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青の村にて 一大作業と不意の凶行
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ディグリが腕の根を伸ばしてあいつに上手く絡め足の根を地面に張り足場を固めたのを確認して、僕は鬼熊と破壊猪に呼びかける。
「鬼熊、破壊猪、今から根を伸ばすから引っ張りやすい体勢になって!! ディグリ、僕の方の根を解くから悪いけど僕達の準備が整うまで、あいつを支えてて!!」
「ガア」
「ブオ」
「ワカリマシタ」
僕はあいつから樹根触腕を解き、複数本の樹根触腕を太い一本の状態に束ねて僕にお尻を向けている二体の身体を連結するように肩や腰に巻き付けてから、再びあいつの元に伸ばしていく。今の状態をわかりやすくいうと、馬車を引く馬の役が二体で、馬車があいつで、二体とあいつを繋ぐひもが僕の伸ばした根になる。
ディグリが単独なのは、あいつに繋がる根を僕の樹根触腕とディグリの根に分ける事で、万が一どちらかが切れてもどちらかが支えて態勢を立て直すまでの時間を作れるようにするためだ。よし、樹根触腕にもあいつの巨体の体重が伝わってくるから、しっかりと繋がった。
「それじゃあ引っ張るよ!! 合図は僕がするからね!!」
「ガア!!」
「ブオ!!」
「イツデモドウゾ」
「一、二、三でいくよ!! 一……二……三!! 引っ張って!!」
「ガ!!」
「ブ!!」
「フン!!」
樹根触腕とディグリの根がピンと張りギシギシしなる。……少しずつ動かせてるけど、それだけだ。強力な魔獣らしいあいつでも動けなくなってるんだから異常な重さになってるって予想してたけど、三体の力でも動かし切れないんだから驚きだよ。周りのみんなも三体も僕と同じように驚いてる。
「ヤート、手伝うぞ。この根を引けば良いのか?」
「俺もやれる」
「私もいけるわ」
「私もです」
「ラカムタさんは二体が引いてる樹根触腕を、兄さん達はディグリの根を引っ張って!!」
「よし、お前らいくぞ」
「任せろ!!」
「わかったわ」
「わかりました」
……うん、ラカムタさん達の協力で、さっきよりはあいつを動かせるようになったけど動かせる感覚がズッがズズッになったくらいで完全に引き上げるには時間がまだまだかかる。僕があいつの体調を気にして少し焦っているとイリュキンが近づいてきた。
「ヤート君、私にも手伝える事はあるかな?」
「イリュキン、大霊湖の水を操作して中層で動けなくなってるあいつを、僕達の方に運べる?」
「やってみよう」
イリュキンが大霊湖に手を浸し目をつぶったら水面に不自然な波が立ち、波があいつの方に到達すると紐状に持ち上がりスルスルと水中に入っていく。こういう緊急事態じゃなかったらじっくり見てたいけど、僕は樹根触腕の強化とあいつの状況確認に集中しないといけないから残念だ。
僕が残念がっていたらイリュキンがガバッと立ち上がり広場の方に険しい顔を向ける。
「まずい!! 水中で動けなくなってるのは大髭様だ!! 村長とお祖母様とタキタを呼んでくるんだ!! それと三人が来るまでに動けなくなっている大髭様を少しでも私達の方に引き寄せる。水を操れるのを手伝ってくれ!!」
そういえばイリュキンも水を使って遠くのものの識別ができたんだった。イリュキンの指示を聞いて広場にいた数人の青の大人が慌てて走り去っていき、残りの人が大霊湖に手を浸し水を操り始めた。というか大髭様? いや、気にするのは後だ。
五分くらい大髭様を今広場にいる全員の協力で引き上げようとしても、なかなかうまくいかない。やっぱり大髭様自体が異常に重いのと、大霊湖の莫大な水が邪魔だ。水圧とか水に含まれてる魔力の関係なのか調べてないから詳しくわからないけど樹根触腕を動かしづらい。大髭様の体調もどんどん悪くなってるのが全員に伝わり、焦りがつのっていく中で事態が動いた。
僕達の後ろから走ってきた三人が大霊湖に手を浸すと、水面が今までよりも大きく波打ち始める。
「皆の尽力に感謝する。だが大髭様をお救いするために今一度全力を振り絞れ!!」
「ハインネルフの言う通りです。皆さん、力を合わせますよ」
「特に水守は、このような時に力を発揮できてこそじゃ!!」
「「「「「おう!!!!!!」」」」」
ハインネルフさん・イーリリスさん・タキタさんの掛け声で青の竜人達から発せられる魔力が強くなった。これだけ力を合わせればいけそうだね。
かなりの時間がかかったものの、なんとか大髭様を青の村の広場の湖岸に引き上げる事ができたけど全員が肩で息をしていた。体力自慢・魔力自慢の竜人族であるみんながこういう状態だし、三体も目に見えて疲れてるから、いかに大変な作業だったのかがよくわかる。
水面に出てきた大髭様は、ものすごく大きな――具体的にいうと前世の大型バス十台分以上の――魚で見た目は前世の図鑑で見た肺魚っぽい。とりあえず水から顔が出ても呼吸ができてるみたいだから、たぶん外れてないと思う。顎の下に二本の太い髭みたいなのがあるから大髭様っていうのかな? ……って見てる場合じゃないな。
まずは同調での確認をするために僕が大髭様に近づくと、フッと誰かの影が僕にかかる。大髭様を引き上げる作業に集中してて近づかれた事に気付かなかった。僕の視界に青色の鱗が見えるから青の竜人の内の誰かだね。気になって僕が顔を向けると、そこには拳を振り上げた無表情なヌイジュがいた。
「死ね」
僕が顔を向けるのと同時にヌイジュの拳が僕に向けて振り下ろされた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
