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21章
134.死の回避
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ワープポイントを駆使して急いで来たのだが、イナトは息をするのさえも苦しそうだ。
血を口から吐いたのだろう、口の端に血がついており、鎧にも血がついている。鎧はへこんでいたり割れてしまっていたりとかなり悲惨だ。
ナルに怪我はほとんどなく、擦り傷や打撲程度のようだ。イナトがほとんどの攻撃を受け止めたのだろう。
「団長! ……生きてます?」
「来てくれたんだ。一応、まだ息はあるんだけど」
ナルは私達の到着に一瞬安堵の表情を見せたが、虫の息であるイナトを見て、少しずつ言葉が小さくなっていく。
すぐに私はイナトへ治療魔法をかけたが、治りは遅い。不思議に思っていると、ナルが口をひらく。
「毒だと思う。解毒とかも試したけど、治らないんだ」
イナトが持っていた解毒薬入りの小瓶を私に見せて、ナルは言う。
毒からまず治そうと解毒魔法をかけたが、レベルが足りないのか解毒は失敗。
これではどれだけ治療魔法をかけても意味はないだろう。
「イナト、イナト? ……息はあるけど、もう聞こえてないのかな」
頬を触ってみるが、熱はもうほとんどない。口や鼻に指を持っていけばまだ僅かに呼吸はある。だが、反応はない。
手を握ってみても握り返す力も残っていないようだ。
どれだけ治療をしてみても微動だにしないHPバー。だからと言って治療魔法をやめれば毒が周りじわじわとイナトの体を蝕んでいく。
「……ねえ、ナル」
「察しはつくよ。僕も正直賛成」
即死道具を手に入れた私はある意味で無敵だ。ナルにも了承は得られたし、きっとこの死は目を瞑ってくれるだろう。
ナルは後ろで周りを警戒しているルーパルドを一瞥した。
「あの人遠ざけとこうか?」
「大丈夫。即死道具を貰ったんだ」
ひそひそと話す私とナルを見て、訝しげにこちらを見ているルーパルド。私はルーパルドから問いかけられる前に適当な道具を取り出してこう言う。
「道具を使ってみるね」
私は即死道具をメニュー画面で選択し、「使う」を押した――
視界が真っ白となり元の視界に戻った時には、イナトが出かける少し前だった。
痛くも苦しくもなかったと感動を噛み締めていたいところだが、今はそんなことを言っている暇はない。
「イナト、行く前にマリエの料理を食べておいて。これとこれ、あとこれかな」
アイテム欄から状態異常無効や一定時間、自動回復が付与される食べ物をチョイスする。
テーブルに並べられた料理を見て、イナトは少し苦笑。
「多くないですか?」
「念の為にいろいろ良い効果があるものを食べておいて欲しいんだよ。イナトなら食べ切れるでしょ?」
「まあ、食べられますけど……」
私からのお願いを断れないイナトは、それらを全て食べていく。
その間に役に立ちそうな道具をイナトに持たせる。
「行ってらっしゃい。もし何かあったら真っ先に連絡よろしくね」
「は、はい。もちろんです」
私があまりにも世話を焼くので少し動揺するイナトだったが、私に背中を押され家を出たのだった。
私の様子を静かに見ていたルーパルドは、イナトが去った後に問いかける。
「……リン、もしかして団長のために死んだ?」
「そんなことないよー。気になるならナルに聞けばいいよ」
「それ言うってことはあれだな? ナルと結託してるだろ?」
「してないしてない」
返し方をミスったなと思いつつ、引き攣った笑みでルーパルドを見た。
「はぁ……。団長には言わないから正直に話してくんない?」
「…………。イナトが魔族に襲われて死にかけた。いや、治療しても無理だったからあれはどう頑張っても死んでたよ」
詳細をルーパルドに説明すれば、ルーパルドはさらに大きなため息を吐いた。
「即死道具で、ねぇ。苦痛がなくても使ってほしくはないけど……団長が死ぬのは流石に俺も見過ごせない。あー、絶対団長に話したらダメな奴だなこれ……」
私に死ぬなとは言えず、だからと言って死んでありがとうなんてことも言えず。
ルーパルドは私になんて言葉をかけるのが適切なのか考えているようだ。何度もこちらを見て口を開いたかと思えばまた閉じて、目線を泳がせる。
「俺、こういう時いい感じの言葉思いつかないんだよなぁ」
ルーパルドは口元を触り、空に浮いている言葉を探すように目を動かしたり目を伏せたり。そうしてやっと決まったのか、私を見た。
「……とりあえず、そうだな。団長を救ってくれてありがとう。あの人がいなくなったらゲムデースの騎士団終わるレベルだから」
「死に戻りが役に立ったみたいでよかったよ」
「今回はそうだけど、あんまり簡単に死ぬのは今後も許さないからそこんとこ、よろしく」
「私だってほいほい死にたいわけじゃないんだけどね~」
ナルに渡していた通信機宛にいろいろ持たせといたとチャットを送る。
ナルはナルで対策をしてくれるだろうが、一応知らせておいた方がナルも安心だろう。
