133 / 363
第四章
潜入
しおりを挟むエリアスと一緒に、会場入口に進んで行く。
今日は魔力制御はなしで、魅了効果は発揮させる事にしている。
エリアスと事前に、自分の持つ能力をある程度話し合った。
流石に全ては話していないが、魅了の効果は全快にした方が良いと言われたので、その通りにする。
エリアスは魔眼持ちで、発動させると目が合った者は幻覚が見えるのだと言う。
どんな幻覚かは、受けた人が最も恐怖に感じているモノが見えるらしいので、何が見えているのかはエリアスにも分からないらしい。
この前の私との戦闘で、右目の視力が戻っていないと言っていたので、光魔法で浄化してみると回復した。
実はエリアスには光魔法と言いながら、コッソリ回復魔法を発動させたのだが、バレずに済んでいる様だ。
それから、魔法を無効化できる能力があるらしい。
これは自分で無効化するかどうかをコントロールできると言っていた。
ただ、相性の悪い系統の魔法は完全に無効化できないそうだ。
エリアスは闇との相性が悪いらしく、しかもかなり強力な魔法だったから、あの時は本当にヤバかった、と話していた。
受付でエリアスが招待状を見せる。
それを確認している作業員と目が合うと、私はニッコリ微笑んだ。
それを見た作業員は、暫く呆然と口を開けて私を見続けていた。
そのまま前を通り抜け、奥へと進んで行く。
「俺もさっき、あんな感じだったのかな……」
「えっ?さっき?」
「アシュ…ラリサのその姿を初めて見た時……」
「どうだったかな……?」
エリアスの顔を覗き込みながら言うと
「俺にも魅了かけてんじゃねぇよ!」
と、ちょっと怒った顔をしていた。
「エリアスには私の魅了は効かないみたいだ……けど?」
「分かってるよ……」
そんな事を話しながら進むと、一階のパーティー会場にたどり着いた。
そこでウェルカムドリンクを手渡される。
ウェイターからニッコリ笑って受け取ると、ウェイターはその場から動かなくなった。
周りのあちらこちらから視線が向けられているのが感じられる。
「エリアス、色んな所から凄く見られている。何か感づかれたのかな?」
「いや、感づかれたとか、そんなんじゃねぇ。」
「じゃあ、魅了が効きすぎているのかな?」
「それもあるだろうが…魅了効果が無くても…だろうな……」
「どういう事?」
「ホント、鈍感だな、ラリサは。」
「え?」
エリアスが私の耳元に口を近づけて
「アシュレイが綺麗だからだろ。」
そう呟いた。
その言葉に、暫く恥ずかしくて顔を上げられなくなった。
「エリアス、あんまりアッシュに近づきすぎんな!」
「これも作戦だろ。」
後ろから付いてきているレクスに、エリアスはちゃんと答えている。
最初の印象と違って、エリアスは良い奴だ。
パーティー会場では楽器の演奏や、流行りの劇団の芝居も催されるので、とても賑わっていた。
あちらこちらで綺麗なドレスを来た女性同士、紳士らしい男性同士が挨拶を交わしていたり、商人と思わしき人が名刺を渡していたりと、社交の場としても賑わっていた。
こんな世界があるんだな……
今まで踏み込んだ事の無い世界に、思わず目を奪われてしまう。
しかし、こんなことをしている場合じゃない。
終始楽しそうに微笑みながら、一方では五感を研ぎ澄ませ、地下に続く階段へ向かう。
階段を降りると、重厚な扉があり、その前に受付があって、そこに男が2人待機していた。
受付の男にエリアスが招待状を見せると、確認するようにマジマジと招待状と私達を見る。
私が微笑むと、2人の男は同じように微笑んで、重い扉を開けてくれた。
「こんなに入るのに苦労しないのはラリサのお陰だな。」
「エリアスは人相が悪いもんな!」
「うっせぇぞ。ボウズ。」
視線を動かさずに、エリアスとレクスはコッソリ喋ってる。
本当に仲が良いな。
そうして私達は、闇オークション会場に入る事に成功した。
会場の中には、まだ人は3分の1程しか人が集まってなかった。
会場内の地図は、全て頭に叩き込んである。
右の奥に、従業員出入口がある。
そこから大きな控え室に行く事ができる。
恐らくそこに幹部達がいる、と睨んでいる。
従業員出入口には、男が1人立っていた。
そこまで歩いて行き、その男の瞳をじっと見つめた。
男は金縛りにあったかの様に、動かない。
「ここを通して頂ける?」
ニッコリ笑ってそう言うと、男はゆっくり頷いた。
難無く、その男の前を通り過ぎる。
「やっべぇ……魅了だけであれか?」
「少し光魔法で頭をボヤカした。これで数時間はあのままかな。」
「敵に回したくねぇーっ!」
「私もエリアスはもう敵に回したくないな。今はもう仲間だし、ね?」
エリアスにニッコリ微笑む。
「そうだな…でもそれだけじゃあ物足りねぇ……」
「エリアス、急ごう!早く助けてあげないと!」
「俺の言葉はスルーかよ。鈍感にも程があるだろっ!」
慣れない靴で走り出そうとしたから、また足元がグラついた。
転びそうになった所を、後ろから咄嗟にエリアスが支える。
「っぶねぇーっ!」
「あ、ありがとう、エリアス。」
「ほっせぇ腰……」
腰に腕を回して支えたエリアスが呟く。
後ろから支えるその腕がなかなか離れない。
「エリアス?もう大丈夫だから、離して……」
後ろを振り返って言った時、エリアスの唇が私の唇に触れた気がした。
「何やってんだ、お前らっ!」
「来やがったか。」
エリアスが魔眼を発動させた様で、男はすぐに恐怖におののいて、叫びながら逃げ出して行った。
その声を聞いて、他の者達もゾロゾロとやって来た。
雷魔法で感電させると、集まってきた男達はすぐに皆倒れた。
「それ、本当に便利な魔法だな。」
「気絶させただけだけどね。」
「アシュレイは優しいな。」
「エリアス、急ごう。」
「ああ。」
走って控え室に向かう。
走りながらさっきの事を思い出す。
エリアス、あれは…偶然……だよな……?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
46
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる