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第五章
親しき仲にも
しおりを挟む朝になって目が覚めた。
私は一人で眠っていたようだ。
昨夜……エリアスに矢が刺さって……
それから魔素を集めて、魔力も集めてエリアスを回復させたけど……
途中で魔力が無くなって、そのまま意識が無くなって………!
「エリアス?!エリアスっ!」
そうだ、エリアスはどうなったんだ?!
すぐにテントから出て辺りを見渡しエリアスらを探すけど、エリアスの姿が見えなかった。
ちゃんと回復魔法が効いてたのかも確認してない。
毒が抜けてるのかも分かっていない。
どこに行った?!
慌てて探していると、エリアスが戦闘があった方面からやって来た。
「よう!起きたか、アシュレイ!」
「エリアスっ!無事なのか?!」
「あぁ、アシュレイのお陰でな。この通りだ。」
両手を広げて、無事だとエリアスは示した。
良かった……
エリアスが何もなくて……
涙が出そうになるのを必死でおさえる……
「エリアスが無事で……良かったっ……!」
「心配させて……悪かったな……」
エリアスは広げた両腕で、私を包み込む様にした。
「アシュレイがいたから助かった。ありがとな……」
「エリアスが私を守ってくれたから……治って良かった……痛い所はない?」
「あぁ、大丈夫だ。アシュレイは魔力切れだったろ?もう平気か?」
「うん、大丈夫だ。あ、エリアスの魔力も全部奪ったから、エリアスの魔力も無くなってると思う。」
「さっき確認した。今俺達を襲った奴らを縛り上げてたんだよ。まだ感電したままだったからな。」
「そうか、それでいなかったのか……」
「まだ一緒に寝ていたかったけどな。ハハ……ん?」
「ん?」
ふとエリアスの視線が下に落ちる。
エリアスの視線を辿って見てみると、私の胸元が見えそうになっていた。
慌てて胸を両腕で隠す!
エリアスは口を手で覆って顔を背けた。
「き、着替えて来るっ!!」
急いで自分のテントに戻り、いつもの装備を身に付ける。
気が緩み過ぎているかも知れない……
親しき仲にも礼儀ありって言葉があったように思う……
馴れ合い過ぎたらダメなんだろうな……
気を付けなければ……!
エリアスにも失礼だ!
着替えを済ませてテントから出てくると、エリアスが朝食の用意をしてくれていた。
「エリアス、その…ありがとう……」
「いつもアシュレイがしてくれてるからな。出来る時は俺もしねぇと、バチが当たっちまう。」
エリアスが笑いながら言う。
いつも通りで良かった!
体も何とも無さそうだ。
それから二人で朝食をとりながら話をした。
「あの男達、アフラテス教の奴らだ。もう俺達の事がバレてるみてぇだな。」
「そうだったのか……刃向かう者は徹底的に排除する……そんな感じがする……」
「そうだな。益々放っておけねぇな。」
「うん……エリアス、まずは首都へ行かないか?中心部の元凶である者を叩かなければ、今のままでこの国は変わらない様に思う。」
「……そうだな……その方が良いかも知んねぇ……たちが悪すぎる……気に入らねぇ……!」
「同感だ。これからまた襲われる事になるかも知れないから、気を引き締めて行こう。」
「あぁ。気合い入れ直さねぇとな。」
それから私とエリアスは、ケルニエの街ではなく、首都へ向かうべく進路を変えた。
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