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第一章
女騎士
しおりを挟むクオーツと別れて、宿に向かう。
クオーツは私を酔わせようとかなり飲ませて来たが、私は酔わないのだ。
ある程度の毒等の状態異常にも耐性があるようなので、酒に酔うということがない。
先にクオーツがつぶれた。
仕方なく、熊のオヤジに支払いを済ませ、チップを渡してクオーツの事を頼んで、私は帰らせて貰うことにした。
この街に来て数日だが、楽しい事ばかりだ。
皆で食べる食事は美味しいということも、笑いすぎると頬が疲れるっていうことも、初めて知った。
この街では楽しい事ばかりなのだ。
だから余計に怖くなる。
宿に着くと、受付に人だかりが見えた。
この国の騎士達だろうか。
綺麗な鎧に身を包んでいる、数人の騎士と思わしき出で立ちの人達がこの宿に泊まるようだ。
ここはこの街一番の宿屋だ。
しかし騎士達は、この宿が気にくわない様で、口々に文句を言っていた。
きっと、貴族と言われる人達なんだろうな。
そう思いながら、その横を通るときに見えた女騎士。
とても綺麗な深く青い髪をした、見目麗しい容姿の女性がそこにはいた。
なぜか彼女の事が気になった。
凄く綺麗な人だから気になったのか。
よくは分からないが、気にしていない態度で、受付に鍵をもらうべく騎士達の横から受付に名前を言う。
その間、騎士達は私の事を見定める様にジロジロと見てくる。
全く遠慮しないんだな。
私は彼女を見るときは遠慮しながら見たのに。
そんな不満を胸に、鍵を受け取り部屋へと進む。
この街に騎士達が何の用があるんだろうか。
そう思いつつも、そんなことは関係ないとばかりに今日の事を思い返す。
朝はアイリーンには申し訳ない事をした。
これからは、もっと気をつけて行動しなければならない。
クオーツとの食事は楽しかった。
彼の屈託のない明るい性格は、周りを和ませてくれる。
しかし、彼はソロで活動しているそうだ。
前はパーティーを組んでいたらしいが、メンバーの女性に好意を持ち、ようやく告白して付き合えることになったそうだが、実はその女性はパーティーメンバーの男性陣全員と付き合っていたそうだ。
それが発覚したときに男達で乱闘が勃発。
もうパーティーに属するのは懲り懲りだと、さっき飲みながら言っていた。
それはパーティーを組むのがいけないのではなくて、その女性が悪いんだろう。
そう言っても、可愛くて優しくて、良い子だったんだよーって頭を抱えてた。
まだ未練があるのかも知れないな。
それからはソロに徹しているそうだ。
女性の冒険者は少ない。
冒険者と言うのは危険な仕事だ。
ギルドに登録する際のテストで、Gランクとなった女性の殆どが冒険者の道を諦める。
冒険者になっていくのは、何らかの才能がある女性が殆どだ。
それでも結婚したら大半が引退をしていくので、必然的に女性がいなくなっていく。
そして、女性の冒険者はモテる。
女性の大体がパーティーに所属するが、パーティーの中に1人程しか女性はいない。
長い時間一緒に行動をし、生死をかけて戦うのだ。
そこに団結力と信頼感が生まれるが、異性には愛情が生まれても不思議ではない。
なので、こう言うトラブルはありがちな事なんだそうだ。
意外とメンタルが弱かったんだな。
クオーツ。
その女性を巡って男達で乱闘になって、クオーツが他のヤツらをノシたらしいのだが(その時は武器も魔法も使わないのがセオリーらしい)、その女性は倒れている一人の男に抱きつき泣いてたそうだ。
自分が本命じゃなかったことにショックを受けた瞬間だったと、悔しそうに酒を煽りながら言っていた。
思い出すと今でも笑ってしまう。
人の不幸を笑うのはどうかと思うが、クオーツの物言いがとにかく可笑しかったのだ。
ベッドに横たわり、自分がニヤついてるのが分かる。
自分がこんなに笑うことができるなんて。
今日はレクスに会わなかったな。
会いたかったな。
明日は会いに行こうか。
そう考えていたら いつの間にか眠っていた。
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