絡だ」
すぐに通話ボタンを押すと、小鳥の声や草木の揺れる音が聞こえてきた。
「島には何かありそうだ。お前達も来て見た方がいいかもしれない」
ロクが言うには石造建築物があるらしい。中には入っていないが、建物の周りを人形のようなものが巡回していると言う。確かにそうなると何かを守っているとしか考えられない。
「穴を見つけた。道が続いていそうだからこれから入る。外に出られたらもう一度連絡する」
それだけ言ってまたロクは通信を切ってしまった。
「渡者待ちですねこりゃ。箱で待機しておきます?」
「そうしよう。僕は片付けておきたい書類がある」
「仕事熱心な上司がいると休まりませんねぇ……」
やれやれとルーパルドは肩をすくめたのだった。
◇
箱に入ってすぐにイナトは部屋へと直行。私とルーパルドはそれを見送り、息を吐く。
「私達はどうする? そもそもルーパルドは残ってる仕事あるの?」
「ほんの少しね。後でどやされそうだし、さっさと終わらせてくるとしますかね」
気だるそうにルーパルドは言った後、私を見つめた。
「応援ってことで頭撫でてくれると嬉しいんだけど」
「あれ? 拒否してなかった?」
「気が変わったの。ほら、団長に見つかる前に早く」
そう急かしながら、私が撫でやすいように私の前で屈む。
言われるがまま頭を撫でると、少し照れ臭そうに笑っている。自分でせがんだくせに。
犬みたいだなぁと思いながら両手でわしゃわしゃと撫でると、ルーパルドはくすぐったいのか「ふふ」と笑う。
「絶対それ犬撫でる時のやつでしょ」
「大型犬みたいな気がしてきたから。つい」
「リンになら飼われてもいいかもなぁ」
撫でていた私の両手を握り目を細めた。
「さて、そろそろ仕事しようかな。ありがとうございました」
去り際に私の頭を撫で足早に家へと入って行ってしまった。
私も家に入るかと歩き始めたところで、黒い装いをした人影が見えた。ロクはまだのようだし、おそらく召使だろう。
「召使さん?」
「こんにちは、救世主様」
「こんにちは。何を見ているんですか?」
召使が眺めていた方向は、広大な草原が広がっているだけだ。鳥も虫も、何もいない。
「救世主様のためにソファやベッドをここに置こうかと」
「外でゆっくりできるように?」
「ええ。箱の中はいつも晴れなので。ちなみに、外とは別に瞬時に夜にもできますよ」
夜にするには箱のメニュー画面を開き、箱の時間を調整すれば良いとのこと。
いつもは外の時間と連動しているが、私の気分次第で昼夜逆転してもいいわけだ。
便利な機能だが、あまり使うこともなさそうだな。
「天気を変えることもできますよ。雨の音でリラックスしたい時にどうぞ」
「へぇ、便利ですね」
その設定も箱のメニューを開いて、天気から調整が可能。この説明だけだととてもゲームっぽい。ちなみに雨が降ったりしても召使が置く予定のソファやベッドは濡れない仕様なのだとか。本当に便利だ。
後で2人に話してから試してみよう。ロクと合流した後にもやってあげよう。きっと興味を持つはずだ。
「それでは私はこれで。良い旅を」
「召使さん、ありがとうございます」
召使を見送った後、家へと入る。
ちょうどイナトが階段から降りてきていたようで、リビングで鉢合わせる。
「書類片付いたの?」
「ええ、ひとまず。ロクから連絡はきましたか?」
「まだだよ。あ、でもチャットは来てる」
内容は、洞窟は暗く冷えている。海の中にあるからか、海中にいるような感覚になる。足の生えた魚が時々走ってる……というツッコミたくなるようなことも書いてある。
「足の生えた魚とかいるの……」
「それはアシギョウオですね。希少生物らしいですよ」
かなり足が早く並大抵の人では捕まえられない。また、追い詰められた時には口から塩水を吐き相手を驚かせる。加えてその塩水は目を目掛けて発射してくるとか。
「会いたくないなぁ」
「心配しないでください。追いかけたりしなければ無害ですよ」
走りを止めてしまうと死んでしまうタイプらしい。そのため、イナトのような仕事をしていないと落ち着かない人のことをアシギョウオのような人とも言われるとか。
「イナトはアシギョウオ……」
「やめてください」
一緒にされるのは嫌だったようだ。
「問題ない。だが、海を渡ったことはないから少し時間がかかるかもしれない」
通信機でロクと連絡を取ってみた。特に怪我もなくピンピンしているようだ。その点は安心だ。しかし流石の渡者も海を渡る手段は持っていないらしい。
「都合よくその島に地下があったりしないかなぁ」
「なるほど。探してみる」
ロクはそう言った後、すぐに通信を切ってしまった。
「ということで、ロクは元気そうです」
「ま、渡者ですしね」
特に心配していなかったルーパルド。イナトも同意見のようで頷いている。
「ロクを置いてエンドラスト国に行きたいところですが、国境があるのでやめておきましょう」
