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深くなっていく
しおりを挟むその日は一日家にいた。
磁石のようにお互いが離れないようにして、ただ二人で抱き合った。
そうやって求め合いながらも眠り、どちらともなく目が覚めると、また求めていく。
陽が傾いてきて、茜色に空が染まってきた頃、どっちかのお腹の音が鳴った。
その音を聞いて、二人で笑い合う。良かった。またこうやってアシュリーと笑い合えた。
服を着てから手を繋いでキッチンに向かい、二人で料理を作る。朝のスープが残っていたからそれと、トムトでソースを作って茹でた麺と絡ませ、上からチーズをのせて軽く火で炙った物と、パンとサラダを用意した。
料理中もアシュリーは俺にベッタリだった。腰に手をまわして抱きついてくれて、今までのアシュリーに比べるとその甘えぶりが凄かった。
テーブル席に座って食事をする時も体は密着させていて、食べさせ合っこしたり、飲ませ合っこしたりで、いつもより時間をゆっくりかけて食事を楽しんだ。
「一緒に風呂に入ろうな。約束だったもんな」
って言うと、アシュリーは少し顔を赤らめて頷く。
服を脱いだアシュリーは恥ずかしそうにタオルで体を隠していて、何度も見てるのに何がそんなに恥ずかしいのかと思いつつ抱き上げる。
洗い場に座り、石鹸を泡立ててアシュリーの体を洗ってやると少し体に力を入れて抵抗するように恥じらうけれど、体を覆う手を取って俺の手で体の隅々まで丁寧に洗っていった。
「俺の体は洗ってくれないのか?」
って聞くとまた顔を赤らめて、だけどアシュリーは俺がしたのと同じようにして体を洗ってくれた。
そうやって髪も二人で洗い合っこして、それから湯船に浸かる。湯加減は丁度良くて、体の疲れが一気に取れていく感じがする。窓から見える空はもう暗くって、星がキラキラ輝いているのが見えた。日中はよく晴れてたんだろうな。
横に座るアシュリーを抱き上げて、抱き合うようにして座りなおす。下からアシュリーの顔を見上げると、はにかみながら微笑んで口づけてくれる。
そんな事されると何もせずにはいられなくなって、またすくにアシュリーを求めてしまう。
いつもよりアシュリーの体の中は温かくって、その中で俺は蕩けそうになって理性がぶっ飛んでいった。
「アシュリー、このままベッドに行っていいか……?」
「ん……そうして……私も……そうしたい……」
空間移動でベッドに行って、濡れた体を風魔法で乾かし、熱くなったアシュリーの体をまた熱くしてやる。
そうやって何度も何度もお互い欲するがままに与え奪い合い、二人だけの時間に酔いしれていった……
体に重みを感じて目を覚ます。アシュリーが上に乗っかって、俺の胸に顔を埋めてスヤスヤ眠っていた。
朝陽が窓から降り注いでいて、魔法で窓を少し開けると、優しい風が流れ込んできた。
まだ俺の上で眠るアシュリーの頭を撫でて背中を撫でて、その重さを堪能しているとアシュリーの体がモゾモゾ動きだす。
「エリアス……こそばゆい……」
「撫でてるだけだぞ?」
「なんか手つきがやらしい……」
「アシュリーも昨日はそうだっただろ?」
「そ、そんな事言わないで……」
「なんで? 嬉しかったんだぞ? アシュリーが乱れてくれたのが最高に可愛くて、俺、すっげぇ唆られたんだからな?」
「もう! 言わないでって言ったのに!」
「怒らないでくれよ。怒った顔も可愛いけどな」
「怒ってないよ……」
「あぁ。分かってるよ。おはよう、アシュリー」
「うん。おはよう、エリアス。えっと……」
「ん? どうした?」
「まだ、その……エリアスのが……私の中にあるんだけど……」
「あぁ……こうしてると安心なんだ。アシュリーに包まれてる感じがして」
「でももう……」
「じゃあ、一回だけにしとくから……」
「え……あ……そんなすぐ……動かないで……!」
アシュリーがいつもの感じに戻ってきたみたいだ。良かった。
だからと言って途中で止めらんねぇけどな。
こうやって優しく朝を迎える事が出来るようになった。それがなによりで安心した。
何度もことに及ぼうとするのを止められた。昨日は何度だって受け入れてくれたのに……
起き上がってベッドの上でアシュリーの後ろから服を着せてやると、大人しく身を任せてくれる。靴下を履かせて靴を履かせて、髪を手で軽く整えて、それから後ろから抱き包む。
そうしたらアシュリーが振り向いて、今度は俺の服を着せてくれる。
「俺はいいって。自分で着るぞ?」
って言ったら、
「私がそうしたいから」
って、譲ってくれなかった。
自分で着替えるより時間はかかるけど、こんなふうに出来るとか400年前でもなかった事で、またアシュリーと深くなったように感じられる。
昨日と同じように二人で密着しながら朝食を作って食べる。まだ俺から離れようとしないのは変わらないな。でもそれで良い。このままが良い。
「なぁ、アシュリー……今日は外に出れそうか?」
「え……外……?」
「無理なら良いんだ。無理はして欲しくねぇから」
「……でも……エリアスはそう言う訳にはいかない、よね……うん、大丈夫。いつまでもずっとここでエリアスと二人だけでいる訳にはいかないし、私の育った村の事もあるし。あのままウルに丸投げなんて出来ないからね」
「そうだな……じゃあまずは帝城に行くけど、体調が悪くなったり不快に思うことがあればすぐに言ってくれな? そうなったらすぐに帰って来ような」
「うん、分かった。ありがとう」
なんとか頑張ってくれるアシュリーを不安にさせないようにしなくちゃな。知ってる場所に行くけど、俺が気をつけないと。
アシュリーは優しく笑って、問題ないって顔をする。その笑顔を無くさないように、今度こそ俺が守るんだ。
手をしっかり繋いで、オルギアン帝国の帝城にある俺の部屋まで空間移動で行く。
部屋に着いてベルを鳴らすと、少しして侍従のザイルがやって来た。
「ヴァルツ様、間もなくウルリーカ皇太后様がいらっしゃいます。こちらでお待ち頂けますか?」
「え? あぁ、待つのは構わねぇけど……いや、俺達がウルの部屋へ行こうか」
「それはいけません! こちらでお待ちくださいませ! お願いですからここを動かないでください!」
「……そうか。分かったよ」
様子の可笑しいザイルの思考を読んだ。そうか。そうなったか。
ソファーに座り、ウルを待つことにする。いつもならすぐにメイドが来てお茶の用意を手早くしてくれるのに、今日はやっぱり来ねぇんだな。
アシュリーも、その事に気づいたみたいだった。
「エリアス……」
「あぁ、大丈夫だ。もうすぐウルが来るから」
「うん……」
「んな不安そうな顔すんなって。大丈夫だから。」
「うん……」
ソファーで二人並んで座っていると、バタバタ音がなって、誰かが走ってくるのが聞こえてきた。
バァンっ! て、勢いよく扉が開いて、ウルが入って来てツカツカ俺達の元までやって来る。
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