慟哭の時

レクフル

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第三章

人探しの旅

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「ディルク?!」

「…アシュレイか?」

「何してるんだ!こんな所で!」

「アシュレイこそ、何してるんだ!こんな所で!」


お互い顔を見合わせて、それから2人で笑いあった。

こんな所で囚われているなんて!

意外過ぎてなにか言うよりも、笑いが先に出て止まらなかった。

ディルクも笑っていたが、そんな私を見て


「元気になったんだな。」

と、嬉しそうに言った。

「そうだ!そ、その節はっ、ありがとうございました!」

私は勢いよく頭を下げる。

またハハハって笑って

「元気になったんなら良い。良かったよ。」

ディルクは微笑んで言う。

「ディルク!俺もいるぞ!久しぶりだ!」

「レクス!久しぶりだな!」

「本当に見えるんだな…」

「探し物は見つかったみたいだな。」

「貴方のお陰だ。ディルク。感謝している。」

「俺もだぞ!ディルク、ありがとな!」

「良かったな。」


3人で和気あいあいとしてしまう。

ここが牢屋だとは思えない位、騒いでしまった。

3人で座って、これまでの事を話していた。


ディルクはどうしてここにいるのかと言うと


探している人は、ディルクの生き別れた弟だった。

色々情報を得ては、その場所まで行き確認しながら、次の場所まで赴く。

ディルクの求めているのは、銀髪の情報だった。

これは私も驚いた。

銀髪の部族を探していたのは、ディルクの母親代わりの女性が病気で亡くなる前に、銀髪の人の事を話していたからだったそうだ。

あまり多くは語らなかったそうだが、幼い頃に亡くなった母親の代わりに世話をしてくれていた女性が、亡くなる前に初めてディルクに弟がいたことを言ったそうだ。

その弟と銀髪の人に、何らかの関係があるらしかった。
何の関係があるのかは全く分かっていないそうだが……

それからディルクは、弟を探して旅をする事にしたと話した。

銀髪の人の事は、なかなか情報が得られなかったようだ。

これは私も母探しで分かる。

やっと、銀髪の人を見たと言う情報を得て、この辺りにやって来たらしい。

この辺りには盗賊が多いと感じ、捕まえて理由を聞いたところ、銀髪の者を捕まえたら、ある国で大金が貰えると言ったそうだ。

これはかなり秘密裏にされている情報のようで、他の国には銀髪は何の価値もないが、その国では密かに探され続けているのだそうだ。

公に出来ない情報だから、兵を出すことも出来ない。
冒険者に依頼として出す事も出来ない。
としたら、裏で動く勢力に頼るしかない、と言った事のようだった。
どうやら、この辺りで銀髪の人を見たと言う情報が漏れているようだ。


だから盗賊の類いが多かったのか……


それから、迷いの森で数日間、迷いに迷いながら、やっと村までたどり着いたら、着いた途端に拘束されたと笑っていた。

それが、二日前の事だと笑いながら言っていた。

笑い事では無いような気がするが……


「解放される気配はないのか?」

「どうだろうな?俺は只の不審者だからな。アシュレイみたいに、誰かを助けた訳じゃないから、信用されることもないだろうしな。」

「じゃあどうするんだ?このままここにいるつもりなのか?」

「心配してくれてるのか?」

「いや、まぁ、そりゃそうだろう?」

「まぁ、なんとかなるさ。」


なんだかお気楽だなぁ。

私は心配してるのに。


「あ、そうだ!」


思い出して、私は借りていたディルクの外套を出した。


「ありがとう。次に会ったら返そうと思ってた。」

「また会えるなんて、旅人同士にはなかなか無い事だな。」

「本当だ。でも、なんでだろう?またディルクとは会えるつもりでいた。」

「ハハ、そうだな、俺もなんかそんな気がしてたよ。」

「俺もだぞ!」

また3人で笑いあった。


この雰囲気、いいな。


すごく、すごく、いいな……



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