「鬼熊、破壊猪、今から根を伸ばすから引っ張りやすい体勢になって!! ディグリ、僕の方の根を解くから悪いけど僕達の準備が整うまで、あいつを支えてて!!」
「ガア」
「ブオ」
「ワカリマシタ」
僕はあいつから樹根触腕を解き、複数本の樹根触腕を太い一本の状態に束ねて僕にお尻を向けている二体の身体を連結するように肩や腰に巻き付けてから、再びあいつの元に伸ばしていく。今の状態をわかりやすくいうと、馬車を引く馬の役が二体で、馬車があいつで、二体とあいつを繋ぐひもが僕の伸ばした根になる。
ディグリが単独なのは、あいつに繋がる根を僕の樹根触腕とディグリの根に分ける事で、万が一どちらかが切れてもどちらかが支えて態勢を立て直すまでの時間を作れるようにするためだ。よし、樹根触腕にもあいつの巨体の体重が伝わってくるから、しっかりと繋がった。
「それじゃあ引っ張るよ!! 合図は僕がするからね!!」
「ガア!!」
「ブオ!!」
「イツデモドウゾ」
「一、二、三でいくよ!! 一……二……三!! 引っ張って!!」
「ガ!!」
「ブ!!」
「フン!!」
樹根触腕とディグリの根がピンと張りギシギシしなる。……少しずつ動かせてるけど、それだけだ。強力な魔獣らしいあいつでも動けなくなってるんだから異常な重さになってるって予想してたけど、三体の力でも動かし切れないんだから驚きだよ。周りのみんなも三体も僕と同じように驚いてる。
「ヤート、手伝うぞ。この根を引けば良いのか?」
「俺もやれる」
「私もいけるわ」
「私もです」
「ラカムタさんは二体が引いてる樹根触腕を、兄さん達はディグリの根を引っ張って!!」
「よし、お前らいくぞ」
「任せろ!!」
「わかったわ」
「わかりました」
……うん、ラカムタさん達の協力で、さっきよりはあいつを動かせるようになったけど動かせる感覚がズッがズズッになったくらいで完全に引き上げるには時間がまだまだかかる。僕があいつの体調を気にして少し焦っているとイリュキンが近づいてきた。
「ヤート君、私にも手伝える事はあるかな?」
「イリュキン、大霊湖の水を操作して中層で動けなくなってるあいつを、僕達の方に運べる?」
「やってみよう」
イリュキンが大霊湖に手を浸し目をつぶったら水面に不自然な波が立ち、波があいつの方に到達すると紐状に持ち上がりスルスルと水中に入っていく。こういう緊急事態じゃなかったらじっくり見てたいけど、僕は樹根触腕の強化とあいつの状況確認に集中しないといけないから残念だ。
僕が残念がっていたらイリュキンがガバッと立ち上がり広場の方に険しい顔を向ける。
「まずい!! 水中で動けなくなってるのは大髭様だ!! 村長とお祖母様とタキタを呼んでくるんだ!! それと三人が来るまでに動けなくなっている大髭様を少しでも私達の方に引き寄せる。水を操れるのを手伝ってくれ!!」
そういえばイリュキンも水を使って遠くのものの識別ができたんだった。イリュキンの指示を聞いて広場にいた数人の青の大人が慌てて走り去っていき、残りの人が大霊湖に手を浸し水を操り始めた。というか大髭様? いや、気にするのは後だ。
五分くらい大髭様を今広場にいる全員の協力で引き上げようとしても、なかなかうまくいかない。やっぱり大髭様自体が異常に重いのと、大霊湖の莫大な水が邪魔だ。水圧とか水に含まれてる魔力の関係なのか調べてないから詳しくわからないけど樹根触腕を動かしづらい。大髭様の体調もどんどん悪くなってるのが全員に伝わり、焦りがつのっていく中で事態が動いた。
僕達の後ろから走ってきた三人が大霊湖に手を浸すと、水面が今までよりも大きく波打ち始める。
「皆の尽力に感謝する。だが大髭様をお救いするために今一度全力を振り絞れ!!」
「ハインネルフの言う通りです。皆さん、力を合わせますよ」
「特に水守は、このような時に力を発揮できてこそじゃ!!」
「「「「「おう!!!!!!」」」」」
ハインネルフさん・イーリリスさん・タキタさんの掛け声で青の竜人達から発せられる魔力が強くなった。これだけ力を合わせればいけそうだね。
かなりの時間がかかったものの、なんとか大髭様を青の村の広場の湖岸に引き上げる事ができたけど全員が肩で息をしていた。体力自慢・魔力自慢の竜人族であるみんながこういう状態だし、三体も目に見えて疲れてるから、いかに大変な作業だったのかがよくわかる。
水面に出てきた大髭様は、ものすごく大きな――具体的にいうと前世の大型バス十台分以上の――魚で見た目は前世の図鑑で見た肺魚っぽい。とりあえず水から顔が出ても呼吸ができてるみたいだから、たぶん外れてないと思う。顎の下に二本の太い髭みたいなのがあるから大髭様っていうのかな? ……って見てる場合じゃないな。
まずは同調での確認をするために僕が大髭様に近づくと、フッと誰かの影が僕にかかる。大髭様を引き上げる作業に集中してて近づかれた事に気付かなかった。僕の視界に青色の鱗が見えるから青の竜人の内の誰かだね。気になって僕が顔を向けると、そこには拳を振り上げた無表情なヌイジュがいた。
「死ね」
僕が顔を向けるのと同時にヌイジュの拳が僕に向けて振り下ろされた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
◎後書き
最後まで読んでいただきありがとうございます。
注意はしていますが誤字・脱字がありましたら教えてもらえるとうれしいです。
感想や評価もお待ちしています。
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