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第17話 老舗仕立て屋②
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試着室に案内されると、スタッフがてきぱきと着せてくれる。
「サラ様、胸をいつも抑えていらっしゃいますか?」
「そうなんです、仕事の都合で……」
「お胸の形が崩れるので、お勧めしませんが、仕事柄だと致し方ないですね」
実はサラは胸が大きい。しかし、仕事をする上で慎ましやかサイズの胸の顧客もいる。それを気にする女性も多いため、自分の胸のサイズを目立たせないようにしているのだ。
「今日は本来のサイズでドレスを用意しているので、いつもより強調されますが、大丈夫でしょうか?」
「あ、えっと、いやらしくなければ……」
「承知しました」
ドレスを着た後に、髪も簡易的にアップスタイルにしてくれた。大きな全身鏡に写る自分を見つめる。
「悪くないかも」
スタッフが、フィリップを呼んでくれた。ノックの後にフィリップが部屋に入ってくると、フィリップが固まった。自分では、結構気に入ったが、微妙だっただろうか。
「どうかな?……変かな?」
「可愛すぎる」
「えっ」
「どうしよう。舞踏会に連れていったら、皆サラに釘付けになってしまうよ」
「ならないでしょ」
「やっぱり、オフショルダーはやめようか?肌の露出が多すぎる」
「そう?結構気に入っていたけど」
「……サラがそういうなら……いや、でも」
フィリップが何かと葛藤している。
「もう一着も試着してみるね?」
「ああ、待ってるよ」
次のドレスは、一着目と形自体は似ているが、首元が違う。スカラップネックになっており、波線のカットが可愛らしい印象を受ける。
着替え終わって、フィリップに見てもらうとまた同じような反応をする。
「悩ましい……」
応接間に戻ると、自分以上にフィリップが悩んでいてなんだか面白い。
「フィリップの好きな方でいいよ?」
「ぐっ」
「ぐ?」
「……いや、サラが好きなほうにしよう。どちらがいい?」
「じゃあ、二着目にしようかな」
「んー……。分かった。じゃあ色をどうしようか」
カタログを広げるとサンプル生地を眺めながら、話し合った。
話がまとまり、店を出る。帰り際に店主が書類をフィリップに渡していた。領収書だろうか。フィリップにエスコートされて待機していた馬車に乗る。
「フィリップ、本当に、お代を甘えさせてもらっていいの?」
「いいよ。一緒に参加させてもらうお礼だよ」
「そんな、私が誘ったのに」
「サラ」
「なあに?」
「手を繋いでいい?」
「あ、えっと、いいよ?」
指を絡めてフィリップの膝の上に置かれる。
「今でも、俺は、サラ以外の女性は嫌いだよ」
「私以外?」
「そう」
フィリップが静かに深呼吸をしたのが分かった。繋いだ手を持ち上げてフィリップの口元に当てると、フィリップの真剣な眼差しがサラを捉えた。
「サラ、好きだよ。サラだけが特別。サラのことが大好きだよ」
「え……え?」
「好きでもない女性にドレスなんて贈らないよ」
心臓がバクバクと高鳴る。嬉しさでどうになってしまいそうだ。
「サラも、特別に思ってくれていたら嬉しいんだけど……」
「えっと、私も、フィリップのことが大好き」
恥ずかしいが、はっきりと口にすると、引き寄せられて、抱きしめられた。
「嬉しい。好き、大好きだよ、サラ」
「私も、フィリップが大好き」
さらに強い力で抱きしめられる。
「本当は、舞踏会で伝えようと思っていたけど、気持ちがもう抑えられなかった。ドレスを着たサラが素敵すぎて」
「ふふふ、そうかな」
「そうだよ。皆サラのこと好きになってしまうって。……早く俺の物にしないとって」
どうしようもなく嬉しい。
「俺の気持ちは気づいていただろ?」
「特別に、思ってくれているのは分かっていたけど、友人としてかなって思ってた。勘違いだった時に立ち直れなくなりそうだから、そう思ってたのも、あるかもしれないけど」
「勘違いの時に立ち直れなくなるくらい、好きってこと?」
「……うん」
腕の力が緩みフィリップが顔を上げる。
「俺と、恋人になってくれる?」
「……」
「え!?」
口ごもるサラにフィリップが驚く。
「嫌な訳じゃないよ!でも、フィリップにとって、何も得にならないなと思って」