話によると、渡者1人でも主人のためであれば基本通れる仕様ではあるらしい。しかし、ロクはあまり顔を門番に見せていない。また、私についてもイナトの顔パスで通っているため門番に顔を覚えられていない可能性があると言われた。
今後のためにも顔は売っておいた方がいいのかもしれない。
「あ、ロクから連絡だ」
すぐに通話ボタンを押すと、小鳥の声や草木の揺れる音が聞こえてきた。
「島には何かありそうだ。お前達も来て見た方がいいかもしれない」
ロクが言うには石造建築物があるらしい。中には入っていないが、建物の周りを人形のようなものが巡回していると言う。確かにそうなると何かを守っているとしか考えられない。
「穴を見つけた。道が続いていそうだからこれから入る。外に出られたらもう一度連絡する」
それだけ言ってまたロクは通信を切ってしまった。
「渡者待ちですねこりゃ。箱で待機しておきます?」
「そうしよう。僕は片付けておきたい書類がある」
「仕事熱心な上司がいると休まりませんねぇ……」
やれやれとルーパルドは肩をすくめたのだった。
◇
箱に入ってすぐにイナトは部屋へと直行。私とルーパルドはそれを見送り、息を吐く。
「私達はどうする? そもそもルーパルドは残ってる仕事あるの?」
「ほんの少しね。後でどやされそうだし、さっさと終わらせてくるとしますかね」
気だるそうにルーパルドは言った後、私を見つめた。
「応援ってことで頭撫でてくれると嬉しいんだけど」
「あれ? 拒否してなかった?」
「気が変わったの。ほら、団長に見つかる前に早く」
そう急かしながら、私が撫でやすいように私の前で屈む。
言われるがまま頭を撫でると、少し照れ臭そうに笑っている。自分でせがんだくせに。
犬みたいだなぁと思いながら両手でわしゃわしゃと撫でると、ルーパルドはくすぐったいのか「ふふ」と笑う。
「絶対それ犬撫でる時のやつでしょ」
「大型犬みたいな気がしてきたから。つい」
「リンになら飼われてもいいかもなぁ」
撫でていた私の両手を握り目を細めた。
「さて、そろそろ仕事しようかな。ありがとうございました」
去り際に私の頭を撫で足早に家へと入って行ってしまった。
私も家に入るかと歩き始めたところで、黒い装いをした人影が見えた。ロクはまだのようだし、おそらく召使だろう。
「召使さん?」
「こんにちは、救世主様」
「こんにちは。何を見ているんですか?」
召使が眺めていた方向は、広大な草原が広がっているだけだ。鳥も虫も、何もいない。
「救世主様のためにソファやベッドをここに置こうかと」
「外でゆっくりできるように?」
「ええ。箱の中はいつも晴れなので。ちなみに、外とは別に瞬時に夜にもできますよ」
夜にするには箱のメニュー画面を開き、箱の時間を調整すれば良いとのこと。
いつもは外の時間と連動しているが、私の気分次第で昼夜逆転してもいいわけだ。
便利な機能だが、あまり使うこともなさそうだな。
「天気を変えることもできますよ。雨の音でリラックスしたい時にどうぞ」
「へぇ、便利ですね」
その設定も箱のメニューを開いて、天気から調整が可能。この説明だけだととてもゲームっぽい。ちなみに雨が降ったりしても召使が置く予定のソファやベッドは濡れない仕様なのだとか。本当に便利だ。
後で2人に話してから試してみよう。ロクと合流した後にもやってあげよう。きっと興味を持つはずだ。
「それでは私はこれで。良い旅を」
「召使さん、ありがとうございます」
召使を見送った後、家へと入る。
ちょうどイナトが階段から降りてきていたようで、リビングで鉢合わせる。
「書類片付いたの?」
「ええ、ひとまず。ロクから連絡はきましたか?」
「まだだよ。あ、でもチャットは来てる」
内容は、洞窟は暗く冷えている。海の中にあるからか、海中にいるような感覚になる。足の生えた魚が時々走ってる……というツッコミたくなるようなことも書いてある。
「足の生えた魚とかいるの……」
「それはアシギョウオですね。希少生物らしいですよ」
かなり足が早く並大抵の人では捕まえられない。また、追い詰められた時には口から塩水を吐き相手を驚かせる。加えてその塩水は目を目掛けて発射してくるとか。
「会いたくないなぁ」
「心配しないでください。追いかけたりしなければ無害ですよ」
走りを止めてしまうと死んでしまうタイプらしい。そのため、イナトのような仕事をしていないと落ち着かない人のことをアシギョウオのような人とも言われるとか。
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「やめてください」
一緒にされるのは嫌だったようだ。
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