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連れ去られた
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頬にあたる感触が冷たい事に気づく。
頭がボーッとして、ゆっくりと目を開ける。辺りは暗くって何やら揺れていて、そこに自分は置かれている状態だと分かる。
何があったのかと、まだハッキリしない頭で思い出してみる。
街へ薬草を売りに来て……でも街はボロボロになっていて人もあまりいなくて……それから布屋から音がして……
段々と思い出してきた。そうだ。自分は捕まったのかも知れない。眠っていたのは眠らされたから……
ハッとして起き上がり、辺りを見渡す。薄暗い中、自分以外の存在がいた事に気づく。そして、目の前には鉄柵が見える。どうやら檻の中に入れられたようだとウルスラは理解した。
そこには自分と同じ位の子供が5人いて、皆下を向いて膝を抱えて暗い顔をしていた。ガタガタと揺れていて、ここは馬車の中で、今は何処かへ向かっているんだろうと推測できる。
こんな状況は初めてのウルスラであっても、これは良くない事だと容易に分かる程に、ここにいる人達はグッタリした様子で表情は暗かった。
何処に向かっているのか、何故こんな所に入れられているのか、聞きたくても聞けない。上手く言葉が出て来ない。声を発する事さえ上手く出来そうにない。
そう言えば、ルーファスと夢で話す以外、誰とも話す事がなかったのをこうなって改めて気づいた。
いつもどう話していたのか、どう話せば良いのか分からなくて、上手く言葉は出てこなかった。
他の子達も何も喋らずに、誰もが悲愴感漂う様子でじっとしていた。ウルスラも同じように、座って膝を抱えて大人しくする事にした。
暫く勢いよく馬車は走ってゆく。ウルスラ達の不安な気持ち等関係ないとばかりに止まることなく進んでゆく。
そうやって長い時間走っていって、それから少しずつスピードが落ちてゆき、やがて馬車は止まった。目的地に着いたのだろうか。何やら話し声が聞こえ、誰かが歩く音がする。その足音が自分達の近くに来た。
「なんだ、これだけか。痩せた奴等ばっかりだな。ちゃんと働けんのか?」
「働き潰しゃいいさ。人が足りねぇからな。こんなんでも仕方ねぇ」
「まぁな。ん? 一人足輪着けてんじゃねぇか。逃亡奴隷か?」
「あぁ、そうかもな。だから安く買い叩けたぜ。まぁ、ここじゃこの奴隷の持ち主も気づかねぇだろ」
「そうだな。しかし、良い身なりだな。足輪も宝石着いてて高価みてぇだし。貴族かどっかの奴隷だったか? この足輪は売っ払えば良い額になりそうだな」
「奴隷の足輪はそう簡単には取れねぇよ。宝の持ち腐れだぜ。まぁ労働力があればそれで良いって事にしてやるか」
「だな。ガッチリ働いて貰うとしよう」
左の足首に足輪が着けられてあるという事は、その者は奴隷で持ち主がいるという事だった。そんな事は当然知らなかったウルスラは、周りの子供を見て、足首に足輪が無いのを見て、それが自分の事だと気づく。
そうか……お母さんは私を奴隷と思っていたのか……
そう考えれば納得のいく事ばかりだった。一緒のテーブルで食事をする事も許されず、エルヴィラより遅く寝て、エルヴィラより早く起きなければならなかった。家事も殆どをこなし、触れて貰える事もなく、ただ怒りで殴られる日々……
それでもウルスラにはエルヴィラとの日々は大切な思い出だった。いつか笑って貰おうと努力した事は報われなかったけれど、それでもエルヴィラを母親だと、今でも思っていたかった。
男達の言った事を掻き消すように、頭を振って唇をギュッと瞑る。
