慟哭の先に

レクフル

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子孫たち

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 昼食はソラ達が作った物を一緒に食べた。

 エリアスは、
「話をしなくてもこうやって一緒に飯を食ったり、同じことをするって事が大事なんだ」
って言っていた。
 それは私も同感だ。ただ寄り添って貰えるだけでも心強く感じるものだ。
 エリアスのそのさりげない優しさが皆の心に届く事を願ってしまう。

 その後エリアスに、イルナミの街の近くのダンジョンに休憩ポイントを作る、という作業をしに行く提案をする。
 
 エリアスは私の体を気遣い、
「家でゆっくりした方が良いんじゃねぇか?」
って言ってくれるんだけど、エリアスのお陰で元気を取り戻せたから、出来ることはしたいって伝えたら嬉しそうに私の頭をワシャワシャした。

 そうだった。エリアスは癖で、元気付けようとした時はこうやって頭をワシャワシャする癖があったんだった。
 一緒にいる事でこんなふうに、何気無い事でも思い出せるのが嬉しくて仕方がない。

 ダンジョンの二十階層まで空間移動で行って、そこから魔物が行く手を阻んできたら倒していき、今日は三十階層まで進んで休憩ポイントを設置していった。
 段々魔物は強くなっていってたけど、それでもエリアスには敵にもならなくって、目だけで倒せていた。

 私がいない400年の間でエリアスは更に強くなったように感じる。それ程に強くなる必要があった、という事なんだろうな。それは自分の為じゃく、誰かを守る為に。何かを守る為に。

 そうやって強くなって、だけど一人で居続けたエリアスを今度は私が守りたい。エリアスの支えになりたい。そう思えてならない……

 家に帰ってきて、夜も一緒に食事を作る。これが日課となってきている。

 小麦粉を練って平べったく丸く伸ばして、その上にトムトで作ったソースを塗ってからハムや野菜を置いていき、チーズをまぶして上から高温度で一瞬にして焼き上げる。
 焼くのは火の扱いが絶妙なエリアスの担当で、手から火を出して一気に焼き上げていった。

 サラダとクリームスープも用意して、二人で隣同士に座って食事を摂る。


「これ、旨ぇな! 伸びるチーズが良いよな!」

「うん、美味しいね!」

「アシュリーといたら食事が楽しみで仕方ねぇよ。俺、太りそうだ」

「ふふ……じゃあいっぱい作って太らせてやろうかな……」

「それ、幸せ過ぎんだろ! けど……多分どんだけ食べても太らねぇと思う……」

「え? そうなの?」

「多分な。不老不死になってから、あんまり体格は変わんねぇんだよ。食べなさすぎて、痩せたりしたことはあったけどな」

「食べなかった時があったんだ……」

「リュカがいなくなった時、な」

「そっか……」

「飲まず食わずで何ヵ月か……流石に痩せたみたいだな。最後に会ったゾランに凄く痩せたと言われたからな」

「ゾラン……あ! ディルクの侍従だった! メイドのミーシャと結婚してたよね! 凄い! エリアスと話してたら色んな事が思い出せる!」

「そうか? じゃあいっぱい思い出していこう。けど、思い出せなくても何の問題もねぇからな?」

「うん! でも、思い出せる事が嬉しいんだ! エリアスと同じ思い出がある事が嬉しくなるから!」

「ったく……可愛いすぎんだろ……これ以上俺を翻弄してどうすんだよ……」

「ねぇ! ゾランとミーシャはあれからどうなったのかな?!」

「相変わらずそこはスルーすんだよなぁー」

「え?」

「なんでもねぇ。ゾランとミーシャな。子供が二人いて、上の子……リオとリュカは仲が良かったよ。リュカもリオに……恋をしてたかも……な……」

「あ! その子! 知ってる!」

「え?! 知ってんのか?!」

「うん! エリアスに会う前、リュカの思考が目の前に現れていた事があったんだ。その時に男の子が何度か現れて……リュカの思考も私に流れ込んできたから、この子の事をリュカはきっと好きなんだろうなって思ってたんだ」

