女嫌いな伯爵令息と下着屋の甘やかな初恋

春浦ディスコ

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第18話 報告

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 想いが通じあったことをミーナと、アリアナに報告すると、二人はとても喜んでくれた。

 一週間後にナターシャの打ち合わせに行くと、ナターシャも泣いて喜んでくれた。

「嬉しい……!サラが私の妹になるなんて」
「いやいや、まだそこまでは」
「あら、今更フィリップから逃げられると思ってるの?」
「逃げはしませんけど、気が引けるというか……」
「要らぬ心配よ。サラは知らないだろうけど、フィリップは調理室に連れて行ったときからサラのことが好きだったと思うわ」
「ええ!?そんな前から?」
「その後二人でばかり会おうとしたでしょ?私だってサラと遊びたかったのに」
「えー……?」

「はあ、嬉しい……サラはサントロ家の女神ね」
「女神だなんて」
「あら、冗談ではないわ?だって……私は生きていても仕方がないって思っていた頃に、サラと出会ったのよ。自分の体を見るのがとても嫌いだった。足は特に……。でもサラが作ってくれる下着はどれも素敵で、とってもときめいたの。今ではその下着に見合う自分になりたいと思ってる。リハビリをするようになったのも、サラのおかげ。私の背中をいつも押してくれる。改めてお礼を言うわ」

 ナターシャの言葉に込み上げる気持ちを抑えることができず、涙が溢れた。

「こちらこそ、……ナターシャ様のお力になれたことが、なによりも嬉しいです」

「おい、俺のサラを泣かすなよ」

 愛しい人の声に振り返るとフィリップが扉に寄りかかっている。

「まあ!誰のおかげで出会えたと思ってるの?……あなた今日は仕事じゃなかった?」
「サラが家に来たって連絡があったからさっさと終わらせて帰ってきた……サラ、来るなら教えてくれたらよかったのに」

 今日は不動産の打ち合わせで良かったと呟くフィリップ。騎士の仕事以外にも家の仕事もしているのは知っているが、知らないことは多い。
 それに誰が知らせに来るのか。伯爵家の仕組みは不思議だし謎だ。

「ごめんなさい、お仕事だと思って……」
「ナターシャ、もういいだろう?サラを返してくれ」
「んまあ!サラは今日は私との打ち合わせよ?あなただけのサラじゃないわ!」
「すぐに俺だけのサラになる。そうなれば」

 言い合う二人にサラが口を挟んだ。

「フィリップ様、この後、お時間があるのですか?」
「ああ、もちろん」
「私もナターシャ様の打ち合わせでお仕事が終わりなんです。打ち合わせが終わった後、少しお喋り、したいな、なんて」

 フィリップが手で顔を覆う。

「この可愛い生き物をどうしよう」
「分かるわ、フィリップ。必ず結婚まで繋ぎ止めなさい」
「言われなくてもそうするよ」


 ナターシャとの打ち合わせが終わり、そのままフィリップと逢い引きするのは気が引けるため、外に出掛けようと提案する。しかしナターシャから気兼ねなくゆっくりしていくように言われ、お言葉に甘えて少し滞在させてもらうことにした。

 フィリップに自室で話そうと誘われて、二階に上がる。

「近くない……?」
「こっちはサラ不足だよ、協力してくれないと」

 サラ不足と言われても仕立て屋に行ってから一週間ほどしか経っていない。ソファで隣り合わせに座ると、ぴったりと寄り添い腰を抱かれる。

「えー?」
「会えて嬉しい……」
「ふふっ……私も」

「どうしよう、可愛いすぎる」
「そう言うのはフィリップだけだよ」
「そんなことないだろう、こんなに可愛いのに。でもサラの可愛さに気づかれていないほうが都合がいいよ。……顔を見せて」

 顔を見つめられる。変な汗がでてきそうだ。

「大きな瞳も、愛らしい頬も、ふっくらとした唇も、どこもかしこも好きだ」

「好きの補正ね」
「補正?」
「そう。好きだから可愛く見えるのかなって」
「……サラは自分の可愛さを自覚していないの?」
「顔は平凡だと自覚しているけど」
「……口には出したくないが、あの子爵令息だって、一目惚れをしていたじゃないか。一目見ただけで、可愛いと思われるような女性だよ」
「うーん?そうかな。あの人を除けば誰からも言い寄られたことないから」
「サラは早くから働いてたから、同年代の男からは声はかけにくかっただろうね。相手にされないんじゃないかって」
「そういうもの?」
「そうだよ。男って意外と、繊細だから」

 至近距離で見つめられる。圧倒的な美貌が自分を見つめている。艶やかな金髪に宝石のような碧眼。形の良い高い鼻に、薄い唇。どこもかしこも格好良いのはフィリップのほうである。

「はあ、なんて美しいの」
「俺の顔はいいんだよ」
「だって、ほんとに、いつ見ても素敵」
「……サラに素敵だと思ってもらえるなら、この顔に生まれてきてよかった」

 思い切って頬に触れてみる。フィリップが目を薄める。果てしなく色っぽい。

「……誘惑してる?」

 フィリップの囁き声に、恥ずかしくなりわざと声を明るくする。

「してないしてない」
「……なんだ残念」

 喉が渇いたとフィリップが言葉を零すと、抱かれていた腕がするりと離れていく。フィリップが立ち上がると、そのままでいいとフィリップに言われて侍女が置いていったワゴンの上で、ポットからカップに紅茶を入れている。立ったまま、一気に飲み干すフィリップ。伯爵令息らしくない新しい一面を見る。大雑把な所もあるみたいだ。
 サラは親近感がむくむくと湧いてきた。そおっと立ち上がって、思い切って後ろから抱きついてみた。

「おっと、……どうした?誘惑してる?なんてね」
「うん、……してる」

 フィリップが反転すると、腰に腕が回った。

「聞き間違いか?俺の願望が強すぎて幻聴が聞こえたのか?」
「ふふふ」

 フィリップの指がサラの顎をすくう。

「幻聴でもいいか……キスしていい?」
「聞かなくて、いいよ……」

 フィリップの顔が降りてくる。触れるだけの口付けを交わした。紅茶を飲んだばかりだからか、フィリップの唇がしっとりと濡れている。柔らかな唇が離れていく。

「もう一度」

 角度をかえると、今度はたっぷりと時間をかけて触れ合った。

「フィリップ、……大好き」
「俺も、……俺の方が大好きだよ」
「私の方が好きだし」

「もっと好きになってほしい、俺がいないと生きていけないくらい」
「これ以上好きになったら、おかしくなっちゃうよ」
「俺はもうおかしくなってるよ」

 フィリップが目を瞑りながら近づいてきたのに気づいて、サラも瞼を閉じた。
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