そうじゃない。そうじゃなかった筈だ。こんな人達に自分達親子の事なんか分かる訳がない。そうは思っても、悲しさが胸に込み上げてきそうになる。それを何とか我慢する。
男達に檻から出るように言われ、仕方なく一人ずつ檻から出て馬車を降りる。ウルスラが降りようとしたけれど、一人ガタガタ震えて泣いて動けない子がいた。
その子は自分より幼い女の子で、怖くて動けないんだろうと思われた。
ウルスラはその子の手を取って、一緒に出ようとしたけれど、女の子は頭を横に何度も振って嫌だと訴える。
もちろん、ウルスラだってこんな所は嫌だし、男達の言うことなんか聞きたくはない。だけどそうしないと、何をされるか分からないから、仕方なく言われた通りに行動するのだ。
このまま出て行かなければ、仕方ないで終わる事なく、きっと酷い目に合う。それが分かっているからウルスラは従うようにしている。
そう思って手を引っ張るけれど、女の子は段々と泣き叫ぶようになって、ジタバタと手や足を振り回して体で拒絶しだした。
これにはウルスラも困ってしまってどうすれば良いのか分からずにいると、見ていた男がやって来て、女の子の髪を鷲掴みにしてそのまま引き摺り出した。
更に泣き叫ぶ女の子は髪を掴まれたまま、男に連れていかれる。ウルスラは急いで馬車から降りて、その子の元まで駆けて行った。
「ったく、うるせぇなぁ! これだからガキは嫌なんだよ! 鬱陶しい!」
男はそう言うと、女の子を投げ飛ばした。投げられた女の子は地面に叩き付けられ、転げていった。慌ててウルスラはその子に駆け寄る。
火が着いたように泣き叫ぶ女の子を抱き起こそうとしたところで、今度はウルスラが襟首を後ろから掴まれて投げられた。
「おい、そんなに痛めつけんなよ。使えなくなるだろ?」
「最初が肝心なんだよ。コイツらはもうここから逃げらんねぇって教え込まねぇといけないからな。おい! グズグズしてたらおしおきだぞ! 早くこっちへ来い!」
投げられた時に背中を打って、呼吸がしづらくなってなかなか起き上がれなかったけど、ウルスラは何とか立ち上がってまだ泣いて起き上がろうとしない女の子の元へヨロヨロと歩み寄った。
女の子の腕を掴んで何とか立たせ、腕を支えたまま言われた通りに男達の元へ行く。
他の子達は分かっているのか諦めたのか、抵抗せずに言われた通りに従っている。ここが何処かも分からないし、何をさせられるかも分からない。大人達は多くいて、子供の力ではどうにも出来ないとウルスラは理解した。でも、この子はまだ分からないのだろう。ただ思うがままに拒絶するだけだ。
でもこんな態度でいると、どうなるかはウルスラは知っている。だから今は大人しくして様子を見る。
外は陽が落ちてきていて、辺りは薄暗くなってきている。より暗く見える程に大きな山脈が辺り一面に見えていて、それが陽を遮っていた。
ここは採掘場であり、鉱物や化石等を採掘するのに多くの人々が働いている。
特に要求されるのが、化石にある魔石を採取する事だった。
ここには絶滅したであろう生物の化石が多くあるとされている。その化石から取れる魔石が高値で取引されている。
その為、化石が見つかった場所では我先にと採掘に多くの者達がやって来るのだが、この一帯はまだ採掘場として認識されていない場所だった。
そこをある富豪が買い取り、採石権を独占したのだ。
ここでは強制的に昼夜問わず働かされている者が多くいた。幼い子供から老人まで、様々な人達が働いている。
男達に連れて行かれた所は、採掘場の麓にある木でできた今にも崩れ落ちそうな程に傷んだ建物だった。そこで働く人達はこの場所で住んでいるようで、広く何もない部屋が幾つかあって、簡単に部屋割りされた場所で大人数で雑魚寝するような状態となっている。
そこにはグッタリと疲れた人達がそこここに横たわっていて、動く気力もなさそうだった。
