慟哭の時

レクフル

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第一章

そこには

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レクス達の元へ戻ると、

「早かったんだな!」

と言ってレクスが私の元までやって来た。


彼は本当に人懐こい。


何故か、他の子達もぞろぞろ集まってきた。

「そろそろ帰るよ。」

そう伝えると

「えっ!まだ早くないか?!まだ居ろよ!」

と、残念そうにレクスが言う。

「エミーはそろそろ寝る時間じゃないのか?それに、皆も遅くなると明日の仕事ができなくなるよ。」

腰を屈めて視線を低くして、エミーの眠そうな目を見ながら、他の皆にもそう言った。

「……わかった。じゃあ、俺、送っていくぞ!」

「レクス、大丈夫だ。皆のそばにいてやった方がいい。」

「あ、うん……そうか……分かったよ。」
 
「今日はとても楽しかった。こんなに楽しかったのは、生まれて始めてだったよ。」

「大袈裟だな!でも、俺達も楽しかったぞ!また来てくれよな!」

皆も口々に、楽しかった、美味しかった、また来て、等と言ってくれる。


そうやって別れて、私は宿へと帰っていった。


きっと、名残惜しいのは私の方だろう。


本当に、こんなに楽しかったのは生まれて始めてなんだ。


帰り道に独り言の様に呟きながら、今日の出来事を思い浮かべていた。


シスターには分かっただろう。


私が男ではないと言うことが。


しかし、彼女はきっとこの事を他の誰にも言わないだろう。


もし言ったとしても、どうにか出来る。


なるべくなら、そうならない様にしたいのだが。


そんな事を考えながら歩くと、宿に着いていた。



宿屋の主人が、

「お帰りなさい!」

と声をかけてくる。

「風呂に入りたいのだが、貸しきる事は出来るか?」

そう言って、銀貨を1枚差し出す。

「あ、はい! もちろん大丈夫です!今から用意しますんで、少ししてから1階奥の浴場に来てください!」

「分かった。」


そう言って、2階にある部屋に一旦戻る。


外套を脱ぎ、鞄を置く。

腰のベルトを外して剣を置く。

首に巻いている口まで隠す布はそのままに、少ししてから部屋を出る。

念のために外から部屋に魔法で結界を張る。

少ししてから一階に降りると、宿屋の主人が

「あ、アシュレイさん、こちらですよ!」

と言って、浴場まで案内してくれた。

「ではごゆっくり!」

浴場の鍵を私に手渡し、受付へと戻って行った。

鍵を開けて中に入る。

扉を閉めてから鍵をかけ、強めの結界を張る。

首に巻いた布を外す。

それから革手袋を外す。

肩当てを外すと、華奢だと思われる肩があらわれる。

胸当てを外して服を脱ぎ、胸を押さえつける様に巻いていた布も外す。

ロングブーツを脱ぐと、少し背が低くなった。

身に纏っているものは母から譲られたであろう首飾りのみになった。



そこには、絶世の美女と言っても過言ではない、アシュレイの姿があった。


しかし、この姿は誰にも知られてはいけない。






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