「と、得?」
「私はフィリップと違って平民だし、貴族の事とかよく分からないから……」
「そんなの関係ないよ。得があるからサラと恋人になりたい訳じゃないよ。サラが、好きだから恋人になりたいんだよ」
「うーん」
「そこで悩む……?俺のことが好き、なんだよね?」
「うん、好き……でも、いつかは貴族の方と結婚したりするのかなって思うと、今、諦めたほうがいいかなって、思ったりも、する」
フィリップが絶句している。
「信じられない。……言ってしまうけど俺はサラと結婚するつもりだよ」
「え!?」
「もっと、ロマンチックに言いたかった……」
「え、ええ?」
「サラ、何も心配しないでいいんだよ。俺が他の誰かと結婚することはないし、サラが結婚してくれなかったら一生独身だ」
「駄目だよ!伯爵家の嫡男なのに……!」
「ああ、だからサラがお嫁さんになって」
「っ……いきなり、すぎる」
「俺だってもっと格好良くスマートに言いたかったけど、付き合ってもらえなかったらそれこそ意味がない」
向かい合ったままフィリップに両手を繋がれる。
「サラ、何が不安?将来的に他の誰かと結婚する予定はないし、貴族的なことは多少は覚えてもらうこともあるかもしれないけど、サラに無理強いはしない。天然な母でもなんとかなっているし、重く捉えなくて大丈夫。仕事だって、続けてもらって構わない。将来的に独立したいなら応援だってするよ」
フィリップが色んな懸念を払拭しようとしてくれている。
「フィリップ……」
「お願いだから、恋人になると言ってくれ」
「ふふふ」
「……ここで笑う?」
「フィリップが必死なのが、なんだか珍しくて」
「当たり前だろう?人生がかかってる」
「本当に、私で、いい?」
「サラがいい。サラじゃないと、嫌だ。サラのことを愛してる」
怒涛の告白に、もう逃げ道は無かった。
「恋人に、なる。フィリップの恋人にしてください……」
恥ずかしくて顔を見られないように抱きつく。
「良かった……ほんとに」
フィリップが噛み締めるようにサラを抱き込む。
「周りに婚約者って紹介していい?」
「うっ……いいのかな?」
「俺はサラに聞いているんだけど……ったく、でもそんなサラも可愛いと思ってしまう……」
「あはは」
サラが笑うとフィリップもつられて笑ってくれた。馬車がアトリエの近くに着くまで、しばらく笑いながら抱き合った。
「サラ様、胸をいつも抑えていらっしゃいますか?」
「そうなんです、仕事の都合で……」
「お胸の形が崩れるので、お勧めしませんが、仕事柄だと致し方ないですね」
実はサラは胸が大きい。しかし、仕事をする上で慎ましやかサイズの胸の顧客もいる。それを気にする女性も多いため、自分の胸のサイズを目立たせないようにしているのだ。
「今日は本来のサイズでドレスを用意しているので、いつもより強調されますが、大丈夫でしょうか?」
「あ、えっと、いやらしくなければ……」
「承知しました」
ドレスを着た後に、髪も簡易的にアップスタイルにしてくれた。大きな全身鏡に写る自分を見つめる。
「悪くないかも」
スタッフが、フィリップを呼んでくれた。ノックの後にフィリップが部屋に入ってくると、フィリップが固まった。自分では、結構気に入ったが、微妙だっただろうか。
「どうかな?……変かな?」
「可愛すぎる」
「えっ」
「どうしよう。舞踏会に連れていったら、皆サラに釘付けになってしまうよ」
「ならないでしょ」
「やっぱり、オフショルダーはやめようか?肌の露出が多すぎる」
「そう?結構気に入っていたけど」
「……サラがそういうなら……いや、でも」
フィリップが何かと葛藤している。
「もう一着も試着してみるね?」
「ああ、待ってるよ」
次のドレスは、一着目と形自体は似ているが、首元が違う。スカラップネックになっており、波線のカットが可愛らしい印象を受ける。
着替え終わって、フィリップに見てもらうとまた同じような反応をする。
「悩ましい……」
応接間に戻ると、自分以上にフィリップが悩んでいてなんだか面白い。
「フィリップの好きな方でいいよ?」
「ぐっ」
「ぐ?」
「……いや、サラが好きなほうにしよう。どちらがいい?」
「じゃあ、二着目にしようかな」
「んー……。分かった。じゃあ色をどうしようか」
カタログを広げるとサンプル生地を眺めながら、話し合った。