ここでこの人達と自分は働く事になるのか……
ウルスラは誰に言われずとも、そう理解したのだった。
頭がボーッとして、ゆっくりと目を開ける。辺りは暗くって何やら揺れていて、そこに自分は置かれている状態だと分かる。
何があったのかと、まだハッキリしない頭で思い出してみる。
街へ薬草を売りに来て……でも街はボロボロになっていて人もあまりいなくて……それから布屋から音がして……
段々と思い出してきた。そうだ。自分は捕まったのかも知れない。眠っていたのは眠らされたから……
ハッとして起き上がり、辺りを見渡す。薄暗い中、自分以外の存在がいた事に気づく。そして、目の前には鉄柵が見える。どうやら檻の中に入れられたようだとウルスラは理解した。
そこには自分と同じ位の子供が5人いて、皆下を向いて膝を抱えて暗い顔をしていた。ガタガタと揺れていて、ここは馬車の中で、今は何処かへ向かっているんだろうと推測できる。
こんな状況は初めてのウルスラであっても、これは良くない事だと容易に分かる程に、ここにいる人達はグッタリした様子で表情は暗かった。
何処に向かっているのか、何故こんな所に入れられているのか、聞きたくても聞けない。上手く言葉が出て来ない。声を発する事さえ上手く出来そうにない。
そう言えば、ルーファスと夢で話す以外、誰とも話す事がなかったのをこうなって改めて気づいた。
いつもどう話していたのか、どう話せば良いのか分からなくて、上手く言葉は出てこなかった。
他の子達も何も喋らずに、誰もが悲愴感漂う様子でじっとしていた。ウルスラも同じように、座って膝を抱えて大人しくする事にした。
暫く勢いよく馬車は走ってゆく。ウルスラ達の不安な気持ち等関係ないとばかりに止まることなく進んでゆく。
そうやって長い時間走っていって、それから少しずつスピードが落ちてゆき、やがて馬車は止まった。目的地に着いたのだろうか。何やら話し声が聞こえ、誰かが歩く音がする。その足音が自分達の近くに来た。
「なんだ、これだけか。痩せた奴等ばっかりだな。ちゃんと働けんのか?」
「働き潰しゃいいさ。人が足りねぇからな。こんなんでも仕方ねぇ」
「まぁな。ん? 一人足輪着けてんじゃねぇか。逃亡奴隷か?」
「あぁ、そうかもな。だから安く買い叩けたぜ。まぁ、ここじゃこの奴隷の持ち主も気づかねぇだろ」
「そうだな。しかし、良い身なりだな。足輪も宝石着いてて高価みてぇだし。貴族かどっかの奴隷だったか? この足輪は売っ払えば良い額になりそうだな」
「奴隷の足輪はそう簡単には取れねぇよ。宝の持ち腐れだぜ。まぁ労働力があればそれで良いって事にしてやるか」
「だな。ガッチリ働いて貰うとしよう」
左の足首に足輪が着けられてあるという事は、その者は奴隷で持ち主がいるという事だった。そんな事は当然知らなかったウルスラは、周りの子供を見て、足首に足輪が無いのを見て、それが自分の事だと気づく。
そうか……お母さんは私を奴隷と思っていたのか……
そう考えれば納得のいく事ばかりだった。一緒のテーブルで食事をする事も許されず、エルヴィラより遅く寝て、エルヴィラより早く起きなければならなかった。家事も殆どをこなし、触れて貰える事もなく、ただ怒りで殴られる日々……
それでもウルスラにはエルヴィラとの日々は大切な思い出だった。いつか笑って貰おうと努力した事は報われなかったけれど、それでもエルヴィラを母親だと、今でも思っていたかった。
男達の言った事を掻き消すように、頭を振って唇をギュッと瞑る。
そうじゃない。そうじゃなかった筈だ。こんな人達に自分達親子の事なんか分かる訳がない。そうは思っても、悲しさが胸に込み上げてきそうになる。それを何とか我慢する。
男達に檻から出るように言われ、仕方なく一人ずつ檻から出て馬車を降りる。ウルスラが降りようとしたけれど、一人ガタガタ震えて泣いて動けない子がいた。
