慟哭の時

レクフル

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第五章

エリアスの過去

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朝目覚めると、イルナミの街の宿屋で、私は一人ベッドで寝ていた。

ディルクはやる事があるからと、夜にオルギアン帝国に帰って行った。

体を浄化させてから、装備を身に纏う。

暫くすると、隣の部屋からエリアスがやって来た。


「よう!目覚めたか?朝飯でも食いに行こうぜ!」

「あぁ、エリアス。昨日は、その…ありがとう……」

「気にすんな。俺がそうしたかったからな。俺もボウズの事、気に入ってたんだぜ?」

「そうだな、よく仲良く喧嘩していた。」

「あれでウマが合ってたんだよ。」

「ふふ……そうだな。」

「アンタはずっとそうやって笑っといてくれよな…」

「え?」

「何でもねぇ。行くか。」

「あ、うん。」


それから2人で、『風見鶏の店』へ行った。

そこで朝食をとりながら、お互いの事を話す事にした。

奥の方の、個室っぽくなっている所に座る事する。


「俺は別になんもねぇぜ?ずっとこの国の王都で冒険者やってたからな。」

「エリアスの出身はどこなんだ?」

「マルティノア教国だ。」

「マルティノア教国って…ここからは随分遠いな。アクシタス国の北側の国か。」

「あぁ、そうだ。その国にある孤児院で育ったよ。この街の孤児院を見て安心したぜ。良いシスターがいて、子供達がみんな幸せそうだ。」

「エリアスがいた孤児院はそうじゃなかったのか?」

「まぁな…ヒデェもんだったよ…孤児院とは名ばかりの所だったな。」

「教国と言うからには、宗教が盛んな国だろう?そんな国がなぜ?」

「その宗教もヒデェもんさ。上の奴等は儲ける事しか考えてねぇ。下っ端の奴等は上に媚びへつらい、俺達を金儲けの道具としか見てなかったからな。」

「そうなのか……?」

「顔の良い奴は、まだ小っちぇうちから娼館へ売り飛ばされてたよ。俺は毎日鉱山で働かされてたな。帰って来たら、ストレス解消の道具にされて、毎日ボコボコにされてたな。」

「エリアス……」

「まぁ、よくある話だ。気にすんな。そんな所にいたい訳ねぇだろ?だからある日、孤児院にいる子供達で逃げ出したんだ。13人で逃げ出して、残ったのがたった2人だぜ?笑けるだろ?」

「………」

「みんな元々が栄養失調だからよ、上手く走れなくてよ、次々に追手に殺られていったよ。連れ戻すんじゃねぇぜ?みんな殺されんだよ。後ろからさ、首が飛んでくんだよ。友達だった奴等のな。」

「ひど……っ!」

「何とか逃げ出したよ。自分がどこにいるのかも分からずに、ただ歩き回ったよ。気付いたらアクシタス国の国境に来てたみたいでな、そこで盗賊に捕まって売り飛ばされて奴隷になってな。」

「奴隷に…?」

「あぁ、それからもこき使われたけど、俺が11歳位の時だったかな、魔眼が使える様になってな。それからは皆俺が恐ろしいって言って、俺は奴隷じゃ無くなった。要は、まぁ、使えねぇから捨てられたんだな。」

「でもまだ幼かっただろう?どうやって生きてきたんだ?」

「魔眼が使える様になってから、魔法も段々使える様になったから、それから魔物を倒していったな。冒険者登録は15歳からだから依頼は受けられねぇけど、素材は買い取ってくれるだろ?それで毎日を食い繋いだって感じだな。」

「それからずっと一人で?」

「そうだな。一緒に逃げたもう一人の奴はどこにいるか分かんなかったし、アクシタス国も奴隷にされたから良い思い出もねぇし、で、インタラス国にやって来たって訳だ。」

「そうだったのか……」

「まぁ、どうってことねぇ話だよ。この国は気に入ってるよ。皆良い奴等だったしな。俺にとっちゃあ、自由の国だ。」

「でも、それじゃあ、この国にずっといた方が良いんじゃないのか?」

「俺は自由に生きるって決めたんだよ。だから、アンタと旅をする事も決めた。これで良いんだよ。」

「エリアス……」

「あ、そうだ、前に俺の母親が銀髪かどうか聞いただろ?それ、なんでだ?」

「それは……そうだな、エリアスには話しておいた方が良いな。…私の右手は、触れた人の過去や未来が見える。私の左手は、触れた人にあった、私の情報が全て無くなる。」

「それ……どういう事だ?!」

「持って生まれた力だ。異能と呼ばれている。」

「でも、俺はアンタに何度も触れてるぜ?」

「そうだ。それが銀髪と関係がある。」

「どういう事なんだ?」

「私の母は銀髪だった。銀髪の人達の特徴として、魔力が多く魔法に長けた人達だ。この部族の人達は、外部の人との接触を拒んで、身を隠して生活をしている。」

「それは何故だ?」

「身を隠すのは他にも理由があるが、銀髪の者以外の血が混ざると、その子供が異常な力を身に付けるからだ。大概はその能力に体が耐えきれずに、生まれる前に亡くなるか、生まれてすぐに亡くなるか…らしいが。」

「じゃあ、アンタは……」

「そうだ。私は珍しく生き残ったらしい。異常な力以外の異能の力もあるから、今まで人に触れずに母と旅をしていた。母には触れる事は出来たんだ。」

「じゃあ、なんで俺は触れんだよ?」

「前に銀髪の人達の村に行ったことがある。私に銀髪の血が流れているからか、その人達に触れても過去も見えなかったし、私を忘れると言うこともなかった。」

「…って事は……」

「エリアスに触れても、過去が見えなかった。エリアスには、銀髪の血が流れているのかも知れない。」






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