話がまとまり、店を出る。帰り際に店主が書類をフィリップに渡していた。領収書だろうか。フィリップにエスコートされて待機していた馬車に乗る。
「フィリップ、本当に、お代を甘えさせてもらっていいの?」
「いいよ。一緒に参加させてもらうお礼だよ」
「そんな、私が誘ったのに」
「サラ」
「なあに?」
「手を繋いでいい?」
「あ、えっと、いいよ?」
指を絡めてフィリップの膝の上に置かれる。
「今でも、俺は、サラ以外の女性は嫌いだよ」
「私以外?」
「そう」
フィリップが静かに深呼吸をしたのが分かった。繋いだ手を持ち上げてフィリップの口元に当てると、フィリップの真剣な眼差しがサラを捉えた。
「サラ、好きだよ。サラだけが特別。サラのことが大好きだよ」
「え……え?」
「好きでもない女性にドレスなんて贈らないよ」
心臓がバクバクと高鳴る。嬉しさでどうになってしまいそうだ。
「サラも、特別に思ってくれていたら嬉しいんだけど……」
「えっと、私も、フィリップのことが大好き」
恥ずかしいが、はっきりと口にすると、引き寄せられて、抱きしめられた。
「嬉しい。好き、大好きだよ、サラ」
「私も、フィリップが大好き」
さらに強い力で抱きしめられる。
「本当は、舞踏会で伝えようと思っていたけど、気持ちがもう抑えられなかった。ドレスを着たサラが素敵すぎて」
「ふふふ、そうかな」
「そうだよ。皆サラのこと好きになってしまうって。……早く俺の物にしないとって」
どうしようもなく嬉しい。
「俺の気持ちは気づいていただろ?」
「特別に、思ってくれているのは分かっていたけど、友人としてかなって思ってた。勘違いだった時に立ち直れなくなりそうだから、そう思ってたのも、あるかもしれないけど」
「勘違いの時に立ち直れなくなるくらい、好きってこと?」
「……うん」
腕の力が緩みフィリップが顔を上げる。
「俺と、恋人になってくれる?」
「……」
「え!?」
口ごもるサラにフィリップが驚く。
「嫌な訳じゃないよ!でも、フィリップにとって、何も得にならないなと思って」
「と、得?」
「私はフィリップと違って平民だし、貴族の事とかよく分からないから……」
「そんなの関係ないよ。得があるからサラと恋人になりたい訳じゃないよ。サラが、好きだから恋人になりたいんだよ」
「うーん」
「そこで悩む……?俺のことが好き、なんだよね?」
「うん、好き……でも、いつかは貴族の方と結婚したりするのかなって思うと、今、諦めたほうがいいかなって、思ったりも、する」
フィリップが絶句している。
「信じられない。……言ってしまうけど俺はサラと結婚するつもりだよ」
「え!?」
「もっと、ロマンチックに言いたかった……」
「え、ええ?」
「サラ、何も心配しないでいいんだよ。俺が他の誰かと結婚することはないし、サラが結婚してくれなかったら一生独身だ」
「駄目だよ!伯爵家の嫡男なのに……!」
「ああ、だからサラがお嫁さんになって」
「っ……いきなり、すぎる」
「俺だってもっと格好良くスマートに言いたかったけど、付き合ってもらえなかったらそれこそ意味がない」
向かい合ったままフィリップに両手を繋がれる。
「サラ、何が不安?将来的に他の誰かと結婚する予定はないし、貴族的なことは多少は覚えてもらうこともあるかもしれないけど、サラに無理強いはしない。天然な母でもなんとかなっているし、重く捉えなくて大丈夫。仕事だって、続けてもらって構わない。将来的に独立したいなら応援だってするよ」
フィリップが色んな懸念を払拭しようとしてくれている。
「フィリップ……」
「お願いだから、恋人になると言ってくれ」
「ふふふ」
「……ここで笑う?」
「フィリップが必死なのが、なんだか珍しくて」
「当たり前だろう?人生がかかってる」
「本当に、私で、いい?」
「サラがいい。サラじゃないと、嫌だ。サラのことを愛してる」
怒涛の告白に、もう逃げ道は無かった。
「恋人に、なる。フィリップの恋人にしてください……」
恥ずかしくて顔を見られないように抱きつく。
「良かった……ほんとに」
フィリップが噛み締めるようにサラを抱き込む。
「周りに婚約者って紹介していい?」
「うっ……いいのかな?」
「俺はサラに聞いているんだけど……ったく、でもそんなサラも可愛いと思ってしまう……」
「あはは」
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