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形勢逆転
しおりを挟むアシュリーがいた。
俺を見て涙をいっぱい流して、俺の元へ来ようとして人を掻き分けている。
大丈夫だよ。俺、死なねぇから。ごめんな? 昨日帰るって約束したのに破っちまって。だからここまで来たんだよな? けどここは危ないから帰らなきゃダメだぞ? ちょっと待っててくれな? ちゃんと方を付けるから。そうしたら一緒に帰ろうな?
そう思ってアシュリーに分かるように手を大きく振った。
そうしたら身体中に激痛が走った。
俺を取り囲んでいた騎士達が持つ剣に、俺の体はあちこちから深く貫かれていた。
「あ、が……っ!」
内臓が出血し、それが上がってきて口から大量の血を吐き出す。
だから痛ぇんだって! すっげぇ痛ぇんだぞ、これ!
一気に剣で貫かれて、俺はその場に倒れ込んだ。そのまま倒れて死んだと思わせていたら良かったのかも知れないけど、またアシュリーの声が耳に届いたんだ。
「エリアスっ! 嫌だ、 死なないで! エリアスっ! エリアスーっ!!」
そんな悲痛な声を出すなよ……お腹の子に……リュカに悪影響じゃねぇか……
大丈夫だって。俺、死なねぇから。死にたくても死ねねぇんだよ。知ってるだろ? けど今は死にたくねぇ。せっかくアシュリーと一緒に生活出来るようになって、リュカも生まれて来てくれるって時に死ぬなんて、そんな酷ぇ事ねぇよな?
アシュリー、心配しなくて良い。大丈夫だから。俺、ちゃんと元に戻るから。
身体中にあった激痛が少しずつ無くなっていって、流れた血液はまた俺の元へ戻って来てくれる。
そうしてまた俺は自分の体に力を取り戻し、ゆっくりと立ち上がってその姿をアシュリーへ向ける。
あーあ、服もボロボロになったじゃねぇか。血にまみれてるし、こんな姿じゃ余計に心配するよなぁ? そう思って光魔法で浄化し、綺麗な状態へと戻ってからまたアシュリーに笑顔で大きく両手を上げて手を振った。
「な、なんだコイツは?! 不死身なのか?!」
「コイツはダメだ! 生かしておけん! 焼け! コイツを炎で焼き尽くせ!」
誰かがそう言うと、舞台袖にいた魔術師が俺に火魔法を放ってきた。いや、舞台燃えちまうじゃねぇか。まぁ後々必要なもんじゃねぇから問題ねぇか。
そう思ってる間もなく俺の体は一気に燃え出した。うん、これは痛くも痒くもねぇぞ? なんだったら心地良いくらいだ。インフェルノが喜んでるのが分かる程だ。
すっげぇ炎が俺を包み込むけれどそれは何の効果もなく、ただ俺と共に舞台を焼いていくだけだった。
燃え広がっていく舞台から逃げ出す様に騎士達は舞台から降りていく。
火で俺を殺そうなんて無理なんだって。不老不死でなくとも、俺は火では死なないんだって。言っても分かんねぇかな。分かんねぇだろうな。
辺りが悲鳴で埋め尽くされる中、アシュリーの泣き声だけが俺の耳に優しく届く。
アシュリー、泣かなくていい。アシュリーなら分かんだろ? こんな炎で俺は死なないって。それでも心配か? アシュリーは心配性なんだな。
心地よくてこのままでいたいとも思ったけれど、アシュリーの事を考えて仕方なく炎を消す。
消えた炎の中からは何ともない俺がいたから、また悲鳴が響きわたる。って、何の余興だ、コレ。
あ、因みに服は俺が燃えたらいつも一緒に燃えるんだけど、そうしたら俺は全裸になってしまうから、燃えてる間は常に回復魔法で復元させてんだ。俺の裸はやっぱアシュリーだけに見せて良いことにしてるからな。って、乙女か俺は!