その子は自分より幼い女の子で、怖くて動けないんだろうと思われた。
ウルスラはその子の手を取って、一緒に出ようとしたけれど、女の子は頭を横に何度も振って嫌だと訴える。
もちろん、ウルスラだってこんな所は嫌だし、男達の言うことなんか聞きたくはない。だけどそうしないと、何をされるか分からないから、仕方なく言われた通りに行動するのだ。
このまま出て行かなければ、仕方ないで終わる事なく、きっと酷い目に合う。それが分かっているからウルスラは従うようにしている。
そう思って手を引っ張るけれど、女の子は段々と泣き叫ぶようになって、ジタバタと手や足を振り回して体で拒絶しだした。
これにはウルスラも困ってしまってどうすれば良いのか分からずにいると、見ていた男がやって来て、女の子の髪を鷲掴みにしてそのまま引き摺り出した。
更に泣き叫ぶ女の子は髪を掴まれたまま、男に連れていかれる。ウルスラは急いで馬車から降りて、その子の元まで駆けて行った。
「ったく、うるせぇなぁ! これだからガキは嫌なんだよ! 鬱陶しい!」
男はそう言うと、女の子を投げ飛ばした。投げられた女の子は地面に叩き付けられ、転げていった。慌ててウルスラはその子に駆け寄る。
火が着いたように泣き叫ぶ女の子を抱き起こそうとしたところで、今度はウルスラが襟首を後ろから掴まれて投げられた。
「おい、そんなに痛めつけんなよ。使えなくなるだろ?」
「最初が肝心なんだよ。コイツらはもうここから逃げらんねぇって教え込まねぇといけないからな。おい! グズグズしてたらおしおきだぞ! 早くこっちへ来い!」
投げられた時に背中を打って、呼吸がしづらくなってなかなか起き上がれなかったけど、ウルスラは何とか立ち上がってまだ泣いて起き上がろうとしない女の子の元へヨロヨロと歩み寄った。
女の子の腕を掴んで何とか立たせ、腕を支えたまま言われた通りに男達の元へ行く。
他の子達は分かっているのか諦めたのか、抵抗せずに言われた通りに従っている。ここが何処かも分からないし、何をさせられるかも分からない。大人達は多くいて、子供の力ではどうにも出来ないとウルスラは理解した。でも、この子はまだ分からないのだろう。ただ思うがままに拒絶するだけだ。
でもこんな態度でいると、どうなるかはウルスラは知っている。だから今は大人しくして様子を見る。
外は陽が落ちてきていて、辺りは薄暗くなってきている。より暗く見える程に大きな山脈が辺り一面に見えていて、それが陽を遮っていた。
ここは採掘場であり、鉱物や化石等を採掘するのに多くの人々が働いている。
特に要求されるのが、化石にある魔石を採取する事だった。
ここには絶滅したであろう生物の化石が多くあるとされている。その化石から取れる魔石が高値で取引されている。
その為、化石が見つかった場所では我先にと採掘に多くの者達がやって来るのだが、この一帯はまだ採掘場として認識されていない場所だった。
そこをある富豪が買い取り、採石権を独占したのだ。
ここでは強制的に昼夜問わず働かされている者が多くいた。幼い子供から老人まで、様々な人達が働いている。
男達に連れて行かれた所は、採掘場の麓にある木でできた今にも崩れ落ちそうな程に傷んだ建物だった。そこで働く人達はこの場所で住んでいるようで、広く何もない部屋が幾つかあって、簡単に部屋割りされた場所で大人数で雑魚寝するような状態となっている。
そこにはグッタリと疲れた人達がそこここに横たわっていて、動く気力もなさそうだった。
ここでこの人達と自分は働く事になるのか……
ウルスラは誰に言われずとも、そう理解したのだった。
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