少ししてナルから、「魔族に出会った場所を避けて、試験を終わらせてみせるから安心して」とチャットが入っていた。
あとはイナトが無事に帰ってくるのを待つのみだ。
血を口から吐いたのだろう、口の端に血がついており、鎧にも血がついている。鎧はへこんでいたり割れてしまっていたりとかなり悲惨だ。
ナルに怪我はほとんどなく、擦り傷や打撲程度のようだ。イナトがほとんどの攻撃を受け止めたのだろう。
「団長! ……生きてます?」
「来てくれたんだ。一応、まだ息はあるんだけど」
ナルは私達の到着に一瞬安堵の表情を見せたが、虫の息であるイナトを見て、少しずつ言葉が小さくなっていく。
すぐに私はイナトへ治療魔法をかけたが、治りは遅い。不思議に思っていると、ナルが口をひらく。
「毒だと思う。解毒とかも試したけど、治らないんだ」
イナトが持っていた解毒薬入りの小瓶を私に見せて、ナルは言う。
毒からまず治そうと解毒魔法をかけたが、レベルが足りないのか解毒は失敗。
これではどれだけ治療魔法をかけても意味はないだろう。
「イナト、イナト? ……息はあるけど、もう聞こえてないのかな」
頬を触ってみるが、熱はもうほとんどない。口や鼻に指を持っていけばまだ僅かに呼吸はある。だが、反応はない。
手を握ってみても握り返す力も残っていないようだ。
どれだけ治療をしてみても微動だにしないHPバー。だからと言って治療魔法をやめれば毒が周りじわじわとイナトの体を蝕んでいく。
「……ねえ、ナル」
「察しはつくよ。僕も正直賛成」
即死道具を手に入れた私はある意味で無敵だ。ナルにも了承は得られたし、きっとこの死は目を瞑ってくれるだろう。
ナルは後ろで周りを警戒しているルーパルドを一瞥した。
「あの人遠ざけとこうか?」
「大丈夫。即死道具を貰ったんだ」
ひそひそと話す私とナルを見て、訝しげにこちらを見ているルーパルド。私はルーパルドから問いかけられる前に適当な道具を取り出してこう言う。
「道具を使ってみるね」
私は即死道具をメニュー画面で選択し、「使う」を押した――
視界が真っ白となり元の視界に戻った時には、イナトが出かける少し前だった。
痛くも苦しくもなかったと感動を噛み締めていたいところだが、今はそんなことを言っている暇はない。
「イナト、行く前にマリエの料理を食べておいて。これとこれ、あとこれかな」
アイテム欄から状態異常無効や一定時間、自動回復が付与される食べ物をチョイスする。
テーブルに並べられた料理を見て、イナトは少し苦笑。
「多くないですか?」
「念の為にいろいろ良い効果があるものを食べておいて欲しいんだよ。イナトなら食べ切れるでしょ?」
「まあ、食べられますけど……」
私からのお願いを断れないイナトは、それらを全て食べていく。
その間に役に立ちそうな道具をイナトに持たせる。
「行ってらっしゃい。もし何かあったら真っ先に連絡よろしくね」
「は、はい。もちろんです」
私があまりにも世話を焼くので少し動揺するイナトだったが、私に背中を押され家を出たのだった。
私の様子を静かに見ていたルーパルドは、イナトが去った後に問いかける。
「……リン、もしかして団長のために死んだ?」
「そんなことないよー。気になるならナルに聞けばいいよ」
「それ言うってことはあれだな? ナルと結託してるだろ?」
「してないしてない」
返し方をミスったなと思いつつ、引き攣った笑みでルーパルドを見た。
「はぁ……。団長には言わないから正直に話してくんない?」
「…………。イナトが魔族に襲われて死にかけた。いや、治療しても無理だったからあれはどう頑張っても死んでたよ」
詳細をルーパルドに説明すれば、ルーパルドはさらに大きなため息を吐いた。
「即死道具で、ねぇ。苦痛がなくても使ってほしくはないけど……団長が死ぬのは流石に俺も見過ごせない。あー、絶対団長に話したらダメな奴だなこれ……」
私に死ぬなとは言えず、だからと言って死んでありがとうなんてことも言えず。
ルーパルドは私になんて言葉をかけるのが適切なのか考えているようだ。何度もこちらを見て口を開いたかと思えばまた閉じて、目線を泳がせる。
「俺、こういう時いい感じの言葉思いつかないんだよなぁ」
ルーパルドは口元を触り、空に浮いている言葉を探すように目を動かしたり目を伏せたり。そうしてやっと決まったのか、私を見た。
「……とりあえず、そうだな。団長を救ってくれてありがとう。あの人がいなくなったらゲムデースの騎士団終わるレベルだから」
「死に戻りが役に立ったみたいでよかったよ」
「今回はそうだけど、あんまり簡単に死ぬのは今後も許さないからそこんとこ、よろしく」
「私だってほいほい死にたいわけじゃないんだけどね~」
ナルに渡していた通信機宛にいろいろ持たせといたとチャットを送る。
ナルはナルで対策をしてくれるだろうが、一応知らせておいた方がナルも安心だろう。
少ししてナルから、「魔族に出会った場所を避けて、試験を終わらせてみせるから安心して」とチャットが入っていた。
あとはイナトが無事に帰ってくるのを待つのみだ。
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