そんなふうに自分に突っ込んでる俺の元にストラスが現れた。ストラスは俺に耳打ちをし、ニカッて笑って手を振って風と共に消えた。俺もストラスに手を振って送り出す。
さぁそろそろ終わりにしようか。
焼けて今にも崩れそうな舞台に一人立つ俺は辺りを見渡す。舞台下にザイルがいて、青ざめた顔をして俺を見ていた。ごめんな? 死んでやれなくてよ。
回復魔法を放ち、舞台を淡く緑の光に包み込んで復元させてやり、ジョルディに目を向ける。ジョルディも驚いていたけれど、俺を見てから頷いて、舞台へ上がってきた。
ジョルディを拘束していた騎士達は既に俺が目で操っている。だから何の枷もなく、ジョルディは一人で舞台へ上がって来れたのだ。
「賢明なる我が国民達よ! 余はオルギアン帝国皇帝、ジョルディ・アルカデルト・オルギアンなり! 此度の事件、捏造されたものである! 我が弟、バルトロメウスにより謀反を起こされ、余は糾弾されようとしていたのだ!」
俺はジョルディが国民に向かって話している隙にバルトロメウスが何処にいるのかを探すべく気配を探っていた。けど今ここを離れる訳にはいかねぇ。今はジョルディを支えなきゃなんねぇからだ。
「この者、エリアスは大罪人等ではない! 先の罪状は全てこの者が犯したものでは無く、事実無根である! エリアスは長年オルギアン帝国の安寧を担ってくれた者だ! 称える事はあれど、処刑される等、あってはならぬ事なのだ!」
苦虫を噛み潰したように、ザイルが悔しそうな顔をして俺を見てからニヤリと笑う。人質の命を奪おうと思っているんだろうな。
けどもうその手は使えねぇぞ? さっきストラスが報告してくれたんだ。各地にいる、孤児達を見張っていた兵士達の力を削いだ事を。
俺は牢獄の中でストラスに孤児達の様子を見に行って貰うように言った。それから魔力封じをしている魔術師の魔力を、逆に封じて貰ったのだ。そして通信の魔道具はこちらから音が聞こえないようにし、動けるようになったゴーレムに兵士達を拘束させた。
俺の保護する孤児達がいる村や街には、必ずゴーレムを数体は置いている。その力は冒険者ランクで言うとAランク相当となり、例え訓練を受けている兵士と言えど、そう簡単に倒せるものではないのだ。
それでも兵士が多い場所や強いヤツがいる場所には、ストラスや水の精霊ヴェパルを派遣した。ヴェパルは好戦的な精霊で、放っておくとやり過ぎる嫌いがあるから心配だったんだけど、なるべく兵士を殺さないように言ってヴェパルを向かわせた。
その甲斐あって、ついさっきストラスから問題ないと報告を受けた。これでもう大丈夫だ。もちろん、ウルのいる村も騎士達を拘束出来ている。少し時間がかかっちまったけどな。後でウルに謝りに行こう。
ザイルは連絡が取れないことを今やっと気づいたようで、焦って俺を見た。俺はニッコリ微笑んでやった。
更に顔を青ざめさせたザイルは、どうすれば良いのかと辺りをキョロキョロ見だす。そこで何かを見つけたみたいにハッとして、ニヤリと笑ってからその場を離れ走り出した。
なんだ? 何をするつもりなんだ?
ザイルを糾弾しようとしたから俺は操らずにそのままにしておいたんだけど、それがいけなかった。
ザイルが向かった先はアシュリーの元だった。
人を掻き分け、アシュリーは舞台のかなり近くまで来ていて、そこをザイルに見られたのだ。
まだジョルディが俺の冤罪を晴らす為に演説してくれていて、人々はその声を本当にそうなのかと興味を持って聞いている。そんな中、ザイルだけが人混みに逆らうようにしてアシュリーの元まで行った。
「アシュリーさん!」
「えっ?! ザイルっ!」
「貴女を拘束します!」
「ちょっ……! ザイル、止めっ!」
ザイルはアシュリーの手首を掴み、そのまま後ろから抱きつくようにして拘束して首にナイフをあてがって俺に見せつけた。
それを見て俺の血が逆流するのかと思う程に沸き立つ。
ザイル……お前は俺を怒らしたな……?
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