慟哭の時

レクフル

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第五章

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「じゃあエリアス。私は母の元へ行こうと思う。」

「勿論、俺もついてくぜ?」

エリアスは私の左手首を掴む。

私は母の事を思い描く。

目の前の空間が歪みだし、目の前が真っ暗になる。

それから、何処かの場所が映し出されて、でもまた暗くなって、弾き出される様に元の場所へ戻って来た。


「えっ?!」

「なんだ?!帰って来ちまったぞ?!」

「もう一度やってみるっ!」


もう一度母を思い描く。

目の前が歪んで真っ暗になり、またさっきと同じ場所が映し出されて、でも弾き出される様にまた元の場所へ戻って来た。


「なんでっ?!」

「どういう事なんだ?これ……」

「分からない……」

「途中までは行ってる様だな。でも阻まれてる感じがする。」

「誰に?!なんでっ?!」

「いや……それは分かんねぇけど……」

「あ、ごめん…つい……」

「大丈夫だ。気にすんな。見えた場所に心当たりはあるか?」


見えた場所……

何処かの部屋の中……

宿屋とかじゃなくて…普通の部屋っぽくもなくて…

何処かの貴族の部屋みたいな……


「心当たりは……ない…」

「そうか……どうする?」

「もう一度!試してみる!」


その後何度も繰り返したが、やはり母の元には行けなかった。

レクスの時も行けなかったが、その時は空間が歪むと言うこともなったので、母が亡くなっていると言うことはない……はず……

不安そうにしていたのか、エリアスが頭をポンポンと手で弾まして

「まぁ、また試してみりゃあ良いよ。生活に苦労してそうな感じはなかっただろ?無理に焦らなくても良いかもしんねぇぜ?」

「エリアス……」

「あと、気になってたんだけどよ、アンタの持ってる短剣、まだ窪みがあっただろ?ってことは、まだ探す石があるって事だよな?」

「あぁ。そうなんだ。あと2つ。黒と白の石がある。……と思う……」

「思う?」

「存在が……確認出来ない……」

「どういう事だ?」

「いつも石が遠くにあっても、石のある方向が光って見えていたから、何となくでもその方向に向かって行けた。けど、今はその光が全く見えない……」

「それは……どういう事なんだ?」

「分からない……」

「じゃあ……どうする?」

「………」

「あ、まぁ、急ぐ事もねぇしな!ちょっとゆっくりしても良いんじゃねぇか?」

「あぁ……そうだな……」

「今まで行ったことのある国は何処なんだ?」

「え?あぁ、そうだな…アクシタス国、グリオルド国、オルギアン帝国、シアレパス国…だな。」

「結構行ってんな。」

「それがどうした?」

「いや、行ったことのねぇ国に行ってみるのも良いかもしんねぇって思ってな。」

「確かにそうかも知れないけど、そうなると徒歩で行ける範囲で考えると…マルティノア教国になる……」

「行ってみっか?」

「いやっ!それは止めておくっ!」

「俺の事気にしてんのか?」

「……そう言う訳じゃ……」

「俺の事は気にすんな。今は宛てもねぇんだ。アンタの力でいつでも引き返せんだろ?ここでウダウダしてるよりは行動してみる方が良いんじゃねぇか?」

「でもっ……」

「大丈夫だ。俺もあん時より強くなったからよ、今は怖いモンは何もねぇしな。」

「エリアス……」

「行ける範囲を拡げるって事も大事だぜ?人以外では、その場所を思い浮かべれば良いんだろ?それじゃあ行ったことがない場所には行けねぇって事だろ?」

「そうだな…」

「アクシタス国は行ったことあんだろ?じゃあ、そこは石の力で行って、そこからノンビリ歩いて行くか!」

「良いのか?」

「俺の事は気にすんなっつってんだろ?俺も行けねぇ場所があるのは気に食わねぇしな。」

「分かった。」


そう言う事で、私達はマルティノア教国に行く事になった……





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