慟哭の先に

レクフル

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伝えたい想い

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 リュカの人格のアシュリーを抱き上げたままベッドに連れて行って、そのまま寝かせる事にする。

 アシュリーはすぐに眠った。

 暫く手を握って、アシュリーの様子を見ていた。こうやって寝ている姿を見ているだけでも嬉しくて仕方がねぇ。そこにいてくれるだけで良いんだ。マジでそれだけで良い。


「アシュリー……リュカ……聞こえてるか? 俺はずっとアシュリーとリュカだけを愛しているからな? ずっとだ。ずっとだからな?」


 想いが届くように、心が届くように、でも眠ってるアシュリーを起こさないように、小さな声で優しく話す。

 暫くそうやって話しかけるように喋って、それから晩飯の用意をする為にその場所を離れる。
 無理に起きて食べようとしなくて良い。けど、食べたい時に温めたら食べれるようにだけして料理を終わらせる。

 アシュリーはまだ眠ったままだった。

 
「可愛い顔してんだよなぁ。なんでこんなに可愛いんだろうな?」

 
 見れば見るほどそう感じてしまう。包帯で目は見えてねぇけど、それでも可愛くて可愛くて仕方ねぇ。
 
 アシュリーの手を両手で握って、眠ってるアシュリーに話しかけながら、気づいたら俺は眠ってしまっていたようだった。

 最近はずっとこうやって椅子に座って眠っていたから疲れが溜まってたのか、結構グッスリ眠ってしまっていたようだった。

 目が覚めてアシュリーの様子を見ると……

 え?! アシュリーがいない! 

 なんでだ?! 何処に行った?! 

 外はもう朝で、陽の光は部屋の中を明るく照らしていた。そこにアシュリーの姿はなかった。


「嘘だろ……」


 昨日アシュリーは出ていくと言っていた。だからってこんなに早くに出ていくとか、そりゃねぇだろ?!

 止めてくれよ……俺を置いて行かないでくれよ! 頼むから! 俺を一人にしないでくれよ!

 すぐに家から飛び出した。

 すると、少し離れた場所でアシュリーが屈み込んで何かをしているのが見えた。
 良かった……! アシュリーがいた……いてくれた……!

 ホッとしてアシュリーの元まで落ち着いてゆっくり歩いて行く。

 
「エリアス……無くしちゃったよ……どうしよう……どうしよう……!」

「え? どうしたんだ? 何を無くしたんだよ?」


 俺の声が聞こえてないアシュリーは、必死に手探りで地面を触っていた。何を探してるんだ?
 ……って、目の包帯取ってるじゃねぇか! ダメだろ! まだ治ってないのに!


「アシュリー、包帯取っちゃダメじゃねぇか! 治るもんも治んねぇぞ?!」

「嫌だ……無くしたくない……どこに行ったの? お願い……出てきて……っ!」

「アシュリー……!」


 思わず後ろからその手を掴んだ。アシュリーの手は土で汚れて、所々擦り傷もあった。綺麗な手が台無しじゃねぇか!
 こうまでして何を探してるんだ?!

 振り返ったアシュリーは俺を見る。その目には涙がいっぱいで、俺の顔もハッキリ分かっていないだろうと思われた。悲しそうな顔をして俺を見るアシュリーが震える声で言う。


「アスター、指輪が無いんだ……何処かで無くしてしまって……大切な物で……エリアスに……っ!」


 ダメだ、抑えらんねぇ! こんなアシュリーをそのままにしとくとか何もしないとか、もう絶対無理だから……っ! 
 堪らずにアシュリーを抱きしめてしまう。

 アシュリーは俺が贈った指輪を探してたんだ。こんなに泥だらけになって包帯も外してっ!

 
「アシュリー、あの指輪は壊れてしまったんだ! 前にアシュリーが魔物の攻撃を受けそうになった時にあの指輪が守ったけど、それに耐えられずに壊れたんだ!」

「アスター、離して! 探さないと! あれはエリアスに貰った指輪で……! 大事な物なんだ! た、大切にしようって思ってて……思ってたのに……っ!」

「……っ!」


 あんな指輪一つでこんなに動揺して、こんな状態になってまで探してるなんて……!

 そんなに想ってくれてたのか?! あんな指輪ごときで、俺が贈ったってだけでそんなに大切に想ってくれてたのか?! 

 そう思ったら止められなかった。

 自分でも無意識な状態で、アシュリーに唇を重ねていた。

 愛おしくて愛おしくて、もうどうしようもない程になってしまって、俺は自分を抑える術を完全に忘れてしまったんだ。

 アシュリーの唇は冷たくて、でもすっげぇ柔らかくて気持ちよくて、もう止めらんなくて、唇を離す事が出来なくて、何度も何度もアシュリーの唇を奪い続ける。

 あっという間にアシュリーの唇は温かくなって、もう俺の脳ミソまで痺れてくる感じで何も考えられなくなって、ただひたすらアシュリーを感じ続ける。

 好きすぎて、愛しすぎて、自分でもどうして良いか分かんねぇ程になっていく。
 けど、そんな中ふと気づく。

 アシュリーが抵抗していない……

 そっと唇を離してアシュリーを見る。目から涙をいっぱい流して、多分ちゃんと見えてないだろうけど、でも俺の顔を見て……


「エリアス……?」


 そう一言呟いた。

 その瞬間、力を無くしたようにアシュリーは崩れ落ちる。慌てて抱きしめて、空間移動でベッドまで戻った。

 
「アシュリー、大丈夫か? アシュリー? 眠ったのか? ……俺の事、分かったんだな? 分かってくれたんだよな?」

 
 土で汚れた手や膝辺りを浄化させて綺麗にする。それから目に包帯をして、アシュリーを抱きしめたまま一緒にベッドに横たわる。 
 アシュリーの体は冷えていて、暖めるようにしっかりと腕の中に抱きとめる。

 やべぇ……マジ幸せすぎる……

 アシュリーが起きたらちゃんと話そう。もしまだ俺の声が聞こえてないんだったら、帝城へ行ってウルに会わせよう。で、ウルからでも良いから、ちゃんと説明して分かって貰おう。

 あ、その前に、昨日作った飯があるから、それを朝食にして一緒に食べよう。

 帝城で誤解が解けたら帝都へ行って、壊れた指輪の代わりを探そうか。今度はもっと良いやつを買おう。ちょっとやそっとで壊れない、アシュリーを守る指輪を贈ろう。

 指輪じゃなくても、何でも良い。アシュリーが望む物は何でも与えてやりたい。


 アシュリー

 愛しているよ


 早くそれを伝えたい。

 早く目覚めてくんねぇかな。

 そんな幸せな気持ちのままアシュリーをしっかり抱きしめた状態で、体を横にしたのは久し振りだったからか安心したからか、俺もゆっくりと眠りに落ちていった。

 なぁアシュリー

 目が覚めたら、今度は一緒に楽しく笑おうな……

 
 

 
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