「そっか……俺、リュカの恋路を邪魔してしまってな。こんな事なら快く応援してやりゃ良かった……」

「父親だからそうしても仕方がなかったんだ。きっと。あ、で、リオのその後はどうなったの?」

「リオは生涯一人だったよ。たまに別人になって様子を見たり、ゴーレム越しに見てたんだけどな」

「そうなんだね……」

「あ、でな? メアリーはミーシャの子孫だぞ」

「えっ?! 本当に?!」

「あぁ。リオの弟のテオの子孫だな。だからメアリーも貴族だ。伯爵令嬢なんだけどな。なんかメイドの仕事がしたいらしいんだ」

「隔世遺伝……とかかな?」

「かもな」

「うわぁ、なんか嬉しい! こうやって皆繋がっていくんだね!」

「そうだな」


 私の知っていた人の子孫が、また私と会って関わる事が出来るなんて、これって凄い事だなって思う。
 だからこそ思う。エリアスにもそんな存在を残してあげたい。そう考えてると、エリアスが頭をワシャワシャした。
 

「俺と血が繋がってなくても、俺が助けたり面倒を見てきた子供達が大きくなって子孫を増やしてる。だから、この世界には俺の子孫がいっぱいいるんだぞ?」

「そうだね……! ここにはエリアスの子供がいっぱいなんだね!」

「あぁ」


 私の考えてる事が分かったのか、エリアスはそう言って微笑んだ。
 私はエリアスの子供が欲しいと思っている。だけどまた前世の時みたいに、もしかしたら上手くいかないかも知れない。そんな事を思いやってなのか、エリアスはそう言ってくれたんだろう。

 
「じゃあ、子作りに勤しむか!」

「えっ?!」

 
 エリアスが突然そう言い出して、私を抱き上げた。


「あ、その、まだ片付けとかしてないし!」

「そんなのすぐに終わらせられる」


 エリアスは光魔法で食器類を浄化させてから、風魔法で浮かせて食器棚に戻していった。あっという間に片付けを終わらせて、私にニッって笑う。

 そのまま寝室に向かっていって、ベッドに優しく置かれた。


「子供とか、そんなの気にしなくて良い。俺はただアシュリーが欲しい。それだけだ」

「でも……リュカの事は……」

「もちろんリュカの生まれる可能性は無くしたくない。だからいっぱい抱く!」

「ん? なんか言ってる事が……」

「良いんだよ。理由なんて。そうしたいからそうする。それで良くねぇか?」

「そうだけど……」


 言ってる間に口づけされて言葉を遮られる。エリアスの優しい唇が、私の全てに口づけていく。その痺れるような快感に何も考えられなくなって、ただ声を抑えるようにする事に一生懸命で……


「声を抑えなくて良い……俺以外誰も聞いてねぇし、俺はアシュリーの可愛い声が聞きたい……」

「で、も……」

「もっと俺を感じてくれよ……」

「ん……っ! あぁ……っ!」


 エリアスに何度も激しく求められて、全身が痺れそうな感覚に陥っていく……

 深く深く、どこかに落ちていくような感覚になって、それをエリアスが支えるように抱きしめている……

 そうやって何度も何度も……

 お互いに溺れるように、私達は一つに繋がっていった。

 だけどエリアス そんなに焦らないで?

 私はまだいなくならないよ?

 今しかないような、そんなふうに私を求めなくても大丈夫なんだよ?

 そうは思っても、それは告げられないままに身を委ねてしまう

 エリアスは一つになったまま私を抱きしめて離さないようにして、そして今日も二人で眠りに落ちていく……

 それはこれ以上ない程に幸せで、もし今命を無くしたとしても、それでも良いと思える程に満たされていて……
 
 こんなに幸せで良いのかと怖くなってくる

 もうエリアスのいない生活なんて考えられない

 考えたくない……



 
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