54 / 166
闘争心に火がついた
しおりを挟む魔物を統べる力
それはリュカが持っていた力だ。
リュカは黒龍からそうと知らずにその力を奪い続け、自分のものとした。自分が黒龍の父と母の命を奪ったとして、リュカは代わりに魔物を統べるようになったのだ。
その力をゴーレムに与えた。
リュカが使っていたその力を習得するのに、俺は何度龍を探して倒しに行き、左手で光を奪っていった事か。お陰で魔物を統べる力を身に付ける事が出来たが、それまでに100年程掛かったな。
リュカと同じ力を付与したかったから、俺はリュカに似たゴーレムにした。何度も手直しして、成長したリュカをワクワクしながら想像して作り上げたリュカ似のゴーレム。
不覚にも出来上がった時は泣いてしまった程だ。
誰からも愛されるように、けど誰にも汚されないように、あのゴーレムには細心の注意を払ったつもりだ。なのになんであのゴーレムがヤられんだよ?!
すぐにゴーレムの元まで飛んでいく。土だけになっていても、俺の魔力がまだ残っているから場所は特定できるんだ。
そうして行った先はインタラス国のイルナミの街から南にある森の中。ここは聖女のゴーレムが倒された場所だった。
「何が目的なんだよ……!」
リュカのゴーレムには、リュカがつけていた御守りの黒のピアスと俺が買ってやった短剣を装備させていた。それが魔石と共に無くなっている。
倒されるなんてある筈ないと思っていた。誰からも愛されるように作ったゴーレムを、誰が倒そうなんて思うんだ? 場所からしても、聖女のゴーレムを倒した奴なんだろう。けどなんでこんな事をする?
俺を倒そうって思ってるとかなのか? なんで俺の事が分かった?
俺は敵を作らないようにしてきたつもりだ。けど、盗賊や裏組織の人間を撲滅してきたのは事実だ。それでも顔を変え名を変え、俺だと分からないようにしてきたし、反撃を狙うような奴には幻術で恐怖を与え、俺への復讐心が無くなってから幻術が解けるようにしておいたから、俺を殺そうとする奴がいるとは考えられないんだけどなぁ……?
俺は殺せないにしろ、俺が作った村や街の住人に手出しをされるのを一番に気にしている。そんな場所とは繋がりが無いように見せてきたし、そこが襲われてないんだったら純粋に俺を倒したい、と思ってる奴の仕業なんだろうな。
ゴーレムだった土をそっと撫でる。その土で、もう一度リュカに似たゴーレムを作り出した。それから、持っていた魔石で一番強力な物をその胸に埋め込む。
俺の魂を付与させるのは、高度の能力を扱えるようにする為だ。魂を付与せずともある程度なら能力を魔石に付与できる。魔物を統べる能力で言えば、Bランクぐらいの魔物であればこれで問題なく抑える事が可能だ。
けどそれ以上となると、やっぱり俺の魂が必要となる。セームルグからは、魂を分ける等なるべくしない方が良いと何度か注意されたけど、アシュリー自身がそんな存在だったからその気持ちを分かりたい、と思ったのも事実だった。
俺の魂が付与された魔石は、かなり高度の魔石へと変化する。グレードが上がるって感じだな。
魔石とは魔物の核みてぇなもんで、その魔物を構成する元となる物だ。そこに俺の魂を入れ込む形になるから、魂は魔石と馴染んで超高度の魔石へと変わる。
だから俺はその魔石の存在が何処にあるのか分からねぇ。手に取ったら分かるけど、見ただけじゃ分かんねぇんだよなぁ。
けど、その魔石を奪った所でどうすんだよ? 確かに売ればかなりの金額にはなると思うが、そんなに高度の魔石ならギルドやオークションで話題となる筈だ。ここ最近はそんな話は聞かねぇしな。
けど、ギルドとオークションの情報に気をつけておくことにしよう。
リュカに似せたゴーレムの微調整をする。髪はもっと艶やかに。顔はアシュリーに似せて可愛らしく。誰からも愛されるように。誰にもこれ以上傷つけられないように。また危険がせまったら、その時点で俺に分かるように。
「ごめんなぁ……俺、守ってやれなくて……怖かったか? また俺、リュカの事守れなかったんだな……」
違う、これはリュカじゃない。ただのゴーレムだ。それは分かってる。俺が作り出したゴーレムに間違いはない。けど……
俺を見てニッコリ微笑むゴーレムはリュカのそれで、たまらずに思わず抱きしめてしまう。
ふと横を見ると、血がそこにあった。
「これが敵の流した血か……少しは反撃できたんだな。偉いぞ?」
ゴーレムの頭をナデナデしてから、地面に染み込んでる血液を手で覆い、手に付いた血液を呼び合うようにして集めて一塊にする。それを持っていた水筒に入れておく。
それからリュカを模したゴーレムをアーテノワ国へ送り届けた。
ゴーレムは何事も無かったように、俺の元から去って行った。
それを見送ってから、アクシタス国にいる魔法に長けたゴーレムの元へ行く。コイツは実はディルクに似せて作ったんだ。あっちこっちといろんな国へ行ってるけど、俺の世界って実は狭いんだよな。今ディルクはルディウスとして存在してるからどうしようか。別の奴に変えるか?
