慟哭の時

レクフル

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第三章

少女との出会い

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レクスと2人、南へ向かう。

この辺り一帯は、ある程度整備がされている森だ。

夜が来ると、テントを張って野宿をする。

私が眠っている間は、眠らないレクスが見張りをすると言ってくれる。

結界を張れば、魔物や盗賊の類いからは問題なく守れるが、私はそれもあまりしないようにしている。

常に緊張感を持って旅に挑まなければ、安心した時点で足を掬われる事になりかねない。

よっぽど疲れていたり、危険地域でない限り、極力寝るときに結界は張らずにいるようにしている。

しかし、今回はレクスが見張りを買って出てくれた。

それに甘えることにする。

「アッシュは、もっと甘えて良いと思うぞ!
何でも1人で背負い込み過ぎだぞ!」

「そんなつもりはないんだけどな……」

「俺から見たらそうなんだぞ!」

「そう……なのか?」

そんな事を言いながら、火をおこして食事を作ることにする。

食べられる野草を採ったので、持っていた牛鴨の肉を細かく切って、香草と塩と、ヘクセレイの街で買っておいた芋と、赤く甘味と酸味のあるトムトと言う野菜を細かく切って、牛鴨のミルクと混ぜて煮込むと、栄養満点の煮込みスープが出来上がった。

因みに、空間魔法に入れると、その空間では時間が止まっているので、鮮度が落ちて腐ると言うことはない。


「スゴく美味しそうだな!」

「レクスの分もあるよ。」

「でも俺、食べられないぞ……?」

「直接食べられなくても、味を感じる事は出来ると思うよ。
試してみて?」

「あ、うん……」

私はレクスの分も、木のボウルにスープを入れ、パンも添えてレクスの前に差し出した。


その時、遠くで気配を感じた。


私が気配のした方に目をまると、レクスも何事かと同じ方向を見るが、レクスには何も分からなかった。


叫ぶ声が……聞こえる……


誰かが襲われている?



「レクス!ちょっと行ってくる!」

「え?!どうしたんだ!俺も一緒に行くぞ!」



一旦火を消し、急いで声のする方に走っていく。


300m程走った所に、山賊と思われる男達3人と、少女が1人いた。


「逃げ足の早い女だな。」

「もう観念しろよ。可愛がってやるからよ。」

「そっち回り込め!やっと捕まえられるぞ!」


下衆な笑いを含みながら、男達はジリジリと少女を囲み、近寄っていく。

少女は怯え、震えて泣いていた。

私が雷魔法で男達を感電させると、何も言わずにその場で3人共が呆気なく倒れた。

何か攻撃を受けた痕跡もなく、声も上げずに突然倒れだしたので、少女は何が起こったのか訳も分からず、ただ呆然と涙を流したまま、立ち竦んでいた。


「大丈夫か?」

少女がその声にビックリして、声がした方を見て、一瞬で固まった様に動かなくなった。

「何もされていないか?」

聞かれて、ハッとして少女は、

「は、はい!大丈夫です!あ、あの、なんでか、突然倒れちゃって、ビックリしてっ!」

「どこも何もないなら良かった。しかし、こんな夜に、君みたいな軽装の少女が、何故こんな所に?」

「それは……」

「まぁ、言いたくないならいい。この男達は知り合いか?」

「いえっ!知らない人達です!突然襲って来られそうになったから、逃げてたんです!」

「そうか、分かった。ではひとまず、その男達の処理をしよう。」

「えっ!あのっ、この人達、どうしちゃったんですか?死んじゃったんですか?」

「いや、殺してはいないよ。魔法で気絶させただけだ。このまま放置してても良いが、魔物だかが現れたら喰われるな…それを望むなら放置するが?」

「えっと、どうしよう…また私を襲わなかったら良いんですけど、殺すとかは…怖いです……」

「分かった。」

私は男達に闇魔法で数日間の記憶を消す事にし、1日程の効果の結界を張った。

目が覚めても結界から出られないし、魔物に襲われることもない。
数日間の記憶がなくなるから、少女の事も忘れるだろう。


しかし、こんな所に少女1人で放っておけない。
それに、この少女に私は関心がある。

なぜなら、少女は銀髪だったからだ。

「どこかへ行くつもりだったのか?何にせよ、君1人でここで夜を過ごすのは危険だと思うが?」

「その、えっと…」

「私はこの近くで野宿をしている。良ければ君も来るか?」

「っ!良いんですか?!」

「この辺りは、多くはないが魔物も出る。その軽装では夜は寒いだろうしね。」

「ありがとうございます!よろしくお願いします‼️」

勢いよく少女は頭を下げた。

「本当にアッシュはお節介だよなぁー。」

レクスは私の少し後ろを歩きながら言う。

「仕方ないだろ?」

「え?何がですか?」

「あ、いや、何でもない。」

レクスと話が出来なくなってしまったな。


そうして、3人でテントの場所まで戻ったのだった。



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