けどまぁ、他の誰にするのも今は思いつかねぇから、まだ当分はこのままで良いか。今度また考えて変えるとしよう。
水筒に入れた血液を胸にある魔石の近くに染み込ませて、その匂いを覚えさせる。
俺はなるべく人を殺さないように気をつけて攻撃させてきた。けどそれが今の結果を招いている。今回、リュカを倒された事に俺は憤りを隠せなかった。
「お前は俺を倒しに来れるかな? その前にお前はコイツの炎に焼かれてしまえば良い……!」
俺は殺される事に何の抵抗も感じない。殺してくれるのなら有難いとさえ思っている。だけど、この世界を守っているゴーレムを倒すって意味が分かんねぇ。
人々を守る為に作ったゴーレムを倒すという事は、人々の生活を脅かすっていう事なんだ。それを俺は許す事が出来なかった。
その血の持ち主が現れれば、すぐに分かるように胸に血液を染み込ませたのだ。敵はまた来るだろう。魔法に長けたゴーレムを倒す為に。
「返り討ちにしてくれる……!」
リュカのゴーレムを倒された事が俺の闘争心に火を着けた。
誰に喧嘩を売ってると思ってんだ?
ただでは済まさねぇからな……!
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。
魔法師団長の家政婦辞めたら溺愛されました【完結】
iru
恋愛
第19回 恋愛小説大賞エントリーしています。ぜひ1票お願いします。
小説家になろうですでに完結済みの作品です。よければお気に入りブックマークなどお願いします。
両親と旅をしている途中、魔物に襲われているところを、魔法師団に助けられたティナ。
両親は亡くなってしまったが、両親が命をかけて守ってくれた自分の命を無駄にせず強く生きていこうと決めた。
しかし、肉親も家もないティナが途方に暮れていると、魔物から助けてくれ、怪我の入院まで面倒を見てくれた魔法師団の団長レオニスから彼の家政婦として住み込みで働かないと誘われた。
魔物から助けられた時から、ひどく憧れていたレオニスの誘いを、ティナはありがたく受ける事にした。
自分はただの家政婦だと強く言い聞かせて、日に日に膨らむ恋心を抑え込むティナだった。
一方、レオニスもティナにどんどん惹かれていっていた。
初めはなくなった妹のようで放っては置けないと家政婦として雇ったが、その健気な様子に強く惹かれていった。
恋人になりたいが、年上で雇い主。
もしティナも同じ気持ちでないなら仕事まで奪ってしまうのではないか。
そんな思いで一歩踏み出せないレオニスだった。
そんな中ある噂から、ティナはレオニスの家政婦を辞めて家を出る決意をする。
レオニスは思いを伝えてティナを引き止めることができるのか?
両片思いのすれ違いのお話です。
王様の恥かきっ娘
青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。
本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。
孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます
物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります
これもショートショートで書く予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる